第11話 レベル上げの日々 中編
十日目
レベル50以降はこれまで以上に経験値が必要になる。どうにか連日5レベルずつ上げることができたが流石に無理が祟った。昨日の爆睡で完全に集中が切れたのか身体が非常にだるいです。起き上がるのも億劫で布団の中でビーちゃんに魔力を注いではちびちびと永遠と摂取しています。ビーちゃんを飲むと少し元気になるのだ。でも、今日のだるさは一向に治りそうにない。
今日はこのままビーちゃん漬けの一日を過ごそうと思います。ビーちゃんさえ飲んでればお腹がすくこともないしね~。では、おやすみなさいZzz。
十一日目
完全復活!昨日の怠さは何だったのかというほど元気ハツラツ!。
今日は武器のための素材集めをしたいと考えている。マートさんと相談してどのダンジョンに挑むべきか考える。マートさんは僕がすでに50階層に到達していることに驚いていた。
それはそうか、新人であれば戦闘に慣れることから始まり徐々に階層を進めることになる。約20階層前後であれば学生でも挑むことのできる難易度の階層だ。それ以降となると戦闘がガラリと変わる為、より慎重に進まなければならない。レンタル武器もほぼ使えなくなるため装備も並行して徐々に充実させなければ階層を進めることはできないのだ。
僕の場合は身体能力と魔力操作力でゴリ押した。『クリーン』と職人から習った修繕方法でレンタル武器の消耗を抑え、【無属性】で武器に魔力を纏わせ鋭さと頑強さをあげて利用していた。武器が通用しなくても『ショック』や魔力量が上がって実用性が上がった『バレット』の無属性魔法で牽制しながら急所を狙うことができる。緊急の防御方法として『シールド』も使えるようになったため危険性は大きく減っている。
『ショック』は両手で直接頭部に三割の魔力を放てば討伐することができるまでに威力を上昇させた。
『バレット』は圧縮した魔力を放つ魔法だ。高圧に圧縮することで魔力自体が物質性を持ち弾丸の様に放つことができる。初期の『バレット』はそもそも圧縮することができないため実用性がない。レベルをあげることで魔力量が増え、高度な魔力操作技術を身に着けることで初めて実用的に発動することができる魔法だ。
それなら、拳銃を使った方が早いというのは言わないお約束だ。
『バレット』は魔法である為リロードが必要ない。魔力量が残弾だ。弾自体が魔力で構成されている為理論上威力の上限がない。より高圧に魔力を圧縮しより高速で打ち出すことで拳銃では再現不可能な威力を実現できると言われている。
まぁ、ぶっちゃけロマン魔法だ。明確な利点といえば必要なのが魔力と魔力操作技術のみなので常に持ち歩くことが出来ることだろう。検問に引っかかる心配がない。犯罪向きである。犯罪には使わないようにしましょう。
僕のバレットは青あざが出来るほどの威力だ。殺傷能力はない。『ショック』と同様に牽制として活躍してくれている。
『シールド』は圧縮した魔力その場にとどめ壁とする魔法だ。『バレット』と同様に必要最低限の魔力と操作技術がなければ実用性はない。理論は『バレット』と同じで打ち出さずにその場に留める魔法だ。同じ魔力量でも防御範囲を狭くすれば盾として使えるようになる分こちらの方が有用かもしれない。
相手の武器の軌道を予想し置く形で『シールド』を発動すれば敵の攻撃を逸らすことや威力を落とすこと、タイミングをずらすことに使える。
魔法の説明はここらへんで終わりにしよう。マートさんに心配されてしまったが僕が無傷であることを確認し落ち着いてもらった。話し合いは進み、今の僕に合った今後も長く使える武器は現状の資金では到底届かない結論になる。今後もと考えると僕のレベルの上昇具合からすぐに武器の方が追い付かなくなるのだそうだ。
そこで僕が収集する鉱石はミスリルを中心に魔力に浸食された鉄鉱石や各種宝石、様々な魔物素材だ。それらが全て一度に集まるダンジョンはないため順々に回ることになる。
