第24話 化粧
メイクの基本はプライマー。
これが化粧のノリとモチを圧倒的によくする。
ペチペチ叩いてしっかり浸透。
これでよし。
あとはきっちり、ファンデーションから目元を揃えて、頬から口元へ。
出来上がった最後に鏡のまえでキリッと決め顔。
まあまあ素敵。
こんなに普段から小奇麗さを心掛けているにかかわらず思うことがある。
同僚の小梅さんのことだ。
彼女は毎日ほぼノーメイク、すっぴん美人と呼ばれているかと思いきや、決してそんなことはない。
確かに清潔感のある肌だったが、よくよく見ると、あちこちガタガタ。
全体的にのっぺりしてるし、目の下にあるクマが薄幸をこれ以上ないほど演出するように見える。
うぶ毛の手入れすらしてないなんて正直ありえない。
それでもわたしよりはるかにちやほやされる。
その優遇ぐあいは人を選ばない。
男子はもちろん、整髪料のきついおじさん上司や眼鏡からビームを出しそうなおばさん事務員に至るまで、彼女と話すとみんなが笑顔だ。
みんながみんな、「ねえ、こーさん。なあ、こーさん」と親しみをこめてそう呼ぶ。
なぜだ、わたしのこれまでの人生は何かがおかしかったのか?
第一、いまどき、小梅なんて……ありえないじゃない?
と、思ったところで状況は変わらない。
わたしは小梅さんの懐に入ってその真相を探ろうとした。
立ち上げの際。
「あ、こーさん、これからよろしくおねがいします」
「あーちみか、よろしくたのむよ、うん。まずはお茶でも入れようか」
そう言うと社長の仕草を維持したまま、わたしの分のお茶まで用意してくれた。
なるほど、まずは内輪ネタとさりげない優しさでがっちり掌握か……それにしても似ている。
ふたりで外回りしていたお昼。
「あ、こーさん、ネギがついてる」
「あーこれ? かわいいでしょ、最近のこだわりのひとつなんだ。うらやましい?」
そう言うと同僚のひとりだった
なるほど、なりきりとシニカルのユーモア和え、そして煽り返しのオードブルへ……それにしても迫真だ。
めずらしく二人で残業。
「あ、こーさん、もしかしていまのオナラ?」
「やっときたわー。あ、またきそう」
そう言うと、小梅さんは今度はスカした。
なるほど、そこには気を使うべきなのか……そしていつもの平常心。
わたしは以前よりもはるかに小梅さんのことを知った。
あいかわらず周りにちやほやされることはない。
他になにか変わったことについて、ふと考えてみる。
せいぜい化粧にかける時間が少なくなったことくらいだろうか。
それでも以前よりはるかに異性とよくでかけるようになった。
――すっぴん派? バッチリ派?
犬と猫ならば、犬がいいです。
猫は猫で好きですが、心をやられたある知人がネコの動画を延々と観てたので、そこからの抵抗感を多少引きずっています。
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