#3―②
◇◆◇
幸いにしてメイベル邸におけるクレハの部屋は、庭園などに散歩がしやすいようにか、一階にしつらえてある。本来の呉葉なら地上五階くらいまでなら生身でノーロープダイブを決めても問題なく着地できる自信があるが、この
(でも、多分だけど……この感覚が間違いじゃなければ、今の『私』も、前と同じように動ける気がするのよね)
かくして、メイドほか使用人たちの目を盗み、窓から無事に
(それにしても広い家……。テレビ番組とかでやってる、セレブの
庭木に水やりをする庭師の目を盗んでは、池や小川に橋までかけてある広い庭園を抜け、丸くトピアリーに
(高さは三メートルってとこかな。前の私なら、楽に
準備運動に軽く
さらに、周囲を
ドロワーズとシュミーズという、テオバルトが見たら
「!」
やった。──思ったとおりだ。
呉葉は軽々と宙を
そのまま柵を飛び越えると、
「身体、かっる!」
(どういう
肉体は
つまり、今の自分はかつての肉体の
(
しかし健康なのは感謝すべきだ。身長や体重は
(こういうのは習うより慣れろってね)
まだまだ日は高い。テオバルトが戻ってくるまでには帰宅しておかねばならないとはいえ、柵で囲まれている
(まずは市街地の見学に行こうかな! ひとつでも多くこの世界のことを知らないと)
こうして晴れて自由の身となった呉葉は、
◇◆◇
「うわっ、ほんとにファンタジーだ……」
というのが、市街地に着いた呉葉の
(すごい。ヨーロッパ風のRPGゲームの世界に入り込んだみたい……)
そして、おそらくは豊かで
(あ、市場がある。海外に出た時はスーパーマーケットを
思い立って足を向けた先。
色とりどりの天幕の張られた市場には、アジやヒラメなどお馴染みの形状の魚のみならず、
市場には、通りごとにそれぞれ専門があるらしく。スパイシーな
特に気になったのは
街は全体的に赤い
エーメという王国の中で、ここが首都なのか地方都市なのか、どちらにせよかなりの
(ええ!? し、島が浮かんでるー!? どう見ても雲とか飛行船じゃないよね!?)
本当に魔法の世界なのだ……と。
(……いちおうこういう場所もあるんだなあ。それはどこも
残飯やゴミが
この街の
「離してください!」
道の奥まったところから、悲鳴のような声が
「いきなり何するんですか! あたし、先を急いでいるんです……!」
「へへ、急いでるんですぅ、だってよ。聞いたか?」
「
「いいだろお嬢ちゃん。ちょっとくらい。なあ?」
(……え。そんなお約束な)
ぎくりとしつつ、呉葉がそちらに急ぐと、案の定の事態が展開していた。
見るからにごろつきらしい、スキンヘッドだったり
男たちは、かわるがわる少女の肩や背を
(まずい。早く警察に……っているの? ここ)
治安が
ダメ
(しょうがない!)
この時点で、早々に呉葉は覚悟を決めた。本物のクレハちゃんごめんなさい。返却までできるだけ
(とりあえず五人、
「あんたたち、何やってんの」
少女の服を
男たちは振り向き、呼びかけてきたのが
全員の
「やめなよ、その子
「へえ? お嬢ちゃんが代わりに相手してくれるって?」
手前にいたスキンヘッドの男が
(はー、我ながらしょうがないなあ)
呉葉はため息をつく。
否定できないことに、──期待と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます