第138話 配下視察②
その後、俺はルカたちデミデーモンの住民地に向かった。
近づいてくるにつれて何か懐かしいような、ぞっとするような気配を感じた。
『…一体何をしているんだ?』
屋敷の前に着くと、その気配はさらに強くなった。
「あ、ダグラス様なの!!ルカに何か用なの?」
「いや、みんなの生活の様子を見に来たんだ。屋敷に入ってもいいかな?」
「うん!!案内するの!!」
それから階段を上り、最上階の最奥の部屋に案内された。
どうやらその気配の発生源はここのようだ。
「みんなーー!!ダグラス様が来たのーー!!」
「本当だ!!ダグラス様、我々を助けてくださってありがとうございます!!」
「ダグラス様ーー!!ありがとうーー!!」
サキュバスたちと同じ反応だ。
デミデーモンも同様に名付け以外ほとんど赤の他人だというのに、そんなに慕ってくれているとは。
「それで、君たちは何をしてるんだ?」
「私が答えさせていただきます。これは、ダグラス様の死の魔力を使った実験です!」
「へ、へぇ…」
やはり混血とはいえ、デーモンは死関係に興味があるのか…?
それとも国のためにやっているのだろうか…?
「…具体的には?」
「そうですね…サキュバスや吸血鬼たちの農園は見ましたか?」
「ああ。」
「その農園の大地に染みている死の魔力の中和を行っています。死の魔力が染みていると生物は死んでしまいますからね。」
魔族にとって死の魔力はドーピングのような効果を持っているので、普段から身体に纏い続けていた。
しかし、まさか大地にも影響があったとは…
「…すまない。」
「い、いえ!!ダグラス様のせいじゃありません…!!元々この地は死んだ土地でしたから。」
「…そうか。」
確かに元からこの地は何もない荒野だったが、それをさらに悪化されたのはおそらく俺だ。
良かれと思ってやっていたが、こんなことになっていたとは…
「…何か俺にできることはあるか?」
「そ、そんな!!ダグラス様に働かせるなど滅相もございません!!」
「いや、やらせてくれ。この国をよりよくしたいんだ。」
「いやしかし…」
「もう!!ダグラス様がやりたいって言ってるの!!だからやるの!!」
「ルカ様…分かりました。」
「ありがとうルカ。」
「気にしなくていいの!!」
「そうですね…では、本格的な実験をしたいのでそういった器具を用意してくれないでしょうか?」
「分かった。」
二つ返事で請け負ったが、実験に何を使っているのか知らない。
部屋を見てみると、俺が魔力ではなく道具を用いる際の”錬金”と似たようなものが並んでいる。
「”錬金”の器具と大体同じ感じか?って聞いて分かるか?」
「え、ええ。…もしかしてダグラス様は”錬金”を習得しなさっているのですか?」
「ああ。性能の高いポーションとかはなかなか売っていないからな。」
「なんとっ!!我々は普段、”錬金”の研究をしているのです!!」
「そうだったのか!」
お互い同じことが好きだった瞬間、一気に距離が縮まるというヲタクあるあるが出た。
しかし、”錬金”を行使できる者が配下にいたのは嬉しい誤算だ。
「それで、例えば何を作っているんだ?」
「万能薬エリクサーの開発、それと状態異常ポーションの生産を。」
「おぉ…!!なかなか進んでいるな!!」
人族で宮廷に雇われて”錬金”実験を行っている者たちと同じ、いやそれ以上の進みだ。
状態異常回復ポーションではなく状態異常ポーションというのは俺も初耳だ。
後で話を聞いてみよう。
「いえいえ…ダグラス様はどうですか?」
「Sランクのポーションは作れるぞ。」
「なんと…!!そこまで到達なさっているとは…より一層の忠誠を誓います!!」
「ありがとう。…提案なんだが、俺に雇われないか?」
「…と言いますと?」
「ポーションを生産して俺に収めて欲しい。忙しくなってきてなかなか時間が取れないからな。」
「そういうことなら…承知いたしました!!」
「もちろん死の魔力の中和研究と並列して構わない。報酬は…何か欲しいものはあるか?」
「そうですね…皆と話し合う時間をいただけますでしょうか?」
「分かった。じゃあ数時間後にまた戻ってくる。その時に聞かせてくれ。」
「承知いたしました。」
最後はアンデッド軍のところだ。
「グリム!」
「どうしたんじゃ?」
「アンデッド軍の様子を見に行きたいんだが…影の中か?」
「うむ。どうかしたかの?」
「いや、ヴァルハラ帝国の警備をしてくれてるから正式に雇おうと思ってな。」
「…儂以外知性を持っとらんから気にしないでいいと思うんじゃが?」
「確かに…」
そういえばそうだった。
「じゃあグリムを正式に雇うってことでいいか?」
「いいぞい!」
「報酬は何がいい?」
「アンデッド軍の増員じゃな!」
「了解。」
それから時間を潰した後デミデーモンたちのところに向かった。
結果、報酬は正大陸で採れる色々な素材ということになった。
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