第5話 秘密
会社から帰る時間に、スーパーに寄って買い物していた。
「今日のおかずと、こっちは…亮のおやつにするかな…」
いつも亮を預かっているお隣さんにも、なにか手土産のひとつでも…と思い、簡単にお菓子詰め合わせを選んでいた。
と、また違うママ友にバッタリ。
「あら。いまお帰りですか?」
「あ、どうもこんばんは。そうなんですおかずも買っていこうと思って。」
と、男の俺と奥さんとの会話が、スーパーの中で繰り広げられる。
「亮くんも、成長してきてますよね〜。」
「俺も負けるところも出てきてますよ最近は。成長早いですよね。」
「もう、いつも旦那さん一人なんですか?ずっと(亮くんと)二人暮らしで?」
「そうですねぇ。でもお隣の奥さんも一緒になって付き合ってもらえてるので。」
私生活の内容にも、たまに突っ込まれることもある。
「じゃあアタシも、再婚相手に申し込んでもいいかしらw。」
「ははっ、そうなったら有り難いですねえ。ウチは女性っ気全くないですからね。」
さり気なくひらりひらり躱(かわ)しながら、それじゃと別れる。
「でも実際、どうなんですか?再婚の話なんて?」
その手土産を持って、お隣さんに訪ねた時、夕御飯をごちそうになり、大人の会話になっていた。亮たち幼稚園組は子供部屋で騒いでいる。
「俺ですか?いやぁ、無理じゃないかなあ。」
「だって、まだ若いじゃないですか。私より年下でしょ?」
「うーん、だって、一緒になって、どう過ごしていいもんだか。」
「あら。いつも通りの普段のままでいいんじゃないかしら。」
「う…ん、俺はいいけど、相手の人がどう思うか、なんだよなあ。」
「まーぁ、今からそんなところまで考えてるなんて、らしいですわねえ。優しすぎるんですよ。」
「うーん、そうですねえ…。」
「じゃ、私なんかどうですか?」
「はは。またご冗談を。」
「ま、世間に言えないようなことがあるみたいだから、言わなくてもいいんですよ。でも、何かのタイミングで言いたいことがあると思うので、そこは全部聞きますよ。聞かせてくださいな。」
「…、うん、そうですね。まあ、話すよりは、回想シーンで皆さんには読まれるかもしれませんけど。」
「あら。私も聞かせてくれないのかしら。」
「著者さんは、もう構想は出来上がってるようですよ。けっこう、えげつない内容なので、キライな方もいると思うので、そこはタイトルをなんか変えていきますので。」
「なにかの告知みたいな書き方になっちゃったわね。」
亮も一緒に頭を下げ、また明日と手を振り、隣の家に帰ってきた。
「再婚、かあ…。でも俺、まだバツ付いてないんだよな。」
亮の頭に、ポンッと手を載せた。亮の目がちょっと俺に向き、両手が、俺の手を包んだ。
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