第42話 文化祭 〜準備〜
結局メイド喫茶は2クラスともやれることになった。
しかし、何故か売り上げで勝負するような雰囲気になり、
クラスのみんなはやる気に満ち溢れていた。
そして文化祭の準備期間に入り、
教室のデコレーションやメニューの考案など手分けして作業が進んでいた。
俺と橘と蓮はメニューの考案に分担された。
「メニューどうする?俺メイド喫茶行ったことないからわからないんだけど」
蓮がそう言う。
「俺もない。橘は?」
「ない」
そうだよなー、普段そんなの行かないもんな。
「おかえりなさいませご主人様とか言われるんだろ?そもそもなんでおかえりなさいなんで言われるんだ?自分の家でもないのに」
「あれじゃない?自分がなんか家に仕えているメイドのご主人様になったみたいな設定なんじゃない?」
橘がメイド喫茶について考察する。
「橘はメイド喫茶とかで働けるんじゃない?そういうの得意そうだし」
橘は絶対得意だと思って聞いてみる。
「私は無理かな。知らない人に設定だとしてもおかえりなさいませとか言いたくない」
結構冷たいな。
「でも俺はメイド喫茶って言ったらオムライスが思い浮かぶな」
俺もそのイメージがある。
「オムライスにケチャップでハートとか?私の偏見?」
「なんか魔法をかけるとかだよな」
「でも一馬、クラスの女子がそんなのやってくれるか?」
「どうだろ」
「あとは変な名前のメニューとかない?オムライスだけどキュンキュンオムライスみたいな」
「そんなのあるんだ」
そうしてメイド喫茶談義をしていると、クラスの女子たちが呼びに来た。
「ねぇ、教室のデコレーションできたから見に来て!」
呼ばれてメイド喫茶をやる教室に向かう。
廊下は模擬店のポスターや飾り付けがしてあり、
廊下を歩いていると楽しそうな声が聞こえてくる。
体育祭の時もこんな感じだったが、
文化祭は体育祭よりパーティー感が強いな。
それぞれの教室も文化祭の準備がどんどん進んでいた。
俺たちがメイド喫茶をやる教室に入ると、
教室には壁に綺麗にデコレーションがしてあり、
机も飲食店のように並べられていた。
一気にテンションが上がる。
「すごいね!」
「うん、すごい」
その後、クラスのみんなでメニューについて話し合った。
翌日、教室の飾り付けやビラの作成も行なっている中、
俺たちは昨日考えたメニューの試食をすることに。
「はい、召し上がれ!」
クラスの女子が作ったオムライスが出てきた。
上の卵はふわふわで、ケチャップでハートが書いてある。
美味しそうな匂いがする。
3人で並んで1つのオムライスを試食する。
スプーンに卵と下のライスを上手く乗せ、
口に運ぶ。
ん!美味しい!
ふわふわの卵と熱々のライスがマッチしていて美味しい。
「おいしい!」
「うん!うまい!」
橘と蓮がそう叫ぶ。
「ほんと!?よかった〜!」
オムライスを作ったクラスの女子が安堵の表情を浮かべている。
「美味しいよ!これはお店で出したら大人気だよ!」
橘がまだまだ褒める。
「ありがとう橘さん!そういえばこの後クラスの女子でメイド服試着するから教室に来て!」
どうやら女子がメイド服の試着会をするようだ。
男子はメイド喫茶の教室で待機しており、
女子は教室でメイド服に着替えている。
メイド喫茶は男子は基本的にキッチンで、
女子はメイド服を着てホールで接客をすることに。
周りのクラスの男子たちの顔を見てみると、
みんな期待の表情を浮かべている。
そりゃそうだ。
普段制服姿しか見れないクラスの女子のメイド姿が見れるんだから。
俺もめっちゃドキドキしている。
ガラガラッ、教室の扉が開く。
するとクラスの女子たちがメイド服を着て入ってくる。
「おお〜!」
と男子の歓声が上がる。
クラスの女子はみんなちょっと恥ずかしそうだ。
でもそれがいい。
橘もメイド服を着ており、
ミニスカートに白のニーソックスを履いていて、
他の女子よりも圧倒的に足が長い。
さすがです、橘さん。
そこから、クラスの女子はその格好のままホールの練習をしていた。
そして文化祭前日。
俺が朝教室に入ると、なぜかクラスのみんなが暗い顔をしていた。
それに怒っている生徒もいる。
誰かがとかじゃなく、全員がそんな雰囲気を醸し出している。
なんだ?なにかあったのか?
近くのクラスの男子に聞いてみる。
「なぁ、なにかあったの?」
「・・・メイド喫茶をやる教室に行ってみ」
ん?
メイド喫茶の教室に何があるんだ?
言われたとおり、メイド喫茶の教室に向かう。
「誰がやったんだよ!」
向かうと、クラスの数人かが廊下に聞こえるような声で怒っていた。
教室に入ってみるとテーブルの上にメイド服が置いてあるのだが、
それがザクザクに切り刻まれている。
「え?」
思わず呟いてしまう。
服のいたるところが切り刻まれていて、もう着ることもできないだろう。
こんなこと誰がやったんだ?
誰がなんのために・・・
「どうしたの?」
橘が入ってくる。
「何これ!」
ザクザクに切り刻まれたメイド服を見た橘が言う。
「誰がやったの?」
「わからない。朝来たらこうなってたらしい」
切り刻まれたメイド服を持ってクラスの女子が泣いている。
その日、メイド喫茶の教室に集まってどうするかクラスのみんなで話し合うことに。
「用意していたメイド服は全部切り刻まれてる。これじゃあメイド喫茶なんてできないよ」
「普通の服で接客するのかな」
「せっかく教室を飾り付けたり、いっぱい準備したのに・・・」
悲しい、そして怒りのこもった声が聞こえてくる。
最悪の雰囲気だ。
「ちょっと待って!」
橘が立ち上がって言う。
「私が友達とか知り合いとかに聞いてメイド服を持ってないか聞いてみる。みんなも誰か持ってそうな人がいたら頼んでみてほしい」
橘はまだ諦めていないようだ。
「俺も知り合いに聞いてみる」
「私もそういえば友達がメイド服持ってたかも!」
橘のその声に応じてクラスのみんながもう一度一つになり始めた。
クラス中でそういった声が聞こえる。
「橘、なにかあてはあるのか?」
「もちろん、私の友達に金髪でモデルやっててコスプレめっちゃ持ってる子がいるのよ」
橘が自慢そうに言う。
「ははっ、そいつ、俺も知ってるかも」
さあ、明日は本番だ。
無事にメイド喫茶をやることはできるのだろうか。
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