夜露

空気が欲しくなって たまらず

窓を開け 座り直すと

ノートが湿度を帯びて

ほんの少し 筆の走りが変わる

そんな夜に昇る 火葬の煙


旅立つ者を濡らすのは

涙だけではない

蓮の葉の雫 楓を包む霧

車を打つ横雨 街を隠す朝もや

夜露でできた全てが棺に降りかかり

振り払うように 炉は燃える


ゆく人を濡らす湿度と

同じ空気を吸ったノートに

どんな言葉を書きつけようと

それはやはり 人の言葉で


火の粉を散らせ 我が言の葉よ

星まで昇る 煙となって

高く 高く 燃えろ 遠くまで

夜露を超えて 闇を照らせ

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