夢
夢を見た。
次の瞬間、私は自室のベッドで寝ていた、といっても、私はそれを視覚的に確認したわけではない。ただ意識的に、今自分は自室のベッドで寝ているのだと、そう確信したのだった。その証拠に、ベッドはどうしようもないほどに心地よく、今にも再び、意識が睡魔に飲み込まれてしまいそうだ。家のベッドは、こんなにも心地が良いものだっただろうか。
…。
再び意識が眠りへとつく寸前、どこからか、私の耳に子供達のはしゃぐ騒ぎ声が、微かに聞こえてきた。それは、ほんの一瞬のことだったが、その瞬間、私の心は揺れ始めた。
… 今、僕は本当に家のベッドで寝ていたのだろうか。僕はなにをしていたのだろう。そして今は、何日の何時何分なのだろう、一体僕は…。
しかし、そんな小さな疑念は、やはりこの、体に触れるベッドの快適さによって、瞬く間にかき消される。
これほどまでに心地がよく安心感のある場所は、家のベッド以外にあり得ない。そもそも僕は今寝ているのだから、自室以外で眠ることなど考えられない、きっと。
しかし、そんな僕の安直な考えを、もう一人の自分が制そうとする。
…いや待てよ。家のベッドは、いつもここまで素晴らしいものだっただろうか。僕は、毎日そこまで快適な朝を迎えていただろうか。だとすれば、毎朝母に起こされる必要などないのではないか。
そう私が思考を巡らせる間も、睡魔は着々と私の意識を蝕んでいた。しかしそれと同時に、聴覚に届く喧騒もまた、その大きさを増していた。
…いや、しかし、僕は今ベッドに寝ているのだから、学校が始まるまでもう少し寝ていたいんだ。ん?どうして、なぜ僕はベッドに寝ていることを確信している?その証拠は、根拠は、それはこのベッドの心地よさが…。いや、そもそもこれは物理的な心地の良さなのか、それともただの精神的な…。
喧騒は更にその音を増していく。
…いや、おかしい。これは絶対におかしい。この心地の良さは本物だ。だが、今僕が自室のベッドで寝ているわけがない。なぜなら僕は今日、いや、ついさっきまで、小学校の運動場で元気に走り回っていたじゃないか。それが、次の拍子に急に家のベッドで寝ていたなどということは絶対にあり得ない。そうだ、今日僕は、学校に…!
その瞬間、私の意識は、さながらどこかで見たタイムマシンのように、眠りにつくはずだった真っ暗な場所から現実へ、超高速で引き戻された。
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