歌声

国境の雨雲レーダーに

映らない少女の歌声

天を摩する山の向こうから

来るはずの慈雨を

そのか細い首筋に託す

村人たち ただ 祈るだけ


力なく 年寄った大人たちが

若い力を手懐けようとするとき

儀式を整え 神を発明し 伝説を捏造する

若者はそれを知らない

大人もよく分かっていない


歌声は山脈の向こうの

集音マイクに分析され

思想性なしとの情報局の許可により

無料で公開され 一億再生された


偵察衛星が無視する 少女の涙に

たった一人気付いた君に

教えられること それは

国境は越えるものだということ

雨雲のように 歌声のように

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