第20話 夢

 真っ白なくうかん。

 息をする。

 目印もないひろがり。

 見回す。

 右もなく、左もない。

 見上げる。


 やってきたのは確か昨日のことだった。

 ここはやたらに息苦しい。

 喧騒から逃げ出してきたはずが奇怪きっかいだった。

 肺から鼻へ、鼻から肺へ、くり返しているとそのうちむせる。

 はなをたれてもここでは気にする必要はなかった。

 それでも一応拭った。

 ふき取ったところで一人前になれるわけでもなかった。


 地面のあることは幸いだった。

 もう沈むことはない。

 寝そべりながら平らな面に頬をつける。

 熱を感じない。

 ふと思い出す。

 きみには血が通ってないのかい。

 そういえばそんなこともあった。

 悪い気がした。


 何もしないで過ごしていた。

 そうしていると滅入っていくのが手にとるようにわかる。

 何とかしようと笑ってみた。

 それから煽るようにして高揚させていった。

 気を狂わせるように馬鹿笑いしていると心が少し洗われた。

 叫喚と希求、それに怨嗟。

 高笑いにもよく似ていた。

 やがて頭上に霧散していく。

 仰いでいるとカタチを成したようにも見えた。


 宙に唾をはいてみる。

 どこに飛んでいったのかわからなかった。

 もう一度試みる。

 ひたいに落ちてきた。

 なんだきちんとあるじゃないか。

 安堵して眠りについた。


 これからここで過ごしていく。

 何となく不安だったが、それはこれまでと同じだった。

 まわりにはいない。

 いつもひとり。

 決まってあるのは叶いそうもない望みが一縷いちる

 それがあるだけましだった。




 ――夢ならなんでもあり?

 外からだとそうなのかもしれませんね。

 内にまわってみると……どうなんだろう。

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