妖精って本当ですか?
ダーシャン様との
新緑の神殿の中に小さな森ができていたのだからそりゃ、騒ぎにもなる。
「昨日ヒメカ聖女様がこちらの神殿を
エリザベートさんが
私以外にダーシャン様も安心したに
森出現のせいもあり、エリザベートさんが私の出来が悪いから指導役をしたくないと
そのおかげで
「昨晩はどうも」
私の言葉にダーシャン様は勢いよく頭を下げた。
「昨夜は兄へのイラつきもあり、愚痴や弱音を
「気にしてませんよ」
ダーシャン様は何だか
「どうかしましたか?」
「
どうやら私が
「ええ。今直ぐにってわけではないですけど、その感じだとダーシャン様は
ダーシャン様はしばらく思い詰めた顔で
「逃げ出したいのはやまやまだ。これで
私はクスクスと笑い、ダーシャン様の
「それが分かっているなら、ダーシャン様はいい国王になれます」
私が叩いたぐらいじゃ痛くも何ともないだろうが、ダーシャン様は私の叩いた肩を軽く
「でも、私はいずれ逃げますよ。ぼちぼち
そう宣言した
そこにはムーレット導師がニコニコと笑いながら立っていた。
「逃げる?」
「セイラン聖女、貴女は今逃げるとおっしゃいましたか?」
ここで
「はい。私は聖女にはなりません」
「聖女になれば王侯貴族とも対等な地位を得て、衣食住の心配をすることもなく、むしろ何もせずとも
「魅力的なお話なのでしょうがいっさい興味がありません。できればひっそりと地味に暮らしたいです」
ムーレット導師はツカツカと私に近づくと、ダーシャン様を押しのけて私の手を両手でしっかりと
「やはり、貴女ほど力のある聖女は権力には
ムーレット導師はキラキラとした
「な、何のことかさっぱりなのですが?」
私が
「長い話になるので、お茶でも飲みながら話しましょう」
ムーレット導師は
空中をティーポットとカップが
「セイラン聖女は逃げるとおっしゃっていましたが、行き先はお決まりですかな?」
「いいえ。ひとまずこの場から逃げようかと」
「それはよかった。では、私の家に行きませんか?」
突然の申し出に私は戸惑った。
「ムーレット導師はどういった場所にお住まいで?」
私の問いに答えたのはダーシャン様だった。
「導師は城に部屋があるだろ? 家とは?」
ダーシャン様も何だか戸惑っているように見えた。
「私の家はこの新緑の神殿の
森の奥なのに街にも近いとは?
「そんな場所があるのですか?」
「はい。妖精の森ですから」
は? 妖精の森とは?
私はダーシャン様に視線を移したのだが、ダーシャン様も首を
「妖精の
そう言ってムーレット導師は私の手の上にキラキラと光るクリスタルを乗せた。
水色と
私がクリスタルに見入っていると、クリスタルは突然ドロリと
れてしまい、
「ムーレット導師?」
そこには見知った老人はおらず、モスグリーンの長い
「これで貴女は私の主人です」
「?」
言っている意味が分からず首を傾げてしまう。
「私は昔、初代聖女様とも
ニッコリ
「
「え〜っと、ムーレット導師はどこに?」
美人さんはクスクスと声を上げて笑った。
「ここにいるではありませんか」
「え? ムーレット導師なんですか?」
ムーレット導師のフリをしてやって来た妖精ではないのか?
「何百年も聖女を見てきましたが、貴女は初代聖女様と同じぐらい神聖力が強い上に私と契約したので、私の本来の姿が見えているのでしょう」
それは私だけ、ムーレット導師が美人に見えているってこと?
「じゃあ、ダーシャン様にはムーレット導師に見えているのですか?」
不思議そうな顔のダーシャン様にはやはり見えていないようだ。
「あの、ムーレット導師……できることならお
「この顔はお気に
うるうるとした美人の
「いや、美人は目に毒で。その顔面
「美人とは?」
不思議そうなダーシャン様の声にムーレット導師はまたクスクスと笑った。
「王族の方でも、もう私が妖精族だと知る者は一人も生きていませんからね」
そう言いながらムーレット導師がパチンっと指を鳴らした。
「うわ!」
ああ、視覚をいじる魔法か何かをかけたのだろう。
「これは、美人だ」
「あはは、気持ち悪いですよ。こんな見た目でも男ですから」
ダーシャン様が苦笑いをしている。
「ではそろそろ行きますか」
ムーレット導師はそう言いながら、ソファーに近づきクッションを一つ手に取ると、何やらモゴモゴと
何が起こるのか、ワクワクする。
クッションが私そっくりになり、ソファーにポスンと座る。
「しばらくの間騒ぎにならないようにセイラン聖女がいることにしたいですし、万が一人が入って来て怪しまれないよう目を閉じて
元クッションの目元をムーレット導師が覆うと目が閉じられた。
何だか自分の死体を見ているようで
マジマジと私が見つめると目がカッと開かれた。
飛び上がるほど驚いた。
ホラーすぎて本当に嫌だ。
「このヒト動くんですね」
「私がいる時は動かせますよ。ただ、声は出ないですが」
ムーレット導師はニコニコしていたが、見た感じ気分のいいものではない。
「とりあえず、よろしくお願いします」
私がその元クッションに軽く頭を下げると、激しく
「これでいい、では行きましょうか」
こうして私はお城から
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