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ゴッて鳴るぐらいオデコが当たって、ゴメンゴメンと魔王様はまたジタバタしてる。オレはそんなに痛くない。うふふってなる。
いつかお話しした、思い出のためにお出かけしたりするのは違うんだと。
これからも一緒にいるから、沢山同じ事をして同じ物を見て同じお話をしようって言ったんだ。
オレ、ダメな事ばっかりしちゃってた。一人でブツブツ考えてもロクな事にならないな。次は何だっけ、音楽会の後にって……そうだ。
オデコを撫でまくってはプチッとキスを繰り返してくれてた魔王様を見上げる。
「魔王様、ハロウィンは?」
「はい、ああ今週末だったか? サキュバスが衣装を作りに会いに来ると言っていたよ」
「……大変だ、お菓子あげなきゃ、もらわなきゃ! あれ? 今週末? じゃ今日はいつ? わあ?! 明日は学校じゃないですか?!」
「そうだが、王からも薬草は数日ゆっくり休ませろと言われているし……」
「ダメです、もったいない、行きます! 寝ましょう!」
「……フハハッ! 死刑台に乗った次の日に学校へ行くか、それも新しいな! しかも菓子で酷い目を見たのにまだ欲しいと言うか? フフッ、どうなっているんだ薬草は?」
「どうもなってません、ただの薬草です! はい寝ましょう!」
「眠るにしては元気過ぎだ、まったくもう!」
パタパタと一生懸命に催促してお布団まで飛んでもらう。引っ張り込まれるから頭を突っ込んで、グリグリと寝心地の良い場所を探す。
首の下に腕が入ってくるから枕で隙間を作る。重くないようにしてあげてモゾモゾ、お花のワンピースはお部屋に送って、あれ? ベビードール着てない、レイナさんは着ないタイプだったのかな、モゾッ、ここだ、よし、ここ落ち着く。
「……そういえば俺の服」
「はい?」
「薬草が吹き飛ばした俺の服が、王の城からそこの俺の部屋に置いてあった。机の上にキチンと畳まれていたよ」
「すごい」
「うん、凄い……いや薬草がやったんじゃないか。薬草とレイナが入れ替わっていると慌てていた時に見付けて、そんな
「なんか、えっと、ごめんなさい」
「いいよ、服ぐらいならどこからでも取れるから。だが、次は出来れば枕元ぐらいにしてくれると助かる」
「はい……えへへ」
……体を触られてすっごい気持ちよくてブッ飛ばしちゃった魔王様のお洋服の事だ。そんな風になってたのか。なんでだ。
気を付けよう、どう気を付ければ良いのか分からないけど気を付けよう、気を……今はしないのかな?
なんか色々あったからしない、色々あったからこそする? どうすればいいんだろう? 寝ろ寝ろ言われてるし、確かに眠い。
聞いてみた方がいいのかな? エッチな事しますか? みたいな? それはなんか変? 乗って揉まれたりしてないから、でも握って乗った方がいいのか……。
「フフ、おやすみ薬草」
「……なんで笑うんですか」
「明日も明後日もある、大丈夫だよ」
「……おやすみなさい……」
頭の中を読まれてるみたいだ。ソワソワしちゃってたのかな? なんだこれ恥ずかしい。
そういえば大きくなってから色々と恥ずかしい。これも成長だとしたら、なんかこれは要らない成長だと思う。オレ面倒な人になっちゃった……あ、昨日の今頃は牢獄の中だったんだよ、すごい……暖かいな……。
……ちゃんといつもの時間に起こしてくれた魔王様にプニーッと甘えてみる。
ちゃんとモチモチしてくれるし、朝だし、小鳥も飛んでるし、魔王城だし、僧侶もタイチもいるし、ミーナさん達も朝ご飯を用意してくれてるし、オレはちゃんと生きてる。
よし、生きてる。
「薬草、本当に行くのかい?」
「はい!」
「まあまあ騒がれると思うよ?」
「大丈夫です、困ったらイアン先生もいるしジャンもいます」
準備をしてるオレにつきまとう魔王様は、本当に心配してくれてるっぽい……うん、宿題の量が半端じゃない、リュックに入らないや。
タイチが勉強机まで来て、ニコニコしながら入らなかった宿題をパラパラしてる。
「そんなに行きたくなる学校ってイイね」
「じゃあタイチも一緒に行こう!」
「は?!」
「ダメですか、魔王様? 僧侶?」
こういう時は薬草姿で、根っこを出さないでポテポテ歩くと上手く事が進むような気がする。ついでにポテッと近付いて
魔王様がグッて言った。よし、僧侶にも。
テーブルまでは根っこでニョン、僧侶の近くまではポテポテ歩いて、目の前でピトッと座る。僧侶もムフッて言った。
バタバタとオレを追いかけて来たタイチは、むせながら手を合わせてる。なんだそれ、ごめんなさいの合図かな?
