第5話 純文学
ならば生とは如何なるものか、首を傾げる。
彼らは皆一様にして無口である。
そして、心優しき間抜けである。
不相応を抱くことが
水を注ぎ、湯を沸かし、蒸気が立つと眺め、流す。
何遍と繰り返し飽きてくると、今度は皿を並べる。
梅の実をそこに盛る。
塩を
その不可思議さの虜となり、掌を前にして一斉に指を折る。
繰り返す。
飽きるとまた他のうつろいに没頭する。
淵に立つものは引くことができるが沈むこともできる。
しんとするなか、辺りを見回した。
雨やまぬ午後は寂寥。
一通の手紙を取り、封を切った。
父危篤との字が映る。
はじめ心は穏やかだった。
するとようやく泣くことができた。
恥じることなく満たされる。
幸せであった。
列席者は少なかった。
挨拶はあんちょこで済ました。
火葬場で決断するとき躊躇した。
母が遠くにいたからである。
それ以外はいたって平凡だった。
皆はやはり優しく一様に無口であった。
――黒歴史ノート、多くね?
陶酔を“はかる”ことはきっと真っ当なのです。
不純文学ここに極まれり。
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