友人のプロポーズ (ダーシャン目線)
目の前でこの世の終わりだと言いたげな顔をして
「
「終わりだ……
ぶつぶつと独り言を
「おい、アーグ! エリザベート
「彼がエリザベート嬢と婚約するというのはあり得ないけど、エリザベート嬢は彼を好きだよね」
「何か知ってるんですか?」
文官長は苦笑いを
「いや、何度も休みはいつか聞かれたり、好きな食べ物を教えろと言ってきたりしてたんだよ。私にだけど」
理由が分からず首を
「それってさ、休日に
そんな高等テクニックを使ってまで仲良くなりたいなんて、
「でも、アーデンベルグ君はエルマ嬢しか見てないからねぇ。ほら、最近筋肉つけ始めたのもエルマ嬢に気に入ってもらうためだって知ってた?」
小さい
「えっ? どういうことなんだ?」
「あ、知らない? ほら、エルマ嬢のお姉さんが
文官長の小さな子どもを見るような温かな視線がかえってアーグを
「
ムーレット導師が理解したとばかりにコクコクと
「さっき、アーグがセイランに言っていたように、アーグは俺を
派閥とは複雑なものだし、そう簡単に許されるとは思えない。
「ダーシャン殿下、何を言っているんです。アーデンベルグ殿が第一王子の筆頭の家に婿養子に入ったら、リグラグト侯爵は第一王子の派閥に入ったと思われる。リグラグト侯爵家は第二王太子の派閥の筆頭なのに第一王子に
ムーレット導師の説明に俺は深いため息をついた。
「元々、ひょろっと背が高く美形で天才のアーデンベルグ殿が好きだったみたいだけど、最近
文官長は
俺は放心状態のアーグの
「アーグ、しっかりしろ! このまま誤解されたままエルマ嬢を
「……」
俺はグッと息を
「エルマ嬢、最近騎士団で人気なんだよな〜副騎士団長のラグナスとも仲が
その
「エルマ嬢が
自分で言いながら、セイランはそんなこと言ってなかったな〜と思いながらも、アーグの今の
アーグは決意した顔で自分の机の引き出しから小さな箱を取り出して走り出した。
「ダーシャン殿下、いつのまにセイラン聖女とそんな話をしたのですか?」
「そんなことより、導師も証人の一人になってもらいたいから、アーグを追いかけるぞ」
たまにセイランと酒盛りしているなんて言ったら、こいつは絶対
だから、絶対にそのことは教えてたまるか。
俺はムーレット導師の肩をポンッと叩くとアーグを追いかけた。
きっとセイランのいる新緑の神殿に向かったはずだ。
だが、新緑の神殿では人が少ない。
「
走りながら、ムーレット導師に聞けば、ムーレット導師はニヤリと口角を上げた。
「私を誰だと思っているのです? 王立庭園の
そう言ったのと、ムーレット導師の姿が消えたのは一緒だった。
とにかく、ムーレット導師に
アーグを
王立庭園は貴族以外の
どうか、幼馴染が好きな人にプロポーズできますように。
どうか、当たって
俺は走りながらそんなことを思っていた。
◆◇◆
アーグにようやく追いついたのは、新緑の神殿の手前の長い
アーグの前にはヒメカ聖女とエリザベート嬢が立ちはだかっていて、前に進めないようだった。
「ちょっと話をしたいだけじゃない!」
「あまりお時間は取らせませんわ。この書類にサインだけしてくださればいいのですから」
女性二人から
「アーグ、何をしている。こっちに来い」
俺と彼女達を
「ダーシャンは今からどこに行くの? 私も着いて行っていい?」
「急ぎますので」
結構な速度で歩いているのについてくるヒメカ聖女に半ば感心しながらも、アーグを見れば暗く
その後ろを遅れてエリザベート嬢が走ってついて来ている。
「ダーシャン様」
アーグに名を呼ばれた。
「俺を信じて
俺の言葉に、アーグは何かを察知したのか、顔を上げた。
そして、何やら話しかけてくるヒメカ聖女を無視して歩き続けた。
王立庭園にたどり着く頃にはヒメカ聖女もエリザベート嬢も肩で息をしていた。
アーグですら
噴水の周りには人がたくさんいて、カップルや親子連れが目立つ。
その中に、赤い
俺は、そこに向かって歩く。
ムーレット導師も近くにいるのがようやく分かるぐらい近づいた瞬間。
「エルマ嬢!」
真横でアーグが
頭が痛くなるぐらいでかい声に驚くも、俺の後ろからエルマ嬢に向かって走るアーグの背中に『
「文官になった日、
エピソードは情けないが、実直なプロポーズに周りが
「えっ?」
エルマ嬢は真っ赤な顔で、聞き返す声も裏返ってしまっていた。
「フってくださっても構いません。でも、僕は
そう言いながら、アーグはポケットから箱を取り出して開けた。
中にはキラキラと
「受け取っていただけませんか?」
たくさんの人に見られながら、エルマ嬢は不安そうにセイランの顔を見た。
セイランは
そんなセイランを見て、エルマ嬢はおずおずと指輪の入った箱を受け取った。
その瞬間、周りでアーグのプロポーズを見ていた人達が
アーグも
幸せな光景に、俺の口元が
アーグ達の横でセイランが笑い、同時に
セイランの
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