「いやゴメン薬草、言ってみただけだから! ゴメンナサイ!」
「まあ別に……良いのではないか?」
「タイチを見張る為とか何とか、適当に言えるじゃろ。魔王様付きなら文句もあるまい」
「やった! タイチ、魔王様と僧侶が良いって言ってるんだよ? みんなにもお話しして欲しい、天の声の世界の事!」
「えええ、いや、ボクあれよ? 見た目はオッサン、中身は十五歳よ? そんな、みんなって……何を話すの?」
「何でもいいよ、聞かれた事に答えるだけでも絶対みんな喜ぶから!」
「うーん、勉強じゃなく、向こうの話だけなら……答えるぐらいなら出来るかな」
「やったー!」
「タイチ、嫌なら嫌と言っても構わないよ?」
「いえ、嫌じゃないんですよ全然。ただ、ボクあんまり人前で話したりとか上手じゃないし、緊張するし、なんかカッコよく出来ないし」
「わーい!」
「そうだったのかい? 昨日は良くやってくれていたよ。分かりやすかったし、とても丁寧に答えてくれて面白かった」
「えええ、マジですか? 魔王様に言われると嬉しいな、てかソンナの何年振りだろ? 照れますね」
魔王様に素直に褒められて、ほっぺたをポリポリしちゃうタイチは良い人だと思う。こっちのお願いを聞いてばっかりだ。
そうだよ、十五歳で閉じ込めちゃったんだ。大人と子供の真ん中ぐらいなんだ。
だったら余計に思う。ちゃんと色々と整えてあげたい。やりたい事があるならやってもらいたいし、お手伝いしたい。
よし、それまではタイチを引っ張り回そう。この世界を知ってもらうため、という事で良いんだよ。
みんなで朝ご飯を食べて、ちゃんと扉から行ってきます。
今日は魔王様の黒いフワフワで登校だ。
タイチもいるなんて本当にすごい日だ、絶対楽しい一日になる。
「タイチ、得意な物は何かある? 食べ物のお話は詳しいとか、生き物は好きだとか?」
「うーん、何かな? うーん、アニメとかマンガは普通に見てたけど、詳しいかな? あ、電車はちょっと覚えてるかも、電車どう?」
「でんしゃ」
「よし、電車の話してあげるよ。まず……やっぱ電気の話からかな?」
「でんき」
「うわー! 無理だ、電気って何だよ?! 昨日から一晩中考えても上手く言えない、ナニで出来てんだ電気!」
「フフッ」
「うふふ」
「はあ……ホント、ちゃんと勉強しときゃ良かったな。ココでヒーローになれたのにさ。なんかマンガとかだと『これが電気だ! ビリビリ!』って出せるんだけどなー」
アニメもマンガも気になる。言葉は知ってても良く分からない物だ、どこかに絵本みたいな感じだと書いてあった。でんきに自信が無いならコッチについてお話ししてもらおうかな。
残念そうに頭を抱えるタイチだけど、魔王様と笑ってるという事は昨日の夜にもこんなお話をしてたのかな? いいな、なんで居眠りなんかしちゃったんだろう……あ、でもそれって、もしかして。
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