第9話 光の道

 黒い道は光に溢れ包まれた道へと形を変えて、四人の目の前に広がっていた。

 道を直進もしくは左から右方向に進むと言う、暗示を受けたこの光の世界にあると考える法則で、みんなは行動する事に決めていた。

 と言うのもあるが、一方でなかなかメンタルが戻らないエイジとエラの意思は、はっきりしないままの状態で、彼らを引っ張る形で、ショウとセンリは二人を気にかけながら行動していく覚悟であった。

 ユラとショウが作成していた地図は、これからの道には使えないとショウは言った。これからは暗示による法則に沿って進み、地図を作成していくが、今までは法則も何もなく自由に動いて作成していたから、使えないと言う事だった。

 センリはそこまで法則に厳しい地図とこれからの道のりに大きな期待が湧いてきた。


 そしてここから書かれる事は単調な事かも知れない。なぜなら地図の言葉起こしになるからであり、ショウは壁に這うように、左から右方向に進むからである。

 壁に這うは言い過ぎたが、壁に左手を当て、前進する事に徹底するのは、違いなかった。光に満ちて、視界が楽に取れるため、移動速度は速い事が予想された。

「E」の刻印を上に壁を右に沿って、四人は進んだ。

 最初の交差点に着いた時、左側の交差を覗くと行き止まりになっていた。

 正面を見るとここも崖が崩れ進めなかった。

 そのため交差点を右方向に曲がり進む事にした。

 一キロメートル進み、次の交差点で壁に左手を当て、左側に曲がった。

 更に一キロメートル進んだところで、正面が壁で行き止まりになると同時に、エイジ、ユラの表情に疲れを感じた。

 少し休憩をし、左壁沿いに左へと曲がった。

 一キロメートル進むと交差点に行き着いたが、前方、右、左方向全て進行出来なくなっていたので、元の来た道を戻り、先程、休憩した地点まで戻って来た。

 ここで一度休憩して、リュックサックの中の水を飲み、非常食を少し食べた。

 エイジはまだ大丈夫だったが、ユラは倦怠感からふらつき始めた。

「大丈夫か」ショウが声を掛けた。

「なんとか、未だ大丈夫。どうしたのかな?」とユラは力なく言った。

 再び左側の壁を頼りに進み出した。

 一キロメートル進むと、前方、左側が行き止まりになっていたため、右方向に進むことにした。

 三キロメートル左に行く道がなかったので、みんなひたすら前進した。

 そして行き着いた交差点は前方、左方向が行き止まりになっていたため、右に進む事にした。しかし、この光の迷路は広い。

「明るくても早く出てしまおう」とショウが言った。

 左側の壁に沿って右に一キロメートル進んだ。

 正面が壁で塞がれていたので、左手に沿って左折し進行した。

 交差点に来た時、ユラがゆっくりと崩れ落ちた。

「私これ以上立てないし、進めない。疲労感が。精神的に追い詰められている、ルウスの事で」彼女は力なく呟いた。

「こんな所にユラを置いて行くわけにはいかない。俺が背負って運ぼう」と大男のショウが言った。するとお腹の風を後ろに向かって送りだした。少しでも移動を楽にしようとした。

 行き道が前、左と塞がれていたので、四人は右に曲がった。

 一キロメートル進むと交差点に来たが、正面は壁になっていたため、左手に沿って左に曲がり、また一キロメートル進んだ。

 この交差点は前方、右側が崖崩れしていたため、左へと曲がった。

 次の三キロメートルは直線だったため、一気に進んだが、エイジがぼーと意識がぼやけて来た。

 交差点に来た時、前方と左側が崖崩れをしていたため、右に曲がり進んだ。

 次の二キロメートルは直線だったため、道なりに進み、交差点に辿り着いた。前方には進めないT字路だったため、法則通り左手に曲がって先を急いだ。

 一キロメートル進むと、二百メートル幅、二百メートル高の通路は、行き止まりにぶつかってしまった。

 しかし、前方の壁の中央、三メートル高の位置に「E」の刻印があるのが確認出来た。


 この印に対して四人の反応はそれぞれ違っていた。

 すぐ前見た「E」の印を思い出したショウは、もうやる事で頭は巡っていた。

 センリは前見た「E」を思い出し、更なる光が溢れるだろうと、顔を覆った。

 ユラは「E」を見た瞬間から全身の力が抜けて、ショウの背中から落ちそうになり、彼からすぐ支えられ、意識を失っていた。

 エイジはそれを見た後、自分が段々と無力な存在になっていると思い込み、うつむき、頼られる人間とは縁遠くなった姿に変わっていた。

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