鉱石はゴーレムダンジョンへ。名前の通り様々な種類のゴーレムが出現するダンジョン。階層は10層と浅く、出現する魔物に階層の区別はない。入り組んだ立体構造の迷路の様なダンジョンでゴーレムが徘徊している。
宝石は洞窟型のダンジョンへ。出現する魔物は虫の魔物が多く、夜行性の小型の動物種の魔物も徘徊している。宝石は洞窟の外壁を掘削し採掘することになる。採掘のポイントは素人でもわかるほどに表面に金属類が突出している箇所だ。
魔物素材は様々なダンジョンに行かなければならないので今は後回しだ。
今日は、これから向かうダンジョンの情報収集にあてた。必要な道具や注意事項を確認していく。夕方を過ぎたぐらいに終わり、次は武器屋へ向かう。現状の資金で買える高品質のショートソードを購入した。性能としては試しのダンジョン40階層前後まで使える性能だ。ぎりぎりオーガを傷つけられるだろう性能。ゴーレム討伐には問題ない性能のはずなので間に合わせとしては十分だろう。
十二日~十八日目
早朝からゴーレムダンジョンに挑戦。迷宮を踏破する事が目的ではないので自分の場所を見失わない様に気をつけつつゴーレムを討伐していく。狙う魔物はミスリルゴーレム。全身をミスリルという魔力と親和性のある鉱石で覆われたゴーレム。ゴーレムは全長は3~5メートルほど、動きは遅く弱点となるコアが露出している個体が多い。中には人間の身長と変わらず俊敏な固体もいるそうだがこのダンジョンには出現しないので今は意識の外に置いておく。
ミスリルゴーレムの次に狙うはアイアンゴーレム。アイアンゴーレムの鉄は魔力に深く浸食さえている箇所がある。僕が欲しいのはその極一部の鉄鉱石だ。一体のアイアンゴーレムから取れる量は少なく今回の採取で一番に時間を食うことになりそうだ。
他にも様々な種類を討伐し魔力浸食の深い個所を採取していく。親方の教えでは合金にすることで性能を引き上げることができるそうだ。詳しいレシピは知らないので手あたり次第に収集していく。
時折出て来る弱点の露出していない個体に苦労しつつもゴーレムを討伐していく。大きな袋に種類別に鉱石を詰め『チェンジ』に登録できることに気がついてからは効率をさらに上げ収集した。
一週間ほどゴーレムダンジョンに通い満足のいく個数集まったので翌日からは次なるダンジョンに向かいたい。
十九日目
マートさんに休暇を言い渡されたので休暇です。軽めに運動し余った時間は図書館で読書をしていた。ドリスさんとも雑談しゆっくりと時間が過ぎていく。
二十日~三十四日目
宝石を採取できる洞窟型のダンジョンに挑戦。出現する魔物に強い個体はほぼいないため順調に進んでいく。明かりを灯しながら突然強襲してくる蝙蝠型の魔物に驚きながらも進んでいく。僕は索敵の基本である【隠す】を意識して自身の気配を隠しながら周りを警戒する。僕よりも魔物の方が鋭敏なようでなかなかうまくいかない。採掘中も索敵に集中しなければならないので戦闘以外で酷く疲れを感じるダンジョンだ。
僕は魔物の動きをスキル【真似る】を意識して真似ていく。気配の察知の仕方も同様に真似ていく。少しずつではあるが察知されにくくなることや逆に察知することが出来るようになる。この技術の向上に夢中になり当初の予定よりも長くこのダンジョンに通うことになった。
採掘の成果は上々で足りなくなる心配はなさそうだ。察知能力に関しては自身に落とし込む型を模索している。魔物の察知技術を人の技術に落とし込むのは難しい。これは少しずつ慣れていくしかないのだろう。
レベル51
三十五日目
休暇を言い渡されました。強制的にダンジョンは中断です。
ダンジョンに夢中で気づくのが遅れたが僕の学籍と宿舎の利用期限が過ぎていた。慌ててマートさんに相談したところ一瞬きょとんとした後に笑い出してしまった。
マートさん曰くあの宿舎の一部屋はもう僕の部屋らしい。この前の今後の相談の時に話していたそうだがそうだろうか?覚えていない・・・もしかして僕がおもちゃにされている時に言われたのか?
