第29話 食

 【とあるレストランにて】


 君はそれを食べた。


 いただきます、そうして、ペロリといなくなる。


 ガツガツム、シャムシャ、ワシャワシャ、ごっくん、……ゲフッ。


 まるで絶食から解き放たれたかのように、俺はそれを貪った。


 わたくしというものはそれをどう咀嚼するのかにばかり興味が注がれるのです。


 ワタシ言いましたヨね、豚肉入れるナって。


 僕はそれを体内に入れる意味をよくよく考えもせずに口に含んでしまう癖がある。


 自我というものが、耳元でささやきやがる、それを噛み潰してしまえと。


 ものを食すという行為に特別なこだわりはございませんが、ただ拝借したいという欲求が沸々と湧き上がってくるわけであります。


 この瞬間のためだけに生きている気がする。


 食うも一興、食わぬも一興、そぉい。


 わたしみんな食べちゃう、わたしおデブさんになっても気にしない。


 とりあえず店長を呼ぼうか。


 きれいに平らげることが無能な私に唯一できる精一杯の感謝の仕方です。


 今日もどこかで起こる理不尽の傍らで私はそれを口にしている。


 食べるの大好き。


 あ、それ俺の分だぞ、畜生め。


 まずは形を楽しみ、それから香りを堪能して、やっと味というものにたどり着く。


 味見をしてから、またつまむ、今度は塩をかけて、隠れるようにしてまたいただいた。


 食う、寝る、遊ぶ、そしてまた。


 傲慢よりは憤怒、色欲よりも暴食、あとは割とどうでもいい。


 それを物欲しそうにじっと見つめる憐れな人間を眺めながらでないと私は食欲が満たされないのだよ。


 食っても、食っても、それでも足りない。


 え、またそれ? いい加減にもう飽き飽きしてきたわ。


 まだ、食べてる最中でしょうが。


 食べてみなよ、そして、羽ばたいていけばいいじゃない。




 ――ストーリー性は?

 それぞれあるつもりでした。

 絵を作る作らないかは自由です……

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