第3話 鑑定の本質

3年後…


「おはようございまーす、うぅさむ」


 いつもの様にアベリア商会に入ると雰囲気が違っていた、カーテンを閉め切り薄暗い様子の店内。不思議に思いながらも光石に魔力を灯しいつものと同じく開店の準備を初めようと社員室に入る…






「「「誕生日おめでとう!」」」


 突然パッと明かりが付いてすっとんきょうな顔をした俺の前にアベリア商会の皆が飛び出してきた。


「ふっふっ、驚いたっすか?さぷらーいずっす!」

「レクト君お誕生日おめでとう」

「おめでとう…」

「おめでと~」

「もう8歳ですか、子供の成長は早いですね」

「店長おっさんみたいな事言うっすね」

「シュウ、貴方は思った事を何でも口に出す癖をやめなさい。店長だって気にしてるのに傷付くわ」

「トウこそ傷口をえぐらないの!ほら亀の甲より年の功って悪い事だけじゃないですよ!」

「慰め、時に非情なり~」

「皆さん!黙って何も言わないで!店長頭から地面にめり込んでるから!」

「ぅ…最近身体が重くて年だなって気にしてるのに…言動まで…」

「そ、そうだ!皆さんありがとうございます、とっても嬉しいです!」

「そうっす!こんなのは放っておいて誕生日会を始まるっす!入り口に看板立てといたんで1時間は稼げるっすよ!」「こんなの…」

「そうね。そんなのは置いておいてプレゼントを渡しましょ」「そ、そんなの…」

「あんなのでも"一応"店長なんです~」「あん…なの…」


 部家の隅で膝を抱える店長を他所に始まった誕生日会、いつもの事とは言え今日はより一段と悲哀を纏った店長にかける言葉がなかったのであった…



「ただいまー」「帰ったぞー」

「おかえりなさい2人ともご飯できてるわよ」


 父と2人で家に帰ってそれに母が応える。アベリア商会で働き始めた頃の名残で父が仕事終わりに迎えに来て一緒に帰る事が日課になっていたが今日は特に特別だった。


「ママ!これ見てよ!」

「まあ、素敵なネックレスね」

「でしょ~!店長に貰ったんだ!これはね、幸運のネックレスって言って持ってると良いことが起こりやすくなるんだって!」


 慣れた要領で〖鑑定〗を発動させる。〖鑑定〗を使い続けて行く中で解った事がある。〖鑑定〗の本質は善く視る事、その上でプラスされた情報と知識が組み合わさり結果として鑑定結果が出てくるのだ。


 例えばこのネックレス〖鑑定〗がレベル2だった頃だとこう見えていただろう。


『幸運のネックレス』

・〖幸運〗

 運気が上がる。


 しかし、知識を付け、〖鑑定〗レベルの上がった今なら…


『幸運のネックレス』

・〖幸運〗

 銀とエメラルドで作られたネックレス。周囲の魔素を銀が吸収、エメラルドが変換する事によって〖幸運〗の効果が付き装着者の運気を上げる。


 と、なる。説明が増えただけならレベルが上がったからじゃないか?と思っていたが〖鑑定〗レベル3になったばかりの鑑定の指輪より現在で〖鑑定〗を使った方が説明が増えていた。


 俺が思うにこの頃店に来る冒険者の自慢話や宝石商の取引に付いて行ったりして新しい知識を知った事が原因だと思っている。きっと店長は分かっていて色々やらせてくれているのだと俺は思う。



「まあ、ネックレスのお陰で今日はレクトの好きな物ね」

「もしかしてハンバーグ!?」

「残念、今日は…」

「~♪おっ!今日の飯はステーキかあ」

「フォォォー!!!」

「あぁ、レクト!食べる前に綺麗にしなさい!」

「『クリーン』はい!これでいいでしょ!食べよ!食べよ!」

「仕方のない子ね、ほんと」


 唱えると汚れがなくなり綺麗になる生活魔法『クリーン』で済ませる俺に苦笑いをして席に着く母、よだれを我慢して(できてない)ステーキに釘付けの僕と着替えを済ませた父が席に着く。


「「「いただきます」」」



 なんて事のない日常が過ぎて行く。ハムスターの様に頬パンパンに肉とパンを詰め込み喉を詰まらせ、母に背中を擦られ、慣れた様に水を差し出す父、当たり前な日々に気付かない幸せがずっと続けばいいのにと口には出さないが確かに感じていた。


「誕生日おめでとう」

「おめでとう」

「へへ…」

「ふふっ、今日はデザートもあるのよ」

「肉食え肉、俺みたいに強くて立派な漢になる為にしっかり食うんだ!」

「ママ、父さん。いつもありがとう」

「俺もパパって言って欲しい!」

「大きくなったわね」

「俺もパパって」

「でしょ~」

「パパって…」


 デザートを食べ終える頃には静かになった父(パパ)はママ(母)に慰められていた。後日シュウ達に嫌いではないけど言いたくない事ってあるよねってこの話をしたら皆一様に「わかる」と言ってくれた。店長の事が大好きな皆だけど当たりが強かったり、冷めてたり、本人が居ない時の方が本音を言えるなんておちゃらけて言うトウにみな色付くのであった。

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〖鑑定〗マニアのコレクター道《俺に集めれないモノはねぇ!》 @skn-aaa

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