第79話 伝説のパン
まさか蓮と梅澤のイチャイチャを目撃するとは。
気まずいというかなんというか。
でも、あらためてこいつらカップルなんだなと思った。
「っていうか里奈と蓮、なんで保健室なんかにいるのよ」
「なんでって、購買のパン」
蓮が言い終わる前に梅澤が蓮の口を塞いだ。
ん?今、購買のパンって言ったか?
「そ、そりゃあしんどくて保健室に来たに決まってるでしょ?そういう京子たちこそ、こんなとこで何してんのよ」
「私たちは伝説のパン」
それは言っちゃダメだ!
いくら蓮たちでも言えば、面白がって先にパンを買われる可能性がある!
っていうか俺、梅澤と同じことしてるな。
もしかして・・・
「んー!」
橘の苦しそうな声が聞こえる。
橘の口から手を離す。
「ぶはぁ!ちょっと一馬くん!」
「ごめんごめん!」
梅澤を見ると、
時計を何度も見ていた。
「もう授業も終わるし、私たちは教室に帰るわ。体調もよくなったし」
梅澤はそういうと、
蓮の腕を引っ張ってベッドから降りた。
そういえば、もう授業が終わる時間だ。
早く購買まで行かないと。
仮病でサボった意味がない。
「じゃあ俺たちも戻るか」
俺が橘の目を見ながら言う。
橘が察したのか、素直にベッドから降りる。
保健室から出て4人で教室へ向かう。
まずい、このままじゃ購買に行けない。
「あー、俺たち寄るとこあるし先に行ってて?」
梅澤たちに言った。
「そう、じゃあね」
そう言って2人と別れた。
よし、これで購買に向かえる。
「橘、購買に行こう!」
もうすぐで購買が開く時間だった。
橘と走って購買へ向かった。
購買につくと開店の準備は終わっていて、
あとはチャイムが鳴るのを待っているだけだった。
「ねぇ一馬くん!見て!」
橘が指差す方を見ると購買にパンが色々並んでいるのに、
一つしか陳列されていないパンがあった。
あれだ!あれが伝説のパンだ!
「橘!あれだよ!」
「だね!早くチャイム鳴って!」
時計を見ると、
チャイムが鳴るまであと数分だった。
「あんたらなんでこんなとこにいんのよ」
バッと横を見るとさっき別れたはずの梅澤たちがいた。
「教室に戻ったんじゃなかったか?」
「あー・・・もうお昼だし、購買に寄ってから教室に行こうと思って」
「そ、そっか」
・・・怪しい。
やっぱりこいつらも伝説のパンを狙ってるんじゃないか?
いや、普通に購買に買いに来ただけかもしれない。
なんとなく、梅澤たちも同じようなことを考えている気がした。
4人で購買が開くのを待つ。
すると授業終了のチャイムが鳴り、
購買が開店した。
それと同時に蓮が購買に向かって走り出した。
こいつら!やっぱり伝説のパンを買うつもりだったんだ!
出遅れた!蓮に追いつけない!
遅れて俺も走る。
「おばちゃん!これちょうだい!」
蓮は既に伝説のパンを手に持っていた。
「ああ!」
後ろを振り返ると、橘が絶望の顔をしていた。
その横の梅澤は勝ち誇ったようにニヤニヤ笑っていた。
しかし俺がすぐに後ろからおばちゃんにお金を投げ渡す。
「おばちゃん!これお金!」
「おい一馬!このパンは俺のだぞ!」
「いや、俺の方が先にお金払ったから」
「俺が先にパンを持ってただろ!」
二人でパンを引っ張り合いながら購買から出る。
蓮が俺からパンをバッと奪い取ると、急に走り始めた。
「蓮!そのまま逃げて!」
梅澤が叫ぶ。
「待てって!」
急いで蓮を追いかける。
さすがは蓮だ、走るのが速い。
でもここは学校だ。
蓮の後ろ姿を追いかけて追い詰める。
蓮が逃げ込んだのは屋上だった。
「もう逃がさないぞ!」
俺はそう叫んで、
蓮からパンを奪い取ろうとする。
「先にパンを持ってたのは蓮だよ!」
「いや、一馬くんの方が先にお金払ったもん!」
遅れてきた橘と梅澤も俺たちのパンの引っ張り合いに参加する。
「一馬、離せって!」
「いーや離さないね!」
「ちょっと離しなさいよ!」
梅澤が俺の足に蹴りを入れてくる。
「痛てぇ!お前らも保健室で購買が開くまで休んでたんだろ!」
「そうよ?」
「里奈たち、保健室であんなことするなんて変態じゃん!」
「今それは関係ないでしょ!」
「見た目は派手でツンツンしてる癖に、下着はリボンの付いた可愛いやつだったな!」
俺がそう言うと、
梅澤に思いっきり股間を蹴られた。
ぐっ!でも絶対離さないぞ!
4人でパンの取り合いをしていると、
橘が思いっきりパンを引っ張って奪い取った。
「あぁ!」
梅澤と蓮が同じような声を出す。
橘はフフッと不敵な笑みを浮かべている。
パンは引っ張り合いでペシャンコになっていた。
すると橘がパンを袋から出してパクっと食べた。
「あー!京子が食べた!」
絶望する梅澤と蓮。
3人で橘を見つめる。
「橘、美味しい?」
伝説のパンだ、美味しいに決まってる。
橘はあんなに食べたがってたしな。
「う、うん!美味しい・・よ!」
・・・なんだその反応は。
橘からパンをもらって口に入れる。
「・・・普通だな。いや、なんならちょっと不味いぐらいだ」
「嘘だろ!?」
さっきまで死ぬ気でパンを取り合っていた梅澤と蓮にもパンを食べさせてあげる。
「なんだこれ」
「・・・思ってたのと違う」
蓮も梅澤も、伝説のパンの味にがっかりしている。
「結局、なかなか手に入らないっていう伝説のパンは美味しくなかったってことか」
「最悪!授業サボってまで手に入れたのに!」
橘が頭を抱えて座り込む。
「私たちも一緒だよ!走り回って疲れただけじゃん!」
「お前らは保健室でイチャイチャできたしいいじゃん」
聞こえないぐらいの小声で言ったのだが、
梅澤にはしっかり聞こえていて俺の腹に梅澤の鋭いボディーがヒットした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます