他人の恋路?
エルマさんのメイク指導のせいか、私の
そんなことを言われても、私に人事の資格はないから
「昨日来た新米侍女ですが、無事意中の男性にクッキーを
いつも無表情に成功談を説明してくれるのはエルマさんだ。
「エルマさんはどうなんですか? 最近モテまくりらしいですね」
グッと息を
「エルマさ〜ん、
「職務中ですので」
「
エルマさんは
「どうしたらいいのでしょうか? セイラン様」
エルマさんは
エルマさんは最近、たくさんの男性から声をかけられるようになった。
でも、今まで経験したことのない展開に気持ちが追いついておらず、男性から声をかけられるたびに
「ある文官の方からも声をかけてもらったのですが、実はその人エリザベート様の
私は軽く頭を
「それは災難でしたね」
「その文官様はいい人なんですけど……」
エリザベートさんの想い人がエルマさんを好きだなんて、考えただけでもどんな仕打ちをされるか。
「困ってませんか?」
「……」
だいぶ困っていることが、全身から出る
その時、私達のいる部屋のドアが勢いよく開いた。
バーンッと
「ちょっと!
何を言いたいのか分からないが、言いがかりをつけようとしているのは
「何をおっしゃりたいのか、解るように説明していただいてもよろしいですか?」
「
婚約者?
私が自然に首を
何故私が
「セイラン様!」
エルマさんが
「人の婚約者に手を出すからこんな目にあうのよ! 分かった?」
何を分かれと言うのか? 殴られたことにより頭に血が上って考えがまとまらないが、やられたのだから、やり返していいだろうか?
私は殴られた
「えっ? 婚約者がいるのにエルマさんにちょっかい出したなら、その男がカス
「貴女の侍女の不始末なんだから、貴女が殴られて当然でしょ」
今までたくさんの
「で、エリザベートさんの婚約者とやらはどこの
ヒメカ聖女は
「文官長補佐のアーデンベルグに決まってるじゃない!」
文官という言葉に、
「エルマさん、そのアーデンベルグとかいうやつのところに案内してください」
婚約者がいるのに私の大事なエルマさんにちょっかい出すなんて、許せない。
エルマさんはオロオロしながらどうにか私にタオルを渡そうとするが、それを無視して
目的地は文官長の
「セイラン様、とりあえず冷やしてください」
タオルを渡そうとするエルマさんに、私は
「エルマさんは気にする必要ないですよ」
「そんなわけにはいきません」
ムーレット導師は、腫れた頰を見たら
まあ、派手な
「セイラン聖女?」
はしゃいだような
そう思った
「さあ、冷やしてください」
終わった。
私はエルマさんからタオルを受け取り、そのままエルマさんの
「セイラン聖女、冷やすとは、何の……」
ムーレット導師はエルマさんを上から見下ろすように見たかと思うと私の真横に立った。
「誰がこんなことを?」
ムーレット導師の声が真横で聞こえた。
「侍女副長、誰です。セイラン聖女の顔を殴ったのは?」
ムーレット導師の聞いたことのないぐらい低い地を
「あの、えっと……私のせいなんです!」
エルマさんは顔色を悪くしながら今までのことを事細かに説明した。
「アーデンベルグ補佐か」
いつのまにか、私が
「アーデンベルグ補佐がそんなことをする男だとは思えないのだが」
「彼がエリザベート
真剣な二人に気づかれないようにその場から
「セイランの護衛なのに側にいなくてすまない。とりあえずアーデンベルグに会う前に頰の腫れをどうにかした方がいい」
心配そうなダーシャン様に私は不満を言った。
「顔を腫らして行った方が
「いや、ムーレット導師を見ろ、問答無用でアーデンベルグを殺しそうな顔をしているだろ、
私は仕方なく手で頰を押さえて、前にムーレット導師に見せてもらった
ただ、エルマさんが目を大きく見開いていた。
「えっ、セイラン様?」
「侍女副長、今のは見なかったことにしてくれ」
ダーシャン様の言葉にエルマさんはグッと口を閉じてコクコク
とりあえず、ダーシャン様達も連れてアーデンベルグさんの元へ向かうことになった。
たどり着いた文官長の執務室には凄い量の書類が積まれていて顔色の悪い文官さんが五人机に向かって仕事をしていた。
「おや、ダーシャン様、手伝いに来てくださったんですか?」
書類を抱えた
「文官長、アーデンベルグはいるか?」
「ええ。今は
ブラック
この職場は過重労働している。
「えっと、何か手伝いましょうか?」
思わず口から言葉が出てしまった。
「本当ですか!」
文官長が泣きそうな顔をしながら私に書類を渡してきた。
見れば簡単な計算の書類のようだ。
「これを全部足して、ここに書いていただきたいのです」
全部足すだけで
小さい
十枚ほど渡された書類を高速暗算して書いていく。
「はい。できました」
私が書類を返すと、周りの空気が
「えっ、まさか」
文官長がそのうちの一枚を手に取り計算を始めた。
「あってる」
「あ、暗算得意なので」
文官長は目に
「て、手伝っていただいてもよろしいですか?」
アーデンベルグさんが起きてくるまで待たなくてはいけないのだし、私は快く計算書類を手伝った。
三十分後、アーデンベルグさんが起きてきた頃には、文官の
「アーデンベルグさんですか?」
「はい。僕がアーデンベルグ・リグラグトですが?」
何故私達が会いに来たのか分からないと言いたそうな顔のアーデンベルグさんは
他の文官さん達は
ちなみに、エルマさんは侍女の仕事として、王太子達のお茶のお代わりを持って来ることになっている。
「アーデンベルグさんは、婚約者がいるのにうちのエルマさんにちょっかいかけているって本当ですか?」
私が
「えっ、僕に婚約者がいるのですか?」
いや、こっちが聞いているのだ。
「エリザベートさんの婚約者だと聞きましたけど」
「はあ? あり得ない」
アーデンベルグさんはうんざりといった顔をした。
「エリザベート嬢と婚約だけは絶対にしません。エリザベート嬢のダビダラ家は第一王子の
後半、顔を赤らめだしたアーデンベルグさんが
「えっ、じゃあ、言いがかりで私はビンタされたってこと?」
殺意しか生まれない。
イライラが顔に出そうになったところでノックの音が
その瞬間、アーデンベルグさんの背筋がピンと
あ、これは、エルマさんが好きで仕方がない顔だ。
一目で分かる反応に、周りも
「エルマ嬢」
だが、エルマさんの顔は
「アーデンベルグ様、婚約者がいらっしゃるなんて存じ上げず、食事のお
エルマさんは言いたいことを言ったとばかりにいい笑顔で頭を下げて部屋を出て行ってしまう。
「アーデンベルグ?」
ダーシャン様が心配そうにアーデンベルグさんに声をかけると、アーデンベルグさんは意識を失ったように
「アーデンベルグ〜」
そんなアーデンベルグさんをダーシャン様が支えてあげていた。
私はとりあえず、エルマさんを追いかけた。
エルマさんは、新緑の神殿に帰って来ていて先程とは別人のように部屋の
「エルマさんもアーデンベルグさんが好きだったんじゃないの?」
私の言葉にエルマさんは声を出さずに首を振った。
でも、泣いているのが
「アーデンベルグさんは婚約者なんていないって」
エルマさんは更に首を横に振った。
「アーデンベルグさん、エルマさんのこと本気だと思うよ」
「噓です」
これが
私は
両片思いなら、私がとやかく言わなくてもきっと
「エルマさん、これだけは覚えててね。私はエルマさんの味方だよ」
エルマさんは私に
両片思いなのにな〜とは思ったが、本人が
早く誤解が解けてほしいと思いながら、私はエルマさんの頭を優しく
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