第38話 人類種の撤退(師匠視点)

やあやぁ、こんにちわ。セイの大道芸人の師匠こと、、、師匠だ。やっぱり名乗りは上げないでおこうと思うよ。ミステリアスが大事なんだよ、たぶん。。。


さてさて、私はあれからも情報を集めながらグンダヴィラ大陸まで渡ってきた。道中は大きな問題もなく、各地で起こる小規模の反乱を制圧しながらここまで渡ってきたのだが、、、大陸内は既にひどい状況だった。


これまでに観測のない縄張り争いが起こっていた。種族間の抗争が活発化しており人類種が探索するには非常に危険な地域へと変貌している。


私はこれでも英霊の端くれだ。冒険者ギルドから調査依頼を受注し何度も森の中へと入った。環境の変動、生体図、生態系、縄張りの変動など様々な情報を取得しては持ち帰り他の有志と情報を照らし合わせ森の状況を記録していく。


この大陸に来てから早数ヶ月、不穏な森の状況を逐一記録し不測の事態に備える日々を送っていた。


情報の精霊クリスティナの協力もありエリアスに様に依頼されたこの仕事も順調に進んでいる。


そう、今回の情報提供者は彼の大精霊エリアス・エリクシール様からのものだ。エリアス様は、私が今の様に活動できる英霊となれた大恩人でもある。そのエリアス様から調査を依頼されては断ることはできない。


エリアス様の眷属であるナノスライムのクリスティナから現在の状況と今後の予想を聞き行動方針を決めていく。


森の混乱具合から考えても今後近いうちに反乱が起こることは確実だ。反乱を事前に防ぐにはグンダヴィラ大陸は広すぎる。次善策として人類種の救助、特に遊牧民である少数部族の保護が最優先であると考えられる。


私を含めた有志達と協力し救助活動を始めることになる。反乱が起こってから動いては遅い為、国が動き出す前に私たちが個人的に動くことが決定した。


冒険者の多くは防衛のための準備に取り掛かることになり実際に救助活動に動けるのはごく少数だ。有志諸君は小さなパーティーに分かれ活動してもらい、私の様な実力者は個人で行動し共助活動を進めることになった。


この救助活動の初めは順調に進むことになるが事態は一刻を争うことに変わりなく精神的には疲労を隠し切れない状況となっていた。


さらに緑肌の人間種の暗躍の情報も追加される。意図的に流されたであろうこの情報。確実に陽動であると判断できるが無視することもできず、外の森だけでなく内の防壁内にも目を向けなくてはいけなくなり、仕事が増える結果となる。


予想通りに緑肌との人類種とは接触することなく魔物の反乱が始ることになる。



救助が八割は進んだ頃、恐れていた反乱が起こる。


それもこれまでにない規模の大反乱。港町を有する二国が同時に防衛を余儀なくされる状況に立たされる。


魔物の種類は多種多様であり、数も膨大。これまでに観測されていない魔物の種類がほとんどであり情報が錯綜する中での防衛線となった。


バダキャソ国とイマピョア国のこの二国はもともと防衛線を考えて作られた国だけはあり、防壁は高く、非常に頑丈。竜種の攻撃でも揺ぎ無く防壁としての役目を全うする。


しかし、長らく防衛を続ければ物資は不足し、徐々に徐々に兵の士気を衰え、これまで一度も防衛線をしてこなかった襤褸が出始めるのは時間の問題であった。


大反乱を防ぎ始めてから早半年、物資が底をつき始め、これまで襲撃のなかった海側からも魔物が現れたことで撤退を余儀なくされる。


徐々に減ることなく増え続ける魔物の攻めにとうとう音を上げ、グンダヴィラ大陸から人類種は撤退することとなった。



この間、私は引き続き遊牧民、少数部族の救助活動を続けていた。


防衛線がまだ保てている間に迅速に救助活動を進める。


反乱が起こり、より危険な森の中、孤立し救助を待っている部族を回っては防壁内へ転移させる。そんな作業を昼夜問わず奔走し半年もの間でそのほとんどの人類種を防壁内へと送り届けることに成功した。


