第36話 極々平和な日常
=コロ↑コロ↓コロ→、(5,2)『7』=
「ふぁ~~~、ぅぅんーーーー、はあ」
いつも通りの起床時間の六時だ。久しぶりに良く寝た気がする。不死者の先輩から扱かれるようになって、体感時間が狂い始めていたのが一番の原因だろう。ようやく日常に支障の出ない程度の時間に訓練時間が収まってきた。それでも、一時間はかかるから体感時間としては100年近く経過しているんだけどなぁ~。
不死者による代わる代わるの訓練の日々は、環境が襲い掛かってこない分、まだ楽だったが、それでも鬼畜の一言。
まず、勝てない。僕のステータスはカンストしているのに一瞬一瞬の戦闘の中で力負けすることが多々ある。この世界とは違うステータスや能力の持ち主であるから違いが出てくるのはわかるのだが、それでも時おり圧倒的に素の能力に差が出ることが戦闘中に起こる。技術でも大差で負け、能力値でも差をつけられてしまえば勝てるものではない。
次に説明がドヘタ。個人で完結している能力の持ち主たちであるため、人に教えることが下手糞なのだ。肉体言語と擬音語で説明されても理解できるものではない。それに加え楽観的な思考回路の者が多く、これだけ教えればできるだろという態で実践を開始してくる。僕はまだ理解しきれてないというのに教えられたらしいことをできるまで戦闘を続けることになるので一度の戦闘が永遠に思えてくる時間長引くことになる。
総じて、不死者との特訓の日々は無茶苦茶。何をどうしてそうなったのかわからないし僕はどうして答えることができているのかわからなくなってきている。
なんだかんだかくかくしかじかしたことで時間が短縮されたと思ってくれ。切実にそう思ってくれ。自分でも今の日常に落ち着けていることが疑問なんだ。結構な時間無心というか無意識に戦闘を繰り返していた時間があるので説明できない。僕も僕で不老になるまで自信を鍛え続けただけあって身体能力が壊れているのだと思う。もしかしたら異世界の能力が順次適応できているのかもしれない。かもしれないとしか言えないからかくかくしかじかで理解してほしい。
後はこれまでの時間のおかげで『クリーン』と『転移』について再理解が進んでいる。
『クリーン』は『再生』『分解』『魔眼』の三つのスキルに分割して扱えるようになった。『再生』は自身以外の生物にも作用するようになってきたし、『分解』は者の構造をバラバラにすることができるようになったし、『魔眼』は戦闘時少し先の未来が見えるほどには扱えるようになってきた。
とくに便利なのが『魔眼』。対象の過去を見通し、現在の状況を読み解き、未来を見える範囲で予想する。修行が進むにつれ見通せる時間が長くなっており、『真似る』の性能も比例するように飛躍的に上昇している。
『魔眼』との作用で性能が急上昇している『真似る』があるから曲がりなりにも不死者の訓練に着いて行けているのかもしれない。
『転移』は戦闘中に活用することを重点的にしているので短距離転移が成長している。遠くの方への転移はまだまだ発動に時間がかかるが、短距離であれば瞬時に発動するぐらいまで成長した。まだまだ粗があるので、転移時と発動後のラグを無くすことを目標に修行を進めている。
そういえば、不死者と訓練するようになってついでに僕の魂装も少し強化した。
『53枚のカード』は基本的な能力は対象を登録し使用する事だ。試練の間は熟練度もそこそこの状態で不死者の方々と遭遇していたので発揮していなかった能力が一つある。
それは人物の登録。登録した人物を幻影としてカードに登録することができる能力。この能力自体には気づいていたがあの異常な環境に耐えられるような人物と親密な関係になっていなかったので使用できなかった。今回の訓練期間により、不死者の方々と深く関わる機会があり登録まで出来るようになった。
幻影の能力はまだ何千分の一の能力しかコピーできていないと思われるがそれでも今後より詳しく知ることで能力は上げられるはずだ。
他の幻影として生産者の師匠の方々も登録している。これもまだ秘奥があるように感じているのでその実力まで努力したいように思う。
起床後、朝食を済ませ、30分の入念な柔軟体操。不死者にもまれたことでより無駄が省かれ洗練された型を流れるように行っていく。整理体操を30分行いエリアスが迎えに来るまで一時間ほどのんびりと朝の時間を過ごす。
午前九時エリアスに転移させられ不死者との訓練開始。
今日の先生はシードさん。
シードさんは幼少のころ僕を助けてくれた不死者だ。今回の不死者による訓練週間で再会を果たした。シードさんが僕の事を覚えており、セントヴェンまで運んでくれたことを教えてくれたのだ。僕も助けてくれた人の名前のみマートさんから教えられていたのとリアナの証人もありその言を信じることとなった。
シードさんの戦闘方法は基本的に体術。補助として樹魔法などが使えるが戦闘で一番に多用する技術、能力は体術スキルに基づく戦闘技術だ。僕がシードさんから適応できた能力も体術であることもあり、シードさんとの訓練は体術スキルの理解に費やされることになる。
実戦さながらの組み手を繰り返し、シードさんから少しづつ技を盗んでいっている。訓練の終了は僕がシードさんに一撃入れること。最近になって現実時間で一時間ほどで決着がつくようになってきた。それでもまだシードさんは全力を出していないのだから先はまだまだ長い。
「やっぱりいい筋してるよ うちの体術に順応してきてるんだから」
どこかおっとりとしている一人称が『うち』のシードさんと組み手を続ける。
拳を受け流し脚撃を試み、受け流され、鋭い貫手を最小限の動きで回避し、また攻撃を繰り出す。攻撃し攻撃され、回避し回避され、僕が決め手となる一撃を与えることができるまで組み手は終わらない。
「ありがとうございます でも、まだまだです シードさんも全力ではないでしょう?」
「うん、全力ではないけど百分の一の実力は解放してるよ それについてこれるんだから大したもんだ」
この緊張の許されない攻防が百分の一。どこか男勝りの口調からマイペースに絶望的な実力差があることを教えられる。
「・・・頑張ります」
「あんまり自分を卑下しない うちの実力はそれこそ何十億年分もの研鑽の果てだ そんな存在に短時間で組み手ができるようになっているのだから誇ってもいい」
どこか厳しい口調で注意される。僕の少しの表情の変化で内情を言い当てられたようだ。戦闘技術、能力以外の分野もこういった何気ない指摘で規格外だと理解させられる。
「ありがとうございます」
僕はお礼を述べ、攻撃手段が異次元になりつつある体術のみの組み手訓練を続ける。
不死者との訓練の日々に曲がりなりにもついていけているのは、僕の異世界に対する適応あってこそのものなのだろう。凡人である僕がここまで出来ているのはそれとしか思えない。
僕が知らない間に適応していた能力『体術Ⅹ』。これはシードさんに助けられたときに適応していた能力だった。今回、シードさん本人からこの体術について教えてもらっている。まぁ、この組手の中で一つでも盗んでみろといった訓練だが、僕は日に日に実力が上がっていることを実感している。
『体術Ⅹ』を本人に教えられたことでこのスキルがいかに壊れているかを理解することになった。シードさんの世界のスキルは壊れている。スキルをⅩまで育て上げるとどんなスキルでも壊れた性能になる。
スキルに関する理を強制的に理解させられ、才能を植え付けられる。そこから自身の体に馴染ませていくことで真にスキルを習得できるといった流れだ。
理解するためにも最低限の身体能力が要求され、理解できたとしてもそれを最大限に活用するにはより高次元の能力が要求される。
僕が適応できた『体術』はまだいい方だった。幼少の頃は理解できる下地が無かった為スキルが発動することはなかったが、カンストしたステータスを手に入れた今は僕がどれだけ無駄な戦闘を繰り返していたのかを理解させられ愕然としたものだ。出来ていると思っていた基礎を否定され、根本的に見直すことになる。筋肉のつけ方も一からやり直し、農家印のプロテインに大変お世話になった。
シードさんと組み手を繰り返すことで徐々に最適な知識通りの動きができるようになったが、今度は会得した基礎から自身の能力に落とし込む作業を強いられる。
僕は毎度の様に『真似る』でシードさんの動き方を観察し物真似をし、最終的に自身に落とし込むことでものにしようとしている。
シードさんは僕が少しでも理解したと判断するとガラッと戦闘方法を変え僕に困惑をもたらす。基礎が完成されているからこそできる戦闘方法の激変。拳主体が足主体に、手刀主体になり、型を完全に崩したステゴロ、柔術、投げ技、手段を択ばない戦闘方法、逆に型通りの見本のような美しさ、変幻自在に組み合わせることもあった。
いまだ、僕は自身の能力に体術を落とし込めていない。まだまだ『真似る』で理解し続ける段階だ。
そんな壊れたスキルをシードさんは13種類も所持している。僕は体術一つだけで振り回されているのに13種類ものスキルを掌握しているのだからすごいとしか僕には言えない。
組み手の攻防が続く中、シードさんの動きが変わる。
「これも教えておこうかな?」
瞬時に僕の懐に潜り込んだシードさんはそっと右手を僕の腹部へそえる。
「ッフ」
「Gyuぎ」ごふっ
僕の下腹部に激痛が走った。あまりの激痛に意識が一瞬途切れ、強制的に覚醒する。
「ゴホゴホごp」
吐血が止まらない。『クリーン』が発動しているのに治る側から傷ついていっているようだ。
「ふぅ 今のは体術を極めた先にある発勁だよ 寸勁とも言うね」
「発勁ですか?」
「そう、細胞単位で破壊する物理攻撃 魔力は一切使ってないのにすごいものでしょ?」
どうにか痛みが引いてきて頭が回り始めた。さらに何度か『クリーン』を発動すると完全に痛みが引く。
「『クリーン』でもすぐに治らないとか異常です」
「うんうん、うちでも集中しないと成功しないからね 今のセイならできるになるまでそう時間はかからないはずだよ」
僕にもできるのだろうか?あんなすごい技を習得できるのだろうか?
「・・・やります」
「・・・うん、その意気だ」
それからも組み手は続き、僕が何とか一撃を入れることができたのは現実時間で一時間後の事であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午前十時に不死者との訓練が終わり、昼食まで休憩時間となる。
リアナと何ら変わらない雰囲気で昼食を取った後、今日の活動を開始する。
今日は冒険者としてクエストを受ける予定だ。外出する準備も整えていたので昼食後早速、冒険者ギルドへ向けて移動する。
道中のセントヴェンの景色は相変わらずだ。人種の入り乱れる坩堝。人々の喧騒が騒がしい。
冒険者ギルドでは探索者協会ほど親しい人はいないので事務的な処理に終わる。クエストを受注し詳細を確認した後、現場へと向かった。
転移で討伐目標であるワイバーンの生息する森まで移動し森の中へ侵入する。
索敵もそこそこにワイバーンを発見。
弓矢を引き絞り~ 性格に狙いを定め~ 放つ!
放たれた一矢は脳天に直撃し即死する。
日常の冒険者としての活動は三行にまとめられる程簡単なものだ。討伐対象や採取対象の生息する場所へ転移で移動し、高い能力を生かした索敵で対象を捕捉、瞬時に目的を達成し、帰還する。
今回であれば、移動に数分、索敵に五分ほど、討伐に一矢。時間にして15分もかからないうちにクエスト終了となる。
その後は時間つぶしも兼ねて素材採取や森の中を散歩し夕方頃に帰宅となった。
冒険者ギルドにクエスト達成を報告し自宅に着いたのは18時ほど。後は特に予定もないので思い思いにゆっくりと時間が過ぎて行き就寝となる。
セントヴェンで暮らす日常はいつもこのような感じで基本的にマイペースに過ごしている。
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「・・・・・」
私の朝は早い。セイが起きる三十分前には起床し朝の支度を始める。
横で寝るセイを起こさないように起き上がり、、、ちょっとだけセイを補充して、朝食の準備に取り掛かる。
朝食は軽めに済ませる。この後運動をすることも考えて重い食事は控えてる。
今日の朝食はコーンポタージュにバターと一緒に焼いたトースト。シンプルなメニューだけど作り置きしているコーンポタージュは私のこだわりの逸品だしトーストに関しても箱庭産の出来立てのパンだ。
セイが起きてきたのでパパッとセッティングし朝食の時間となった。
「「いただきます」」
サクッ
焼きたて出来立てのトーストはいい音がなってとても柔らかい。ポタージュに浸したらまた違った触感と風味を味わうことができる。うん、今日もできはよし。
「んー、今日も美味しいよ」
「ん」
セイは素直に感想を言いながら朝食をとってくれる。私にとってその何気ない感想が幸福を教えてくれる。
「「ごちそうさまでした」」
他愛もない会話を交わしながっら朝食の時間が終了し朝練の時間となる。
三十分の入念な柔軟体操。私とセイで交互に伸ばし合いゆっくりと体を解していく。真剣に行っているときは私が触れ合ってもセイは赤面することはない。少し鋭い表情はいつもの可愛いゆるゆるな表情とのギャップもありキュンキュンする。
柔軟が終わったら型の始まりだ。私がセイに憑依し魔力の循環速度を上昇させながら一連の型を行っていく。セイの行う型は日に日に洗練されていく。不死者とも模擬戦の経験もすごい速度で吸収し自身の不必要な動きを省き、足らない動き方を取り入れていく。今行っている方は初期と比べれば全くの別物だ。見る人が見れば美しい舞の様に見えて見入ることになるのではないだろうか?
セイに憑依しているときの多好感は初めほど酷くはないがなかなか慣れない。息を乱すほど致命傷ではないが幸せな気持ちが溢れてなんというかずっとこのままでいたいという気持ちが強くなる。セイの実力が上がるごとに多好感も増すので慣れるのに時間がかかる原因の一つだ。今しばらくはこの感覚が続くのだろうと予想している。
整理体操も柔軟体操と同様に入念に行い朝練の終了となる。シャワーで汗を流した後エリアスが来るまで一時間ほどゆっくりとした時間を過ごす。
今日はちょっと甘めなロイヤルミルクティーと甘さ控えめのクッキーでティータイム。
セイは甘いものが好きで、ロイヤルミルクティーを飲んだ時の緩んだ表情がかわいいのなんの。視界の隅で私の分身たちが悶えている姿を見るに私の心情としては同じようなものだが表に出さないように気持ちを落ち着かせる。
時間通りにエリアス登場。例の亜空間へ連れ去られ不死者との訓練が始まる。
今日のお相手はシードさん。昔、セイを救ってくれた不死者だ。
翠髪の綺麗な女性で初めは警戒したが関わっていくうちに内面は男性寄りの思考らしく警戒しても無駄と判断した。セイもとくに彼女の容姿に思う事はないようなので問題なし。
訓練はシードさんとの組み手。私は常にセイに憑依し補助を行いながら、シードさんの分身と私の分身でぶつけ合う。分身同士の為、消滅するのも構わず殺し合いの訓練。私の分身が何体も消される中、何とかシードさんの分身を一体撃破することに成功する。
セイも同じような時間で一撃を与えることに成功し訓練終了となった。
この不死者との訓練は軽く異常だ。体感時間で100年近く組み手を休みなく繰り返しすことになる。それだけでも異常だが、連続100年もの間尽きることない戦闘の手札、同じことを繰り返すことに対する強靭な精神力、身体能力も私たち以上のものを平然と持ち合わせているなど不死者と関わればかかわるほど異常性が浮き彫りになっていく。
私はもう純粋な戦闘能力ではセイに敵いそうにない。戦闘技術を異常な速度で成長し続けているセイに対して私の成長速度は平凡だ。分身体を活用することでより濃密な戦闘経験を得られるように工夫しているが習得状況としては芳しくない。
ここから先の私の役目はセイの補助に特化させるべきなのかもしれない。憑依による強化や魔法補助、情報収集、あとは身の回りのお世話などメイドとしての能力を高めた方がセイの役に立てるように思う。
訓練は今後も続けていくが、より多様性を身に着けるために私は私で訓練をしていく予定だ。分身体を今まで以上に過労死させる勢いで働かせる必要があるのかもしれない。
訓練終了後、自宅へと戻り昼食まで思い思いに過ごす。
セイは気力が抜けているようなボケーとした顔でソファーに倒れている。そんな何ともかわいい姿を視界の端に収めながら私は昼食の準備と料理の作り置き作業をする。
分身体が進めていた料理の数々の最終チェックを行い、より美味しいものをと試作を続けている。
今私が試作しているのはプリンだ。いろいろな風味を試して種類を増やしている。苦めのカラメルソースにしたり、甘さを変えてみたり、カボチャなどの野菜やフルーツの風味を試したりなど分身体を活用して試している。
今日は絶妙に変えてみたスタンダートなプリンをおやつに出そうかな?昼はちょっとガッツリめにしようかな?こってり系のラーメンでもいいかも。最近食べていなかったしそうしよう。
作り置きしてあるスープを取り出し麺を茹でたら具材をトッピングするだけでラーメンが完成する。無難にチャーシューとメンマ、海苔、煮卵、もやしをのせてお好みでニンニクとかの調味料をかけてもらおう。チャーハンも作っておこうかな?
