第18話 冒険者としての旅 ダイジェスト

僕は最後の指示である『死地へ赴け』を実行するために旅をすることにした。


セントヴェンのダンジョンは最難関の四大迷宮を攻略した。難易度は最難関と言うだけのことはある極悪なものであったが僕とリアナでは死地とはならなかった。


四大迷宮以上の難易度のダンジョンはセントヴェンに存在しない。この地では目的を果たせない為外に出ることになったのだ。


セントヴェンを発った翌日は僕が生まれた地である村に向かった。そこは既に立て直され全く知らない村人が住んでいた。僕が住んでいた家も取り壊されており僕の僅かに残る記憶と似た場所はどこにもない。


ここは僕の場所でないことを深く理解させられ極わずかに残っていた未練のようなモノが無くなったことを飲み込んだ。


三十分も滞在しないで冒険者として最初の目的地である国へ向けて歩き出した。




==冒険者としての旅路==




僕とリアナの二人旅(ビーちゃんも合わせれば三人旅?)は順調に進むことになる。


この旅の目的は以下の通り。


・死地と呼べるほど危険な環境を探すこと。

・僕の見聞を広めること。


大きく分けてこの二つだ。


具体的な目的ではない為、大陸の国々を網羅するように回りたいと考えている。


この世界の大陸は大きく分けて三つだ。人間種が多く建国している人類種の大陸『クリガース』。長命種が多く建国している魔人種の大陸『ラルドネ』。最後に獣人種が遊牧民の様に過ごしている獣人種の大陸『グンダヴィラ』だ。


僕が今滞在しているクリガース大陸から見て北にラルドネ大陸があり南東にグンダヴィラ大陸がある。地図を上から見ると三つの大陸を線で結ぶと丁度海を挟んで三角となる位置関係だ。


僕はこれら三つの大陸を見落としの無い様に旅をしたいと思っている。グンダヴィラ大陸に近い南東端の国から時計回りに大陸を進んでいき最北のラルドネ大陸と海路で繋がる港まで向かう予定だ。


大陸の中心から三大陸が囲む中央海に近い位置に迷宮都市セントヴェンがある。最初の旅路は中央海の海沿いに南東へ下り南東端の国へ向けて進んだ。




~人類種の大陸 クリガース~




最初に訪れた国はヴ―ドリア統治領だった。


この国は実力がものを言う国。グンダヴィラ大陸と近く強者こそが全てといったような思考が深く浸透している。グンダヴィラ大陸は他の二大陸と比べて過酷な環境だ。二大陸はレベル50相当の実力があれば危険に侵されることなく過ごすことが出来るがグンダヴィラ大陸はレベル70相当の魔物が多く生息している。他の大陸よりも危険な環境ということもあり弱肉強食の思想が浸透しているのだそうだ。


この国は獣人が多く在籍している。海を渡った向こうから見ると休息の地として発展してきた国だ。大陸間に島が転々と存在するためこの港が最前線という訳ではないがグンダヴィラ大陸から見ると安住の地の一つとして見ることが出来る。


僕たちの旅路は金銭に困っていない。セントヴェンの最難関迷宮を複数攻略したことにより一生困らないほどの大金を手にした。その為、冒険者としての仕事は殆どしない予定だ。身分証と地域ごとの情報を集めるために冒険者資格を獲得した。


ここまでの道中でも魔物を討伐しているがあまり換金する意味は少ない。冒険者資格を剝奪されないように細々と納品依頼を達成している。


話を戻そう。この国の特徴は実力主義の言葉に集約される。


何をするにも強者が有利な環境だ。闘技場で優秀な成績を収めればそれだけでVIP対応になる。宿は高級な場所を利用できるようになり、装備のメンテナンスや娯楽などの予約を優先的に利用できるようになる。


グンダヴィラ大陸の獣人は危険な環境ということもありここまで渡航できた者は強い。獣人は人族よりも身体能力が高く、感覚も鋭い、反面魔力操作が不慣れな種族も多いがどの種族も潜在能力は高い傾向にある。


クリガース大陸の強者の平均レベルが50後半から70前半ということも強さに開きがある要因の一つだろう。


この国での人族の立場は他の国と比べると低い。差別されるような環境ではないが肩身が狭く感じる程度には疎外感を感じるだろう。


人類種の大陸クリガースの中でも最も獣人が多く在籍している国がここヴ―ドリア統治領だ。


この国で一番有名な施設は闘技場だ。この闘技場で強さを認められることが一種のステータスとなる。強者を自負する者は挙って参加するのがこの場所だ。


僕は闘技場に参加していない。どのような場所か観戦をしたが参加はしなかった。お金には困っていないしこの国に長居する予定もない。闘技場は部位欠損などの大怪我をすることはあるが医療設備が充実しているため死ぬことは滅多にない。観戦してスポーツのようで楽しいが僕の求める環境ではなかった。


闘技場の次に特徴的な事は有名な道場が数多く在籍していることだ。この国の道場の出の者が有名になった事は多い。流派も様々でどれも一流。僕はいくつかの道場で師事を受けたいと思っていた。


しかし、僕は入門することが出来なかった。理由はジョブだ。僕のジョブは遊び人。どの道場も入門する最低基準が対応するジョブに就いていることだった。


剣術なら剣使い、弓術なら弓使いというようにジョブに就いていなければ入門することが出来なかった。


時間をかけて探してみたが遊び人でも入門できる道場は一つもなかった。僕は入門を諦めるしかなかった。


どうしても入門したかった訳でもないのですっぱりと諦めることにする。


リアナと共に情報収集と並行して観光を楽しみ、様々な物を購入して次の国へと渡ることにした。




次に訪れた土地は様々な国が乱立する大陸西だ。


セントヴェンから見て西、大陸中央を縦断するように山脈が聳え立つ向こう側の土地だ。小国が乱立しそれぞれが協力するように過ごしている。過去には争いが絶えない土地だったが山脈を越えた先は自国の国力では到底かなわない大国があることを理解する。争っていた各国は戦争を辞め、連合を組み、大国に対応するようになった。


土壌としては豊かな土地なため農業が盛んだ。それぞれの土地に合わせた名産品が国力を支えている。


僕たちはヴ―ドリア統治領から南下し半島で孤立している国で準備を整えた後山脈を越えた。南から北へ小国群を網羅するように順番に訪れた。


旅路は順調に進んでいく。転々と存在する迷宮を攻略し街に訪れては納品依頼を達成し各国の名産品を堪能した。


順調も順調で問題も起こることなく北へと進んでいく。


小国群最後の地へ訪れ、山脈越えの準備を整えた後、もう一度山脈を越えこの地を後にした。




クリガース大陸最後の国はメンモセシ王国。


魔人種の大陸ラルドネ大陸へ向けて最短の航路が開いている国だ。クリガース大陸最北端の港からラルドネ大陸へと渡る予定だ。


メンモセシ王国はラルドネ大陸と最も近い国だ。過去に長きにわたる戦争を続けていた影響により人族至上主義が深く根付いている。他種族に対して差別的な思考が根付いた土地であったが今の時代ではそれも緩和されたと言われている。


実際に訪れてみて他種族の数こそそこまで多くはないが普通に交流している姿を見る限り緩和はされているのだろう。セントヴェンほど混沌とした種族環境ではないが他の国と比べても違和感ないほどには寛容になっているようにも思う。


この国では迷宮攻略や納品依頼を達成するといった今まで通りのことを済まし次の大陸に向けて準備を進めた。


大国ということもあり様々な物品が流れてくる。珍しい物をいくつか購入するなど観光をしつつも情報を集めていく。これまでの情報と照らし合わせこの大陸でのやり残しがないか確認していく。


クリガース大陸に存在する迷宮は全て踏破した。知られていない隠れた迷宮以外は全て達成したことになる。


全ての国にも訪れ山脈にも何度も登山した。大陸を網羅するように練り歩いた。リアナとも再度確認したが見落としはほとんどないだろう。


クリガース大陸の地図には様々な情報が書き加えられている。精巧な地図には余白がないほどにマークや文字で埋め尽くされている。こうして改めてみると達成感が湧いてきた。


僕たちは次なる地へと大陸を出立した。




~魔人種の大陸 ラルドネ~




ラルドネ大陸にある国家は一つ。ラルドネ国のみ。一つの大陸を一つの国が統治している。


魔人種とは長命種の総称だ。様々な長命種が協力しながら住んでいる大陸。


その為、生き証人が多く、歴史が古い。他の大陸では失伝した情報が残っていることがよくある。


反面、変化に乏しく、緩やかに時が流れている。文化や技術が進み難く他大陸の技術を貪欲に取り入れることで力を保ち続けてきた背景がある。


長命種と言う事は過去の大戦を生き残った者が多く存在するため人間種は住み難い土地が散見した。


僕たちは大陸の中心、首都ケメウィヌスを拠点に各地を回ることになった。首都周辺から徐々に地図の埋めていく。


僕たちはこの大陸で情報を集める中で世界の断片を知ることになった。


・種族が多様なのはなぜか?

・なぜ明確な神がいないのか?


大きく分けるとこの二つの情報を入手する。




始まりは人族が世界の境界に穴を開けたことで起こった。

異世界からの侵略。

穴を開けた人族の国家は滅びた。異世界との技術の格差は激しく、手も足も出ず滅びることになった。

侵略者は領土を広げようと各地へ散っていった。

異世界からの流入は止まらず、境界の穴は広がっていく。


侵略者が現れる。

撃退する。

侵略者が現れる。

滅ぼされる。

侵略者が現れる。

滅亡する。

侵略者が・・・・・。


今日まで延々と繰り返されてきた。




古すぎる情報は断片的な物であり詳しい情報は見つからなかった。侵略者はどうなったのか?滅ぼされた人族がいるのはなぜか?まだ繰り返されているのか?大戦の痕跡はあれど最近ので400年前のものなので情報が古かった。


分かったことはこの異世界から流入が原因で本来いないはずの種族がこの世界に住み着いたのでは?と考えられる。




ある侵略者は神を名乗った。

神を僭称する者はいなくなった。侵略者たちは急激に力を失い撃退されることになる。


背中に翼の生えた光の軍勢を目にした。

大地が赤に染まった。羽は散乱し翼は捥ぎ取られ後光さす飛ぶ者は一人としていない。


空が光に染まった。

弾けるように青に染まる。白銀の光は消え去り空は元の色に戻った。


神を名乗る者は存在しない。その全てが弾け、赤に染まり、骸となる。




様々な神殿に残る記録を閲覧したことで神がいたことが記録されていることを知る。しかし、どの文献にも神の名前は記されておらず最後には死んだと表記される。直接話を聞いても名前はわからず誰一人として知る者はいなかった。


残された最後の記録は死んだこと。どの文献も消えた、消された、食べられた、裁きを受けたなどなど言い回しの違いはあれどいなくなったことが記録されている。ご高齢の老人に話を聞いたときは瞳に畏怖の感情が宿っていた。


僕は怖くなり深堀しないように調査を辞めることにする。


この世界は様々な世界から侵略されてきた歴史がある。

神は消され何も残らない。




調べることを切り上げてからは地図を埋めることに専念した。首都を拠点に近辺から徐々に埋めていく。生態系や原生生物を分布図として地図を埋めていく。古代遺跡も散見され目印として地図に書き記した。


困難に陥ることも邪魔をされることもなく順調にラルドネ大陸を探索していく。


幾つかある迷宮にも挑戦し踏破した。セントヴェンに近ずく難易度の迷宮はほんの数個。四大迷宮を越える難易度の迷宮はなかった。苦戦することなく攻略することになる。


大陸を網羅した僕たちは最後の大陸であるグンダヴィラ大陸に向けて最東端の港町へと向かう。


情報収集と準備を整えた後、獣人種の大陸、グンダヴィラ大陸へと船が出港した。




~獣人種の大陸 グンダヴィラ~




グンダヴィラ大陸にある国家は二つしかない。それも他に大陸に向けて港を有する小国の二つだ。


ラルドネ大陸と繋がる北端の港を有するバダキャソ国。


クリガース大陸と繋がる南西端の港を有するイマピョア国。


この二国のみだ。


グンダヴィラ大陸は自然に覆われた大陸だ。険しい山脈地帯、最も標高の高い山の麓は樹海で覆われている。人の住める領域は開拓されておらず現地の獣人種は開拓しようとしない。


理由は単純で生態系の頂点が獣人種ではないからだ。様々な動植物、魔物が絡み合った生態系は知恵だけでは力不足だ。グンダヴィラ大陸の樹海は弱肉強食の生態系、再生と破壊を常に繰り返しそこに身体能力で劣る種が入る余地はない。


その為、国家は交易を行う二国のみ。他集落は遊牧民のような生活を繰り返している。


樹海の奥地の生態系は謎が多く残る。辛うじて開拓に成功した二国の周辺に出現する魔物の強さがレベル70相当だ。奥地の危険度がどれほどのものかは実際に入ってみなければわからない。


僕たちは北端の港、バダキャソ国から上陸し南西の港、イマピョア国に向けて街道を通らずに旅をする。


道中は確かに他の大陸と比べると過酷な環境だ。樹海を歩けば常に生命の動きを感じ緊張が切れる暇がなかった。襲撃も多くレベルも高い。整備されていない樹海の環境に慣れるまでは十全な実力を発揮できなかった。


しかし、数々の高難度迷宮を踏破した僕たちの敵ではなかった。身体能力の面でも負けることはなく、レベルがカンストしている僕たちにとっては『死地』とは呼べない。


襲撃の尽くを撃退し終いにはこちらから襲撃をかけ安全圏を確保することに成功する。


山脈を踏破し最高峰の山々を登頂し樹海の探索領域を広げ大陸の地図を埋めていった。


途中発見した迷宮にも挑戦し何事もなく制覇する。順調にことが進んでいき時間こそかかったが無事イマピョア国の港へと到着を果たした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

冒険者の旅路

・クリガース大陸

 迷宮都市セントヴェン⇒ヴ―ドリア統治領⇒小国群⇒メンモセシ王国

  約一年半経過

・ラルドネ大陸

 ラルドネ国、首都ケメウィヌスを拠点に活動

  約一年経過

・グンダヴィラ大陸

 バダキャソ国⇒樹海探索⇒イマピョア国

  約三年半経過

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




===============================




空は疎らに雲が流れ、何の変哲もない空模様を描いている。


僕は宿屋の窓際の椅子に座り外を眺めていた。口にビーちゃんを銜え大きく吸う。


すぅー―、、、ふぅ~、、、


微かに水色に反射する煙を吐き出す。煙は空へと昇り空に溶け込むかのように消えていった。


「この大陸にもなかった か、、、」


最有力候補であったグンダヴィラ大陸でも『死地』と呼べる環境に出会うことはなかった。


「どうすればいいんだろう、、、」


僕はビーちゃんをもう一度吸い、溜息を漏らすように煙を吐く。


この煙はビーちゃんが新しく獲得した能力だ。今まではジュースやゼリーのような飲み物に変化していた。その変化先に新たに追加されたのがこの煙だ。生成したエネルギーを気化させ霧状にすることが出来るようになった。この水蒸気と化したエネルギーは吸収がとても早く体の隅々まで行き渡る。


煙管のようなビーちゃんを銜える姿からも煙草を吸っているようで違和感がないこともグットだ。惜しむらくは僕の外見だろう。これで見た目が渋いダンディーであれば満点だったのだが、僕の見た目は・・・子供のままなのだ。


身長は伸びず、リアナの勧める女装をした姿は違和感がない。旅立ってから六年は経過している。年齢はステータスに表記されないが24のはずだ。なのに僕の姿は何も成長していない。


あー、そんなこと考えたら涙が出てきた。乱暴に拭って置く。


あ、ビーちゃんの風味はさらに増えた。ドリンクとしての味も煙としての風味も様々だ。今吸っている風味はフレッシュなハーブティーだ。スモーキーな木の香りも好きだが子供舌なのか甘めの風味が好き。


ガチャッと部屋の扉が開く。入って来たのはリアナだ。


「ん、手続きしてきた」


「ありがとう リアナ」


リアナには宿のチェックアウトをしてもらっていた。今日の午後の船に乗船してクリガース大陸へと渡る予定だからだ。


「・・・何か食べる?」


「うん 少し貰おうかな」


リアナはドライフルーツを出してくれる。リアナは僕の向かいの席に座った。僕はリアナからドライフルーツを受け取り食べる。


相変わらず美味しい。このドライフルーツはリアナの自家製だ。リアナの能力の一つ『箱庭』で育ったフルーツだ。リアナの箱庭内では様々な作物が栽培されている。中では酪農も行われており牛、豚、鶏が飼われている。