宿の心配がなくなったことは喜ぶべきなのだろうが何だろうこのモヤっとした感じは・・・。
よろしくお願いしますと改めて挨拶しその後は休暇なので図書館に行き読書をしていた。
三十六日~四十二日目
鉱石と宝石の収集が終わったので次に集めるは魔物素材だ。主に角や爪、牙、骨、鱗、を集めることになる。マートさんから情報を聞き武器として優秀な素材を集める方針だ。
殆どの素材がダンジョンボスの素材だった。ダンジョンの最奥で出現するダンジョンボスはそのダンジョンで最も魔力が集まる場所でありそのほとんどが一体の魔物の強化に充てられる。そのため強さとは別に素材として非常に優秀な魔物が多い。ゴブリンダンジョンでもダンジョンボスのゴブリンの眼球であれば優秀な調合素材となり初心者の資金源となる。
今回僕が集めるのは武器として使える素材なのでそれなりに強いダンジョンボスが多いようだ。約7割ぐらいがレベル50でも苦戦することなく討伐できそうだが残り三割ぐらいの素材群は苦戦を強いられるだろう。僕のステータスからしてマートさんの予想ではレベル60相当の魔物までは危険も少なく討伐できるだろうとのこと。
一まず比較的簡単に収集できる素材から手を付けようと思う。小型の魔物種から始まり採取していく。
兎の魔物だけが出現する通称ラビットダンジョン。途中出現するホーンラビットの角とダンジョンボスのソードラビットの爪を採取する。また、他のダンジョンで牙やついでに毛皮も採取した。
それからも様々な魔物から素材を集める。『チェンジ』の中に種類ごとに分けて収納登録し集めていく。小型、大型、特大型動物種の魔物の素材集めを終えたところで一週間が過ぎた。
四十三日目
今日もマートさんに聞いてダンジョンに行こうとしたが止められてしまった。探索者の中でも連日で探索する人はほぼいないそうで僕は半ば無理矢理、休暇を取ることになる。マートさんの厭きれたため息が耳残っている。
すべてとは言わないがほとんどの探索者が連日ダンジョンに挑むことはない。ダンジョンは命の危険と隣り合わせなのだから精神を休める意味合いでも連日ダンジョンに挑むことはほぼない。
僕の精神はそこのところがマヒしているのかもしれない。力を手に入れるためには自分を省みないような考え方がある。これを僕は自覚しているが直そうとは思っていいない。これのおかげで連日訓練をしハードスケジュールを熟せてこれたのだと思っているからだ。
心配していることがわからないわけではないが僕自身は僕のことを問題ないと判断しているためズレを感じるのかもしれない。
休む予定はなかったので当然、今日の予定はない。何も思いつかずとりあえず買い食いをしながら図書館へ行き読書をしてゆっくりと時間を過ごした。ドリスさんとも話したがマートさんと同じで呆れられてしまうのだった。
四十四日~七十日目
採取対象の魔物を全てメモしたので毎回マートさんに確認しなくても素材集めが出来るようになった。毎日、換金素材を買い取ってもらうのではなく数日置きに売却することで僕が連日ダンジョンに挑んでいることはバレない筈だ。ちょっとした悪知恵を働かせてみた。
素材の集まりは順調、武器の素材としては亜人系の魔物はあまり多くない。主に魔法操作の補助機能を持つ角が採取対象だ。今のレベルでも危険の少ないものとなると更に少なくなるため早々に終了する。
時間がかかったのは幻想種や異形種、不死種の魔物だ。
幻想種は物語で語られるような魔物。ユニコーンやペガサス、ドラゴン、龍、精霊などが有名だろうか?これらが出現する階層がどれも深い階層なので難易度もそれ相応に上がることになる。単純に危険度が高く難しいのがこの幻想種だ。
異形種は本来の生物としては異常な方向性に進化を遂げた魔物だ。低階層にいることもあれば深層にいることもありその難易度も様々だ。特異な進化を遂げた存在達の為、素材としても特殊性なものが多い。採取するだけでも対応した道具が必要になることや討伐方法が決まっている魔物もいる。幻想種とは別の意味で非常に面倒な種族だ。