しかし、それでもほとんどだ。人類が撤退を始める中、森の奥地で間引きと殿を務めながら残りわずかとなった救助活動を進める。


そんな活動も終わりが見えてくるもので目の前の部族を転移させれば救助活動の終了となる。


集合してもらった広場に魔法陣が広がり、眩い輝きの後には誰もいなくなったボロボロの集落が残るだけとなった。


「これで最後かな? 後は二国が撤退できるように時間を稼ぐだけだね~」


ここに残っているのは二人のみ。一人は私、全体的にパッとしない地味な衣装を着こんだ大道芸人。


「うし、タイム更新 これでミッションクリア 後は殿を務めるだけで終了で合ってるよ」


こちらも何とも地味な冒険者衣装少年。普段武器を装備していない私が言うのもなんだが、片手盾と片手剣というどこからどう見ても普通の冒険者な少年が残っている二人目だ。


私と彼、アレンは今回参加した救助活動の中でも英霊へと至っていた者だ。彼もエリアス様から依頼を受け、遠くから遥々グンダヴィラ大陸まで足を運んできてくれた。


私は彼をあまり知らないが、英霊としては古参であるらしい。


「アレンさん 私はセントヴェンが拠点なのでイマピョア国側を防衛しようと思います」


「じゃあ、俺はバダキャソ国側だな お互い健闘を祈るぜ」


「えぇ、健闘を祈ります」


私はアレンとその場を分かれてクリガース大陸間を繋げる港、イマピョア国の防衛へと向かった。


欠損などの被害は免れなかったが死者を出すことなく救助活動を終えることが出来た。今の医療技術であれば後遺症なく完治できるケガだ。後は残りの人類の撤退を援助して避難すれば今回の依頼としては完了となる。



道中、魔窟となった森の中を蹴散らし進んで行く。


剣や槍、斧、刀、大型の武器種、片手で持てる武器種、手品の様に様々な武器種を手元に出現させてはで切り裂き、


自身の周囲の空間を歪んませ、様々な武器種を魔法陣から召喚、創造しては弾幕の様に武器を投擲し、


色とりどりのありとあらゆる現象、ありとあらゆる魔法でもって破壊の限りを尽くし、


様々な方法をもって、無限とも錯覚しそうな魔物の数々を殺し尽くしながら森の中を進んで行く。


私は大道芸人。だが、それは私の人生の職業であり、ステータス上に表記されるジョブではない。


私の本当のジョブは・・・『遊び人』だ。



この世界では生まれながらにジョブをもって誕生する存在がいる。


そういった存在はそのジョブに特に秀でた才能を有し、一生をそのジョブに捧げれば英霊となれるのは確実いわれるまでに才能がある存在だ。


そんな中、私は生まれながらに『遊び人』のジョブに就いて生まれ落ちた。


遊び人はとても危険なジョブ。生まれながらに『遊び人』に就いた私は自意識も発達していない中、精神汚染を受けることになる。


誰も予想できないタイミングでアホな行動を繰り返した。突然、笑い出すや泣き出す程度であれば奇妙な子に思われるだけで大きな問題とはならなかっただろう。


精神汚染は酷い。突拍子もない行動とまとめればそれまでだが内容は酷いものだ。ハイハイをしている赤子がどこから手に入れたのか刃物を振り回す。歩き出したばかりの子供が何をするでもなく動かなくなる。少し目を離すとトラックに跳ねられている。大けがをしても痛みを感じて無いかのように血まみれのまま笑顔で戻ってくる。突然、刃物で首や手首を切りつける。勉強をしていたかと思えば、何やら理解不能な文章で文字を綴っている。訳の分からない言語で話しかけてくる。虚空の何もない場所で会話を始める。バク転をしたかと思えば、その場でジャンプができない。ほんとうに上げていったらキリがないほどの奇行を繰り返すのが『遊び人』の精神汚染だ。


