第26話 社畜

 疑うことなく奴隷のように従事した。

 手枷をされていないと落ち着かない体になった。

 長いこと働き、泥のように眠る。

 手を抜くと何もかも失ってしまいそうだった。


 青年は飛躍に満たず、

 常に潜在の愁いを抱く。

 昼は永く夜の短きに苦しむ、

 何ぞ職を取って遊ばざる。


「なにいってんだコイツ」

「うわ、またやっちまったか?」

「まだ、終わんねぇのかよ──え、もう朝!?」

「べ、べつにさぼってるわけじゃないんだから」


***


 生年不満百   生年せいねんは百に満たず

 常懐千載憂   常に千載せんざいの憂いをいだ

 昼短苦夜長   昼は短く夜の長きに苦しむ

 何不秉燭遊   何ぞしょくって遊ばざる


(無名氏『文選 巻二十九 古詩十九首 其十五』一部より)




 ――散文、韻文、口語文。

 こういうものもあるのですね。

 吾頬を赤くして、再び言う。

「べつにさぼってるわけじゃないからね」


 

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