不死種はアンデットが主な魔物である。バンパイアやサキュバス、デビルなど寿命が極端に長い魔物もこの分類に入る。これらの魔物が生息する場所はダンジョン自体が特殊な場合が多く苦労することになる。弱い魔物もいるが幻想種と比べても遜色ない魔物も存在するため今の僕のレベルではよく選ぶ必要があった。
時間はかかったが今の僕でも採取できる素材は集めきることができた。高レベルダンジョンの素材は試しのダンジョンのレベル上げと並行して少しずつ集めようと思う。
レベル53
七十一日目
マートさんにバレた!僕が連日ダンジョンに言っていたことがどこかで漏れたらしい。心当たりといえば門番の人かな?他の地区へ行くときに門を通ることがあるのでそこでバレたのかもしれない。
マートさんに強制的に休暇を言い渡されたので今日は休暇です。仕方なくいつもの様に図書館に訪れて本を静かに読んでゆっくりと過ごす。
七十二日目~百日目
鍛冶場の親方の元に訪れた。これらの素材で武器を作って欲しいと依頼しようとしたのだが何故か僕自身で作ることになってしまった。展開が早すぎて口を挟めない内に話は決まっていく。あれよあれよという間に僕はまずインゴットを作ることから始めることになった。
錬金術師のパワフルおじいさん監修のもとインゴット作りが始まる。僕のこれからの戦闘で耐えうるインゴットのレシピを実地で教えられ自分自身で作ることになる。余った素材で自由に制作してみようと余分に集めていたので素材が足りなくなることはなかったが必要なインゴットを作りだすまでには失敗も多かった。
やっと終わったと思ったら次は鍛冶場の親方の元で刀身や盾など各種武器を作ることになる。ほぼ同じ素材で親方が作るのを【真似る】かたちで僕自身も作っていく。何度もインゴットに戻すことを繰り返しながら徐々に形にしていく。いくつか素材をダメにしてしまったが何とか作り出すことができた。
そしたら今度は木工のムキムキ姉御の元で弓と持ちてを作ることになる。鍛冶場と同じで姉御の手本を見て【真似る】、それから僕自身で作成していく。何度も失敗しながらもなんとか完成。
次は細工の寡黙なおじさんの元で組み立てることになる。柄の内部構造の刻印は細かすぎた。詳細を説明されたが覚えきれた自信がない。最後の方は機械的に黙々と作業しながらおじさんから【真似る】で取得した動きを再現しようと心が死んでいた気がする。ここまでほぼ休みなしだ。中には徹夜した作業もある。精神が死に初めても仕方がないと思う。どうにか最後の気力を振り絞りすべての工程をやり遂げることができた。
これで何故か自分自身で作ることになった武器は完成だ。完成した武器を『チェンジ』にしまっていると裁縫のおばあちゃんが僕に革防具一式ととても頑丈な革と金属交じりの綺麗な靴をくれた。僕の余った素材から作ってくれたらしい。僕はありがたく頂戴し『チェンジ』に登録する。靴は精霊の靴にすぐさま合成だ。そこで僕の緊張の糸が切れた。
翌日は死んだように爆睡し目覚めたのは夕飯前かな?寝ぼけ眼で見渡すとマートさんに叱られている親方たちが目に留まった。おばあちゃんはひょうひょうと隣でお茶を飲んでいる。
しばらくボーとした頭で考えていたがとりあえずビーちゃんを補給し再度眠りについた。
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セイ 12才
レベル:53
種族:人間(固定)
職業:遊び人 53
スキル
【斬る】【突く】【打つ】【流す】【中てる】
【隠す】【無属性】【真似る】
魔法
生活魔法
【クリーン】【ヒール】【ウォーム】【クール】【ドライ】
【ウォーター】【チェンジ】
精霊の靴
素材強化 合成強化
バフ
ジャンプ強化(中)ダッシュ強化(中)消音(中)
キック強化(中)脚力強化(中)耐久性強化(中)
踏込み強化(中)軽量化(中)デザイン性(大)
テイム
エナジースライム<ビーちゃん>
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