ある暑い日
小学校六年生の夏、私たちは普段通りの日常を送っていた。しかし、七月に入って早数週間、そろそろ一学期が終わり夏休みが始まる、ということもあって、私たちは少々浮かれていた。
そんな雰囲気は、私たちだけではなく、学校全体を包み込んでいた。教員たちもきっと、その空気を察していたのだろう。授業は既に、堅苦しく緊張感のあるテストや行事に向けての練習ではなく、思いっきりはしゃぎ、楽しむものと化していた。
そんな授業の花形は、もちろん体育だ。
まだ、運動会が控えているわけでも、テストが残っているわけでもない体育の授業は、しばしばただ自由に体を動かすだけの時間となっていた。運動場でならサッカーや鬼ごっこを、体育館ならバスケットボールやドッジボールを、まるで休み時間の延長であるかのように、私たちは楽しんでいた。
その日も、いつも通り二時間目に体育の授業は始まった。集合したのは運動場。初夏にしてはとても暑い日で、よく陽が照っていたことを今も鮮明に覚えている。
…少し余談ではありますが、この時はまだ、体育の授業に水筒を持っていくような、今時ありそうな熱中症対策はそれほど為されていませんでした。それが始まったのは、私が中学生に上がってからの事です。
その日、私たちは鬼ごっこをすることになった。子供の体力というのは本当に凄まじいもので、いくら走って疲れても、直ぐに元気を取り戻し、また再び走り始めることができる。もちろん私たちもその例外に漏れず、結局授業時間である四十五分のほぼすべての間、鬼ごっこは終わらず、私たちはずっと走り続けていた。
時刻は十時二十分。二時間目の授業は十時二十五分までだったので、運動場中に散らばっていた私たちは、急いで中央前方にある朝礼台の前に集まった。それは、しつこく教えられていた五分前行動の成果であったかもしれない。
楽しかった時間ももう終わり。私たちは額に大量の汗を浮かべながら朝礼台に集合すると、綺麗に並び直り、一斉にその場に座り込んだ。
それからの五分間弱は、担任の話を聞く時間だ。
三時間目はあの準備をしておいてー
給食当番の人が変わっているよー
二十分休みはこのまま遊んでもいいけど、ちゃんと水分補給はしてねー
…皆さん覚えてますか、二十分休み。昼休みの他にもう一つあった、長い休み時間のことです。私たちの学校では、二時間目と三時間目の間に、その時間がありました。
担任の話はいつも同じような内容であった気がするが、私たちはいつも、それをまじめに聞くことを習慣づけられていた。
…キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴って、二時間目が終わる。担任はまだ話していたが、その音を聞くと、急いで要件だけを掻い摘んで話し始めた。
そして、最後の挨拶。授業の終わりはいつも日直の、起立、という号令と共に立ち上がり、礼、の合図で頭を下げる、それが私たちのクラスのルールだった。
起立…!
私はいつも通り、立ち上がった。立つスピードをクラスで競ったりしていたから、できるだけ早く。
…。
その瞬間、私の記憶は、そして体の感覚は、どこかに飛んだのである。
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