匂いにつられてセイも再起動したので昼食にする。
「「いただきます」」
よほどお腹が空いていたのか初めはがつがつと無言で食べ勧め、気分が落ち着いたあたりで雑談を交えながらの昼食となった。
一心不乱に食べるセイの姿も可愛らしい。なんだろう?一口で食べれる量は少ないからか小動物が食べているような可愛らしさがある。食べる勢いはガツガツの擬音語があっているのに見た目としてはカツカツカツッといった擬音語があっているかも。
うん、とりあえず美味しそうに食べてくれているからよし。かわいいのも尚更よし。
「「ごちそうさまでした」」
満腹になった後は今日の予定である冒険者ギルドに向けて移動する。
セントヴェンはいつもの様に騒がしい都市。
最近は時折感じていた不審な視線もなくなり、気にすることなく過ごしている。エリアスに忠告されて少し警戒していたが何一つ起こることなく視線が消えたので、ちょっと警戒して損をした気分。
冒険者としての活動は何ら問題も起こることなく達成する。討伐対象を速攻で討伐し残り時間はセイと森の中をデート。素材採取も行いながらも自然の中を新鮮な空気を堪能しながら歩いていく。
途中、湖で三時のおやつとしゆっくりと自然を眺めながら新作のプリンを出してみた。自然の景色もそうだがセイの心底幸せそうな表情がもうたまんない。分身の撮影班が狂喜乱舞している感覚を感じながらもセイの横でなんでもない時間を幸福の中で過ごした。
夕方頃、セントヴェンへと戻る。
冒険者ギルドには余り知り合いはいないがセイに話しかけようと隙を伺っている女性職員はいるので、それはさり気無く遮っておく。私のセイにあまり悪い虫はつけたくない。
帰宅後は自由な時間。
セイは完全にオフモードでだるんーとした感じでゲーム機をいじっている。この前作っていたオフラインのゲーム機をいじっているようだ。市販で売っているゲームをプレイできるように調整しているらしい。古いゲームをプレイできるように作っているようで様子を見るにもうそろそろ完成するかな?
私は私で自由時間を過ごす。四六時中セイに張り付いていてもお互いにあまりよくない。セイはうっとおしく思ってしまうだろうし、私としては少し離れるのも違ったセイを発見できて良い事となる。
私は今日一日の分身体からの報告をまとめている。あまり大きな情勢の変化もなく私たちに危険が及ぶようなニュースもない。最近賑わせ始めた未確認生物のニュースが少し気になるぐらいかな?これに関しても特段警戒するに値しないと判断している。
さて、昼頃に進めていたプリンの試作の続きをしよう。よりおいしくするにはどうすればいいだろう?うま味が出るように茸でも入れてみる?昆布かな?うま味成分を抽出する?いやいや出汁を取ったらそれは茶わん蒸しだったけ?うーーーーん?よし、毒を入れてみよう!
傍から見ると狂気のクッキングを普通な夕飯を作りながら進めていく。九時頃に夕飯を済ませ夜もそこそこの時間に就寝となった。
リアナの一日は大まかにこのような流れ。セイと同じような時間帯を分身体を活用して裏作業を進めながら過ごしていっている。
夜二時。一人の人影がセイとリアナの眠る寝室に訪れる。
「リアナ? 起きてる?」
「ん おきてる」
セイが起きない中、リアナは起きておりその者と会話する。
「ホントにいいの? 結構酷い事を頼んでいると思うんだけど」
「ん マートならいい セイも信頼してるし、、、マートが辛そう」
「ぅ そうだけど、、、 いいえ、分かったわ お言葉に甘えるわね?」
「ん 計画通りにセイは起きない 夕食もそういうモノを選んだから万全」
「ありがとう リアナ」
今日の夜はいつもよりも少しだけ長かった。
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