第30話 幕間 続 少女の繰り返し

私はアドリアナ・ヴォフク。セイと暮らしていく日々はすごく充実している。


不満?そんなものない。セイと居ることができるだけでもう幸せなのに、セイは私の全てを受けとめてくれるから幸せの上の上の上の・・・・・要するに、ここが楽園。


寝顔かわいい。仕草かわいい。戦ってる姿もかわいい。とても表情豊かでかわいい。ほんとにおいしそうに食べてくれる。少し抜けてる時もある。私の事を気にかけてくれる。セイのセイもかわいい。


あれだけ繰り返してセイの全てを知った気になっていても新しい日々を送るごとに今まで知らなかったセイについて知ることができる。


繰り返しの時間を超えて退屈になるどころか、様々な刺激が増えて世界がどんどんセイで溢れていく。


セントヴェンでの日々。


冒険者としての活動の日々。


文字にするとたった2行で済ませることもできるが私にとってループを抜けた新しい日々はとても楽しい。


セイの交友関係も繰り返しの日々の中で多くを知っていたが、実際に会って関わることでセイにとってどういった人物なのかより詳しく知ることになった。


とくに職人職の方々。才能は並、しかし努力が尋常ではないセイを見込んで数々の技術を伝授していた。セイが関わった全ての職人が教えたいらしく、何徹も繰り返すことになるほど時間を費やした。セイは過酷な指導環境に文句も言わず答えてしまうので、より酷い事になってしまっていた。


私はセイを全力支援する。繰り返した時間で手に入れた数々の技術を駆使してセイの負担が減るように支えた。食事、睡眠、家事、などなど普段の生活を全力で支援することでセイは体力や精神の消耗を抑えて修行を続けることができた。


その後の四台迷宮の攻略もソロ攻略より安全に活動できることで不安な場面もなく活動できたように思う。この世界は時折、意味の分からない生物が強いことがあるため驚くことが多かったがそれは楽しい経験として置いておくことにする。


冒険者としての活動も大きな危機は起こらなかった。様々な方々と交流し各地を旅したが私たちを脅かす存在が現れることはなかった。


自由気ままなセイと私のラブラブ生活。あぁ、ほんと幸せ。






世界を巡りセントヴェンへ帰ろうとしているとき、エリアスに重力の孤島に飛ばされてライムの試練をすることになった。


セイはこの試練で急激に強くなっていく。私はセイに取り残されない為に離れない為に見捨てられない為に試行錯誤をする。


同じ時を繰り返したループする能力を任意の時間軸で操作できるようにスキルを獲得していく。


スキル獲得後、何度も繰り返し熟練度、スキルレベルを最大値まで上昇させる。


その後、セイといるために適応に関するスキルを獲得していく。


これらのスキルも同様に最大値まで上昇させる。


私は前回の繰り返しの時と同様に繰り返す時間を武器に自身を鍛えていく。


急成長するセイに追いつくためにはこの方法しかなかったわけだが今回の繰り返しの日々は全く苦とならなかった。


セイを好きって感情がどれだけ重複しても何も問題はない。それに何度繰り返してもセイが受け止めてくれるので前回以上に充実した時だった。


私が疲れた時は1ループまるまる休息の日々にセイが甘やかしてくれたので本当に幸せな時間だった。


休息の日々の内容は美味しかったですということで割愛させていただきます。


その後も何度も繰り返し、初見殺しに対応し、セイの成長にも遅れることなく私も成長することができた。


セイの能力も私の能力も最大値まで上昇させることができたので私の不安は解消された。不安だったこともセイに話した。もし、セイに能力が追いつかなかったとしてもセイは私を見捨てなかったと、私が大好きであると、私がいないなんて考えられないと、心が教えてくれたので不安は杞憂だったと思い直すことになった。


少しずつ環境に適応し、それぞれの環境の主に認めてもらいライムの試練を乗り越えることができた。


最後のイフリートとの闘争は特に肝を冷やした。他の主戦でもセイが傷つけられることはあったがイフリートとの闘争ではこれまで以上にセイが傷つけられていた。セイは自身がどんなことになっても感知しない。代わりにセイ以上に私が心配するのだがこの時はセイの体がほとんど炭化してしまっていた。体重も半分以下になるほどに欠損と再生を繰り返しその姿は私の心を痛めるのにこれ以上のことはなかった。


私はセイの得た力を信じている。セイのこれまでの道程を知っているが故にセイ以上にセイの事を信じている。けど、今回の最後の戦いはセイがいなくなってしまうのではないのかと不安になった。セイは決着がつくまで決して止まらないことを改めて理解させられた。それはいつか取り返しのつかないことになるのではないかと不安に駆られるには十分だった。


でも、セイを信じる気持ちに陰りはない。話していることは矛盾だらけだがセイを信じないという選択肢は私アドリアナ・ヴォフクには存在しない。例えどんな状況であったとしてもこの思いだけは変わることはない。セイを大好きな気持ちだけは決して変わらない。


これからもセイは無茶をするのだろう。この世界で最上位の能力を手に入れたとしても力の研鑽を怠ることはないのだろう。




セイが欲しいのは絶対的な力。誰にも侵されることのない力。大切なものを失わない為の力だ。




私はセイに守られる女ではない。セイを大好きなセイを失うことを許さない貪欲な女だ。


私はセイだけのモノ。セイは私だけのモノ。例え死んでも離さないし離れない。




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とても豊かな自然。環境は安定しておりとても過ごしやすい気候に整えられている。


私の箱庭には私とセイにとって有益なものしか存在しない。私の分身体が各地を管理し箱庭だけで生活が完結するように作りあげている。


畑にはそれぞれの環境に合わせて作物が育てられておりいつでも新鮮な作物を収穫することができる。品種改良も随時進めており、時折破天荒な作物が実ることもあるが概ね大きな失敗はない。


鳥や牛、豚などの食肉も育てており森のような区画に放し飼いされている。敵対的な生物がいない為とても管理がしやすく、様々な動物が住んでいる。


湖や川、山、海も箱庭には存在するため、様々な生物を飼育、管理、放し飼いしている。


とても温かい日差しの中、何ともぽかぽかとした陽気の中、のんびりと釣りを楽しむこともある。


「「・・・・・・」」


ライムの試練中の繰り返しの時の中の一幕。


私が疲れていることを察知したセイの提案により今回のループを休息に充てていた時の一時だ。


流れていく時間を気にすることなく湖に釣り針を垂らして静かに過ごす。


「「・・・・・・」」


何も話さなくても側にいるだけでとても心地いい。


指を絡めてみたり、体重を預けてみたり、なでなでを要求してもセイは一切嫌な顔することなく優しい表情で答えてくれる。


「・・・リアナさん? さすがにそこは釣りの最中に触る場所ではないと思うのだけども・・・」


「ん、セイのセイは私が育てた」


セイは、私が体を押し付けたりほっぺにキスをするだけで、すぐ赤面してしまう。


「ん、顔まかっか」っちゅ♪


「ッッッッッ!! それはリアナがそんなところを・・・」


セイはほんとにかわいい♪


「いや?」


「ぇ、ぁ、そのぉ ・・・・・・・・・・いやじゃないです」


なぁ~にぃ?そのかぉ♪


「正直でよろしい」っじゅるり


「ぇ、まってまってまって・・・・・」











ごちそうさまでした♪







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セイが大好き過ぎるリアナさんです。

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