第2話:両親

 彼女に告白をする前に、まずは両親に話をした。


「まだはっきりとは分からないんだが、もしかしたら私はレズビアンかもしれない」


 私は一人娘で、親から溺愛されていた。私も両親が好きだった。だからこそ早めに話しておきたかった。この先、彼氏の話をされて複雑な気持ちになりたくなかったから。あっさり受け入れてくれると信じたかったから。


「女の子が好きってこと?」


「うむ。好きな女の子が出来た」


「そうか。……正直驚いてはいるが、別に男にしなさいとは言わないから安心しなさい。千智を心から大切にしてくれる人なら、男だろうが女だろうが口出しはしない」


「ちーちゃんのこと傷つけるような人なら男女問わず大反対だけどね」


 私が信じた通り、両親は私をあっさり受け入れてくれた。


「ありがとう。そう言ってくれると信じていたよ」


「信じてくれてありがとう。もしお付き合いを始めたら、いつか私達に紹介してね」


「う、うむ……」


 雅とは幼馴染で、親同士も仲が良い。仮に付き合えたとしても、今更恋人として紹介するのはなんだか気恥ずかしい。

 その後好きな女の子のことを根掘り葉掘り聞かれ、結局相手が雅だということはあっさりバレてしまった。これでフラれたらかなり気まずいが、自分の恋心に嘘をつきたくはない。


「……みゃーちゃん。いや、雅」


 自室で一人、好きだよと、虚無に向かって何度も呟く。好きだと言うだけではきっと友情の意味だと勘違いされて『私も大好きよ〜』と返されてしまうだろう。恋人になりたいとはっきりと言わないと、彼女にはきっと伝わらない。


「君と恋人になりたい」


 そう告げたら彼女は、どんな顔をするのだろうか。そんな目で見ていたのかとショックを受けてしまうだろうか。多分、ショックは受けるだろう。けど……気持ちを押し込めて、いつか彼女に恋人が出来た時に爆発してしまうよりはきっと、今吐き出した方が良いだろう。押し込めていたら、彼女が恋をした時に耐えられる気がしない。相手が女性だったら尚更だ。雅が同性を好きになるとは限らないけど、ならないとも限らない。LGBT講習でも講師の人は言っていた。『セクシャリティは目に見えないものだから、目の前にいる人が異性愛者かどうかなんて本人が言わなきゃ分からない』と。雅が異性しか好きになれないならそれは仕方ないが、そうでないことを願いながら眠りについた。

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