第6話

街には思い出も感情も売っている。

僕はある年代のある月日の思い出を買った。

僕はその人自身の視点になって、

ご飯を食べたり、

お風呂に入ったり、

眠ったり、

音楽を聞いたり、

小説を読んだり、

日記をつけたり、

写真を撮ったり、

旅行に行ったり、した。

思い出は書き換えられないが、その人が何を思っていたのかを推測することが好きだった。

少し食べ残した食事も、

体のどこから洗うのかも、

寝る前に何をするのかも、

どんな音楽が好きなのかも、

どんな本が好きなのかも、

どんな字で書くのかも、

どんな風景が好きなのかも、

どんな場所に行きたかったのかも、

全てその人のものだ。

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