リアナはこの旅路で各地の名産品を獲得し自身の箱庭で生産出来るようになった。初めの頃は失敗が多かったようだが今では初めての植物でも育て上げることが出来る。品種改良にも手を出したようでときどき変わった味の作物が出ることはご愛敬だ。


リアナの箱庭はとても便利。野宿が必要な時は箱庭に入ることで雨風を凌げる。というか一軒家が建築されているのでいつでもどこでも寝泊りができるのだ。


何回か野営をしてみたが感想としては新鮮味以外特になく、積極的にしたいとは思わない。魔物がいつ襲ってくるか分からない為安心することが出来ないし樹海では野営する場所を作り上げるだけでも一苦労だったからだ。


とても快適、快適過ぎた旅路だったと思う。リアナには大変お世話になっているので何かないか聞いたが・・・その・・・うん、激しかったです。


この話は置いといて僕自身の変化は何かというと・・・あまりぱっとしない。


右手の甲を見直す。そこにあるのは花模様のタトゥーではなく、一つの魔法陣だ。


世界各地のダンジョンを攻略したことで右手の甲には様々なタトゥーが刻まれることになった。複雑に重なり合い黒く染まった手の甲は最後に挑んだ樹海の奥地のダンジョンを攻略したことでタトゥーの模様を自在に動かせるようになった。


動かせる範囲は右手の甲と狭いがぐちゃぐちゃだった文様を整理することが出来た。そこで僕は『ウォーター』の召喚魔法で使う魔法陣を記すことにした。


水を出す『ウォーター』の魔法陣以外は反射で出せるほど習熟できていない。属性や効果により召喚される現象は変化することになる。側となる魔法陣を咄嗟に出せるように右手の甲に記した。


中心は属性を刻むため円形の空白になっている。その円に触れるように集束の四角形と拡散の四角形が描かれる。大外にそれらを囲むように変化の円模様が描かれ簡易魔法陣となる。


タトゥーに魔力を通すことで描く工程をスキップし魔法を発動することが出来る。


簡略化されているため複雑な現象は召喚できないが咄嗟に火の玉な風の刃を繰り出すことが出来るようになった。


あとは、タトゥーによる身体能力の強化倍率が体感1.5倍から2倍になったことが大きな変化だろうか。


「セイの召喚魔法は上手くなった」


「そうかな? まだまだリアナには追い付きそうにないな」


ゆったりと時間が過ぎて行く。外を行き交う人たちは休日の昼過ぎということもあり足取りが軽いように感じる。


「・・・これからどうする?」


「う~ん 一度セントヴェンに帰ろうかな 長いこと旅をしたし故郷に帰るのもいいと思うんだ」


「ん、一度帰る」


順調すぎてあっという間に世界を一周してしまった。結局、死地と呼べる環境は見つからず終い。もっと広い範囲から情報を仕入れる必要がありそうだ。それこそ国家が秘匿するような情報を集めなければ見つからないかもしれない。


「ということでお姉さんの特別サポートよ! エリアス やっておしまいなさい!」


「は? あー、あれほれさっさ? てか?」


「「!?」」


僕とリアナは何一つ気づけなかった。窓枠に座った女性の声が聞こえたかと思えばその女性の側に現れていた別の女性に頭を掴まれた。


「エリアス!」


リアナは掴んでくる女性を知っているようだ。二人は体格こそ真逆だが姉妹と言えるほど似ている。


僕は驚きの硬直から動こうとしたがその前に状況が進んでしまう。


「まぁ、これはお前たちのためになることでもあるから頑張れよ後輩達」


エリアスのその言葉を最後に視界に映る風景や切り替わる。景色は鈍色の岩、、、。


「「~~~~~~~~~~!?」」


僕は上から押しかかる重圧に耐えることが出来ずカエルが潰れるように地面へと激突した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る