#2―②
◇◆◇
さて。
が、呉葉入りのクレハは「健康そのものです!」という
「おおお……いやはや、いやはや、これはこれは……」
「テオバルト
(そんなに!?)
「
一度は死を
晴れて医師のお
呉葉はやっとテオバルトに、『クレハ』についてやらこの国のことやらなど、あれこれと尋ねることができるようになった。
(……で)
テオバルトの話によれば。
この世は、天空の国に住まう
そしてクレハやテオバルトの血筋、メイベル公爵家が属するエーメ王国というのは、神々に愛されたとりわけ豊かなヴィンランデシア西大陸の中でも、二番目に大きな国なのだそうだ。
現在は、先王が去年
──という
(つまり、ここって異世界なんだ!?)
ちなみに地味に気になっていた「身分のこうしゃくって、どんなエラさのこうしゃくですか」問題についても自動的に解決する。メイベル公爵家というのは、その崩御した先王の妃で現女王であるベルナデッタ陛下の生家で、彼女はテオバルトとクレハ兄妹の
(クレハちゃんって、本当に大変ないいところのご令嬢だったんだ……!)
さらに驚いたことに、この世界には、
これがゲームや映画なら「ガッチガチに中二病設定ですね、そういうの私も好きですよ」ですむところだが、残念ながら今ガチなのは現実の方である。
人間は、誰しも魔力を魂に宿して生まれる。というより、魂が素質そのままに
(いくらなんでもさすがにファンタジーがすぎる……)
「肉体は魂の
思わず気が遠くなりかける呉葉に、
魂が強ければ、肉体も比例して、自動的に健康健全マッチョになる。受け皿がマッチョなら、
だが、たまに不運な人もいるらしい。
魂は強いが魔力ゼロというケースなら、まだ「しょうがないな、魔法が使えなくて不便だけど……」ですむが、魂が弱くて魔力が強いと
魔力のボリュームは他の要素に合わせて自己調節ができない。そのため、強い魔力を
「お前は特に魔力が強くてね……受け皿になる魂や身体の方が、それに見合うだけの強さが
「属性?」
「一口に魔法といっても、もちろんなんでもできるわけではなくてな、それぞれ生まれ持った特質がある。僕の場合は水だ」
サイドテーブルに置いてあった水差しから、
「!」
呉葉の見ている前で、くるんと球形になって宙に
(すごい。手品じゃなくて、魔法なんだこれ……!)
感動する呉葉の前で、「やはりこれも覚えてはいないか」とテオバルトは
「お前の生まれ持った魔力は特別強く、魔法を使わずにただ息をするだけでも命を
「……そうなんですか? けど……その、魔力の量に見合うだけ頑張って身体を
「残念ながら難しいのだよ。誰しも魂が弱ければ、いくら
だから、普通の魂に驚くほど高すぎる魔力を宿していたクレハは、
(そうなの……!?)
魂からマッチョでなければ肉体をいくら鍛えても限界があると聞き、「筋トレに裏切られる世界観なのか!」とつい呉葉は
「あの! テオ……おに、お兄さま」
「どうした妹よ」
「さっきおっしゃってた、イザークというのは……」
この際だから気になっていることはできるだけ尋ねておきたい。慣れない「お兄さま」呼びに
「イザーク・ナジェドと言ってな、ハイダラ
「はあ……」
「あいつもお前をかなり心配していて、命を救うために
あとは、もう一つ。呉葉は、目覚めてから地味に気になっていたことを尋ねてみる。
「ええと、それからテオお兄さま。わたくしに毒を盛ったという相手は……?」
「大丈夫だ」
この質問にだけは、みなまで言わせないうちにテオバルトは首を振った。
「お前が心配することは何もない。身体を
「は、……はあ……」
(犯人は
それにしてはなんとなく引っかかるものがありつつ、突っ込んで
(あの女の子……というかこの身体の持ち主は、クレハ・メイベル。エーメ王国の名門、メイベル公爵家の長女。生まれつき魔力が強すぎて、ずっと家から出られもしなかった。病弱で、
今の自分はどうだろうか。
とりあえず、テオバルトの言うような「夜
(どういうこと?)
ヒントがあるとすれば、「その
(よくわかんないけど、肉体と魂が連動するとか言ってたよね? もし魂ごと私と
もぞもぞと心配な気持ちで落ち着けずにいると、そんな妹の様子を、テオバルトは別な具合に
「おっと。すまなかったな、いくら回復しているとはいっても、調子に乗りすぎてしまった。さすがに
「あ、……いえ……」
しどろもどろになる呉葉の
妹が一命を取り留めたことがよほど
(やるせない。私、本物のクレハちゃんじゃないんです……すみません……)
申し訳なさが、ちくりと胸を
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