そんな子供だったため、父親は愛想をつかし蒸発、母親は最後まで愛情を注いでくれたが心労が祟り徐々に衰弱していってしまった。


こんな私に愛情を注いでくれる母に報いるためにも私は無意識ながら『遊び人』に抗い続けた。母に迷惑をかけないように自信を制御しようと抗い続けた。


10歳になる頃、その母親も寝たきりになってしまう。


顔はヘラヘラと笑顔のまま、心では泣き続けていたある時、私は魔法陣を書き始めるという奇行を行った。


これも精神汚染によって行われた現象であったが、これのおかげでこの意味不明な状況を脱することが出来る。


普通であれば魔法陣は発動しない。てきとうな文字を綴って、てきとうな図形で描いた落書きだ。


しかし、発動した。その魔法陣から召喚されたのが英霊エリアス・エリクシールだ。


世界中に漂うナノスライムが適当に書いた魔法陣に介入することで特定の人物を召喚する魔法陣へと書き換えた。


そして、エリアスと出会ったことで『遊び人』という忌まわしい職業を克服することに成功する。


僕の無意識の思いが届いたのか、何が原因で助けてくれたのかはわからないがそれ以上にエリアス様は私の恩人である。



克服した『遊び人』は壊れたジョブ性能を有する。


ジョブレベルが上がるごとにジョブ欄に【】といった空欄が増える。この空欄には世界に存在するあらゆるジョブを設定することが出来る。


最大値である99まで上昇した『遊び人』は99種類のジョブを同時に扱うことが出来る。


これによって起こることは何か?


ジョブの重複による成長率の急上昇。


古今東西の現存するスキルの獲得。


限界を超えた、種族を超えた、能力の超成長を実現する。


私が生まれながらに『遊び人』についていたのはありとあらゆる才能に適性があったからだ。特定の一つの才能であればそのジョブに就けばいいだけで済んだが下手に多才であったが故にバグを起こし『遊び人』に生まれながらに就くことになった。


これを聞いたときは何とも運がないと思ったが、克服したこれからは最愛の母に恩返しすることが出来ると奮闘する切っ掛けにもなった。


衰弱する母を看病し、母が感知してからはその能力をもって母を支え続け、裕福で何不自由のない一生を提供した。私を育てた十年間の苦労に感謝を込めて母には幸せになってもらった。


母が他界してからは上昇しすぎた能力値による寿命をもって世界に貢献、もといエリアス様に恩を返している。



まぁ、要するにだ。私の職業、克服した『遊び人』は何者にでもなれる職業ということだ。


『剣聖』で敵を切り裂き、『賢者』で敵を焼き滅ぼし、『勇者』でオールマイティーに活動し『魔王』で魔道の神髄を体現する。


他にも細かいもので『転移術士』で効率よく転移を行い、『ボディービルダー』で最適な体を作りあげ、『スライム』で男でも女でも性別を自由に変更する。


ありとあらゆるジョブを駆使して戦うことが出来る職業が私の『遊び人』。英霊の中でもなかなか上位に位置する存在なのだよ?



その後も敵を鎧袖一触に薙ぎ倒し、森の中を進み、イマピョア国の防衛、その殿を務めた。


迫りくる魔物の群れを休みなく屠り続ける。


分身体を多数動員し海の安全を重点的に行い、本体である私は森の中で魔物の間引きを続けた。


魔物の数は減ることを知らず、どこからこれだけの魔物が潜んでいたのかと問いたいところを我慢して防衛を続ける。


撤退を始めて二週間。人類の撤退が完了し私の防衛線も終了となる。



ッチ カチッ ボ 


「すーーー ふぅ~~」


久方ぶりにタバコを吸った。紫煙が煙る中、私は徐に言葉を紡ぐ。


「何か用かい? 侵略者さん」


「・・・気づいているか」


森の陰から現れたのは薄緑色の肌を持つ人間種。肌の色以外にはこの世界の人間種と変わった特徴はない。その鍛え抜かれた体格からしてただ者ではないのだろう。


「初めまして 私は大道芸をしている者だ あなた方はどこから来たのかな?」


一人が現れ二人目が現れとぞろぞろと同じ肌色の人間種が現れ続ける。


「これから死ぬ貴様に答える必要はないな」


「あぁ~ 酷いじゃないか~ 死ぬ前に真実の一つでも教えてくれてもいいものを・・・」


私が大げさに嘆いて見せるが容赦なく狙撃を受けたため慌てたように回避して見せる。


「おわとと 話の途中ですぜ? お客さん方」


「やれ」


「へいへい 血気盛んなこって」


会話も成り立たずに戦闘へと突入する。


状況的にはだいぶまずい。半年近く休みなく動き続けたため精神的疲労はもちろんの事、ここ二週間の連続戦闘により魔力は枯渇寸前。タイミングを見計らった登場といい徹底的に追い詰めることに全力を注いでいる。


おそらくだが能力差がこちらとあちらでは大きくあるのだろう。結果、今のタイミングであれば確実に殺せると踏んで出てきたってところかな?


先ずは観察に徹し、隙あらば急所を狙って一撃の下、数を減らしていっているがあまり好転しない。体力的にはまだ問題ないが、魔力枯渇による精神疲労の追い打ちが深刻だ。集中が切れないように分割思考で誤魔化しているがこれがいつまでも保つか。


攻撃を避けては攻撃し、避けては攻撃。体力の消耗を抑え、魔力の回復を待つために最小限の動きで敵の攻撃を避け、数を減らしていく。


四方八方からの同時攻撃。攻撃が被らないように長物による突きの串刺し。敵の連携は的確で隙がないものだが、それはどこか規律的で規則正しい動き方。軍隊行動に似ている分攻撃は比較的読みやすい。


槍と槍の隙間に体を通し、摺り足、僅かな重心移動で攻撃の全てを避ける。あまりの状況に敵が硬直する中、その隙を見逃さず、両手からクイックドロー。12の弾丸がほぼ同時に槍の使い手の眉間を貫く。


「・・・化け物め」


「お褒めに預かり光栄だよ どうぞ楽しんで行ってくれ」


バタバタと倒れ伏す中、私は余裕があるようにわざとお道化て見せ戦闘を続けていく。



早一時間経過。


はぁはぁ、ふ ふぅ


私もさすがに息切れを隠し切れなくなってきた。依然、敵の攻撃は止むことなく続いている。私も結構な数を打倒したはずだが、総数が減る様子がないのが気になるところ。


「ッツ」


また掠ってしまった。どうも動きに正確さが欠如してきている。先ほどから被弾が多くなり私のこの地味な外装にも血が滲み始めた。


ドンッ ジャリィィィ


「チッ」


空気の壁を突き破る音と共に私は反射で自身を囲むように結界魔法を構築。斜めに構築した結界を滑るように大剣が空へと逸れていく。


「ずいぶんなご挨拶がこって 参加するのが遅いんじゃありませんことよ」


「・・・・・」


声色を変えてお道化て見せるが特に反応も示さず連撃を繰り返してくる。


私は体捌きでもって攻撃を回避していく。何度も大剣は空を切るが動揺することなく淡々と連撃を仕掛けてくる。


様子が奇妙であり、私は警戒して回避行動を続けていると・・・。


ザシュッ


片腕を持っていかれた。


一瞬、思考に空白が生まれたが反射で行動を起こし敵の目の前から消え失せる。


ドテッと私の右腕が地面に落ちる中、私は様々なスキルを駆使して全力で森に身を隠した。


「チッ」


敵の舌打ちが聞こえる中、私は応急処置を進めながら状況の把握に努める。


完全に私のミス。今になって体に痺れが出始めていることに気づいた。おそらくだが毒を受けていたのだろう。いくつか掠った武器に毒が仕込んであったか、、、いや、奴らの性格からして使用する武器の全てに仕込んでいてもおかしくないか。


ジョブ構成、スキル構成を一時的に変えての完全隠密だがそれでも長くは持たないだろうなぁ~。とりあえず、右腕は遠隔収納で回収してと。


ふぅ~。久しぶりに大けがをしてしまった。こんな激痛は久方ぶりだ。エリアス様のスパルタ以来かもしれないなぁ。


傷も回復したころ少し暢気に思考を巡らせていると目の前に鈍色の撤回が・・・。


「そぉおいぃ」


ドッジロールをもって回避をする。大木が切り倒される音が響く中、立ち上がり戦闘態勢を取った。


「だ~いぶピンチ!! こんな時ほどお道化ましょうかね~ どう思います?」


「・・・・・」


「無言とは面白みがないですねぇ~ じゃぁ、仕切り直しといきましょう」


ポンッとコミカルな音と共に失ったはずの右腕が何もなかったかのように現れる。


「化け物が」


「化け物で結構 誉め言葉です」


次は私から仕掛ける。上中下とアトランダムに攻撃を仕掛け翻弄する。大剣使いと一対一に持ち込み乱戦を避けると同時に司令塔であろうこの人物を倒すことで勝機を図る。


大剣使いは表情を変えず冷静に対処してくるが、攻撃に割く余裕はないようだ。それとも私がまた麻痺ることを待っているのかもしれない。


リョウの腕による短剣の二連撃、掬うような剣による下段払い、ハルバードの射出による奇襲、その後も様々な手段で攻め立て相手の攻撃を許さない猛攻を行う。


流石にこの攻撃の雨に耐えけれず体制を崩す大剣使い。右の腕でもって袈裟切りに分かり易いぐらい大振りに力の入れた攻撃を行う。


分かっていてもこの攻撃は受けるしかないと判断したのだろう。大剣使いは防御の体勢を取ったが・・・。


「はあ?」


ここにきて初めて動揺の声を上げさせたことに私は口角上げる。


右の直剣は大剣をすり抜け、右腕も大剣をすり抜け、私は大剣の内側へと躍り出る。もちろん動揺の隙など見逃さず、喉へと刺突の一撃を加え絶滅させる。


「毒は解毒済み、この右腕はただの幻影ですよ? 冥途の手向けにどうぞ一つ」


さてさて、大剣使いを倒したことで少しは隊列が乱れるといいのですが・・・。


「そうですか 何も変わりませんか はぁ~」


さてさて、幻影の手品は明かしてしまいましたし、魔力は限界。体力的にも部位欠損は痛いですねぇ~、血を流し過ぎましたか。分割思考による誤魔化しもさすがに限界かぁ、集中力ももって数分ってところかねぇ~。


対してお相手さんは、特に大きな動揺もなく淡々と包囲網を縮めてきている。これは、最早一個の生物のような動きだ。群をもって軍となし一個体の生物の様に規則正しく役割を果たしている。


「どこの軍事国家の侵略者なんですかねぇ 十中八九、異世界からの侵略者ですか」


今にも襲い掛かろうと睨み合いが続く。


「覚悟を決めますかねぇ」


先手を取ろうと動き出そうとした時。



どさっ



一斉に後方にて包囲網を完成させていた敵陣営が一斉に倒れ伏した。


その後も敵陣の中を縦横無尽に駆け回る正体不明の影。影が通り過ぎる度に一人また一人と倒れ伏し、先ほどまで静かで巨大な怪物のようであった軍隊は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと変貌を遂げた。


「・・・・・」


私は何とも言えない感情に支配される。死を覚悟して戦い抜こうとしたのになんだこの状況は?飛び回る影にもなんだか恐怖を覚える前に遣る瀬無さを覚えるし時折、コケコケ鳴き声が聞こえるし、ひゅんひゅん飛び交う風切音は矢のそれに似ているし、総じてなんというかなんといえばいいのか。。。


「協力感謝する 一度我々の集落にて休養されてはいかがか?」


そう話すのは黄色い羽毛の人型の鳥類種。人類種ではなく、動物から進化の末に姿形を変えてきた飛べない鳥類種の生物。何とも前髪のような場所の白いアホ毛がチャームポイントだ。


「・・・・・それは有り難いがこの状況は何だろうか?」


「森を荒らす彼奴等を仕留めるために彼奴等が集結する瞬間を伺っていた 今回、貴方を囮とし、こうして一網打尽にすることが出来たというわけだ」


「・・・・・なぁるほど」


言いたいことは多々あるが彼らが種族に逆らうことは死に直結する状況だ。助けてくれたのには変わりないのだからお言葉に甘えよう。


「では、こちらだついてきてくれ」



私はその言葉と共に彼らについて行き、鳥類種の集落にお世話になる。


鳥類種の里で失った右腕を接合し正常に動くようになるまでお世話しなることになった。人との関わりの薄い里であり、今のグンダヴィラ大陸に人類種はいない為連絡手段がほぼない。魔力が回復したら連絡できないこともないが、傷の修復が優先であり連絡を取ることが出来るのはだいぶ先になりそうだ。


んんー、今回は私たちがどうにか撃退したような形になったが、今後この世界はどうなることやら。緑肌の人類種と接触して見て感じたことは明らかにこの世界の住人ではないということだ。技術体系が少々古く感じる部分もあったがその行動力、行動方法はこの世界の文明とも負けていない。特にこれまで一度も影も形も見せなかった隠密技術は驚異の一言だ。なんとも厄介な侵略者が異世界から来たものと思う。


この怪我では回復する頃にはこの侵略事件も回復していそうだ。そうなると私の役目はこれで終了かねぇ~。情報自体はクリスティナで共有できているはずだから大丈夫であろう。


まぁ、後はがんばれよ?愛弟子よ。私はピヨピヨと朝から騒がしい集落で休養の後、セントヴェンに帰ろうと思うよ。


うん。それにしても、小鳥はこんなに可愛いのになぜあんなゴリゴリの飛べない鳥たちが生まれるのか。この世界の大きな謎である。誰か解明できる人はいるかい?いない?それは残念だ(?)。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る