第3話 敵対と共闘
エールはやっと落ち着きを取り戻したようだ。二人は白い空間の
……何だこの気まずい状況は。何の時間だこれは。なぜ宿敵であるはずの神を
カインの中に次から次へと疑問が
……このままではラチがあかない。止むを得ん。
「……おい」
「はいっ!?」
「一々驚くなよ……。神を名乗るのであればもっと堂々としていろ」
「は、はい……」
伏目がちなエールにカインは思わず
「そう言えば、お前さんのことは何と呼べば良い?」
「あっ、エールで大丈夫です。あなたのことは……」
「好きに呼べ」
「はい、じゃあ……カインさん」
……き、気まずい。さっさと話を続けよう。
「で、エール。お前さんは
カインはそれを
「……半分当たってます。お願いがあるんです」
言いつつ、エールは顔を持ち上げ、彼の
エールは再び視線を下に戻すと、事の
「私達が、異世界から転生させた勇者を、カインさんや他の魔王、あるいは邪神達に差し向けているのは、ご存知のことと思います」
異世界、転生、勇者。その単語群は、魔王カインにとってあまり
カインはわずかに生じたいら立ちを
「その異世界勇者共がどうしたのだ」
エールはしばらく押し
「__私達、裏切られちゃいました☆」
「……は?」
カインの思考が一瞬止まる。
裏切られた?何に?聞かずとも分かる。異世界勇者に。
「何ゆえそんなことになったのだ」
「……えっとですね、神界が、異世界勇者さん達に、制圧されまして…….」
「そんなことは分かっている。なぜ神々ともあろうものが配下の種族に制圧されたのだと聞いているんだ」
「その……チートパワーの数々を前に、
カインは絶句した。
「わ、私達、力を与え過ぎちゃいました!てへへ!……なんつってー」
何
「で?助けを求める為に、
「はい……」
「この
「ひどい!そんなこと言わないで!」
彼女はえらく傷心したらしく、ふにゃふにゃの顔でほろほろと涙を流していたが、なおも
「今のパステリトゥムには管理できる神がいないんです!このままでは勇者さん達の好き放題にされちゃうんです!もう頼れるヒトはカインさんを置いて他にいないんです!お願いします!」
「断る」
「そこを何とか!!」
エールはカインの片手を両手で包み、自分がか弱い存在であると言わんばかりの
カインは
「分かった。協力する。だからその顔を止めろ」
すると、エールの顔がぱっと明るくなり、先程までのふざけた
「やったぁ!ありがとうございます!これでまだ何とかなる!」
何て調子の良い奴……。魔王らしく絶望を与えた方がいっそ
「喜ぶにはまだ何もかもが早い。まず条件がある。勇者を打ち倒した
「はい喜んで!」
「おい」
驚く程タイムラグの少ない返答。お前それで良いのか……?
「と言うか、俺は異世界勇者に
それを聞くと、先程まで調子付いていた彼女はふと動きを止め、再びカインの
「私、知ってますよ?カインさんも異世界転生者なのでしょう?」
カインの
「……なぜそう思う」
「だって、あなたは魔王にしては平和的過ぎるんですもの。私はパステリトゥムの管理を任されてから日が浅い方ですけど、それでもやる事がなくて本当に
エールは
「
「だが異世界転生は神によって
「……神々を経由せず、自然に異世界転生をしてしまう可能性は、天文学的な確率とは言え確かに存在します」
どうですか?当たってますか?とエールが
……中々どうして、鋭い。|ほとんどが直感任せの
カインは心の中で
「そうかい、なら変に
カインは足を軽く投げ出し、
「やっぱり!前々からそう思ってたんです!えへへ、私の
「言っておくが、俺は誰かから力を
「はいっ!」
「……本当に聞いてるのか?」
エールは一時的な心の安らぎを得たらしく、その顔はとてもにこやかであった。
カインはそれと対象的に、この世で最も苦い虫を念入りに
「一体どこからそんな自信が
エールは答えた。
「
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