異世界転生録if～死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます！！～

第139話 招集

視察を終えてから八日が経った。

『…しんどい。せめて少しだけでも仕事の役割分担をしたい…』

実は今になって気づいたことがある。

それは、魔王候補者になったことで死の魔力をだけでなく不眠不休で活動できる身体をも手に入れていたことだ。

最近は非常に忙しかったため、この世界に転生してから初めて徹夜をした。

その際、肉体的な疲労は一切感じなかった。

『…まあスキルとかもろもろのおかげで元から疲れにくい体質だけどな。とはいえ不眠不休か…』

”睡眠時間がもったいない”と誰もが一度は思ったことがあるのではないだろうか？

俺はもちろん何度もある。

しかし、実際にやってみると精神的疲労が半端ではない。

だんだん感情の起伏が薄くなっていき、そのうち何も感じなくなるのだ。

『…まぁ八徹もしたらそうなるか。』

一度どこかに出かけて気分転換でもしよう。

「ダグラス様、失礼いたします。」

「どうしたグレイ？」

「はっ！最近お忙しい様子なので、僭越ながら私めが雇用すべきと思われる種族を斡旋いたしました。

「おぉ…！！助かる！！」

知らない種族名もあるので”鑑定”を行使しながらざっと目を通してみた。

すると、そこには魔族だけでなくエルフやドワーフなどの亜人も載っていた。

「…グレイ、この国に亜人とはいえ人族を招いて共存できると思うか？」

「はい。私たちは魔族と言っても穏健派です。同じ思考の持ち主ならば息も合いましょう。」

「確かにな…この斡旋内容は住民たちも了解しているのか？」

「はい。」

最近グレイがあちこちを回っていると思ったら、まさかこんなことをしてくれていたとは…

「本当にありがとう…」

「はっ！ダグラス様のためならたとえ古代龍の巣にも飛び込む所存でございます。」

「あはは…それは辞めてくれ…」

本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

せっかくなので、気分転換がてらこの斡旋表に載っている種族の知人のところに顔を出そう。

『そういえば久しく人族のところに行ってない気がするな…』

俺が魔王候補者だと話しても皆は今まで通り接してくれるだろうか…？

それとも恐れられてしまうだろうか…？

そんな不安が脳裏をよぎる。

「グリム！」

「何処か行くのかの？」

「ああ。人族の街に労働力を探しに行ってくる。この国の警護、頼むぞ。」

「ほっほっほ！任せるんじゃ！」

「何か非常事態があったら迷わず俺に連絡してくれ。」

「分かったぞい！気を付けるんじゃぞ！」

「ああ！行ってくる！」

自分で言うのもなんだがアンデッド軍の装備は全て俺が作った一級品で整っている。

なので、俺並みの強さの相手が襲ってこない限りは大体余裕で防衛できるだろう。

『まずはそうだなぁ…ドワーフ、マルコのところに行ってみるか。』

俺は”偽装”で死の魔力をごく普通の人族の魔力に変え、人街に馴染めるようにした。

”レーダー”によると、相変わらず隠れ家の工房に籠っているようだ。

しかし、マルコの他に何十人ものドワーフが集まっている。

『…弟子でも取ったのか？まあ聞いてみればいいか。』

俺は隠れ家の近くに”転移”し、そのまま家の中に入った。

すると、誰一人俺に気づかずに黙々と金槌を叩き続けている。

用があるのはマルコなので、俺は他のドワーフたちを無視をしてマルコがいる最奥の部屋に来た。

「おーい、マルコーー！！」

「なんじゃ？ワシは忙しいって言っと…おぉ、ダグラスじゃないか！！今まで何をしておったんだ？」

「まあ色々あってね。…それより、向こうにいるドワーフたちは？」

「ああ、実は武闘国家と魔法国家がまた戦争を始めると言い出しての。その製造依頼だ。」

「なるほど…よくもまあ飽きないな…」

武闘国家と魔法国家は昔から仲が悪く、常に小競り合いをしている。

武術の方が上だの、魔法の方が上だのと、くだらない意地の張り合いだ。

「それでマルコ、話があるんだ。」

「何だ？」

「実は…」

俺は魔王候補者のこと、ヴァルハラ帝国のことなど全てを仔細に話した。

「そんなことがあったのか…」

「それで、今日はマルコをヴァルハラ帝国に誘いに来たんだ。」

「…ワシはドワーフが迫害されない場所ならどこでもええわい！それに、話を聞いてやっぱりダグラスと一緒にいた方が楽しそうだしな！！」

「なら…！！」

「ああ！ワシの知ってるドワーフ全員を誘ってみるわい！！」

「ありがとう…！！」

「そういえばダグラスに何かを伝えようと…あ、そうだ！！武闘国家から招集がかかっておったぞ！！」

「…え？」