第122話 三姉妹

何者かがこちらに飛んできている。


魔力量からして魔族で間違いない。




「あれ、こんなところにこんな建物あったっけ…?」




その魔族は小柄で角と尻尾、羽の生えた幼女だった。


何の種族かは”鑑定”しないと分からない。




「ルカ!!!久しぶりね!!!」




「あれ、リリスちゃん!!!」




その幼女は飛行を辞めて地面に降りてきた。




「この建物はー?」




「ふふんっ!!我らがダグラス様が建ててくださったの!!!」




「へぇー!!すごいのー!!」




「でしょでしょーー!!」




「ダグラス様はあなたですか?」




「あ、ああ。」




突然リリスとの会話を辞めてこっちに来たので、少し驚いた。




「…君は?」




「ルカはルカなの。こっちですごい魔力を感じたから来てみたの!!」




「それは多分俺の魔力だ。迷惑をかけたならすまなかった。」




「そうなのね!!気にしなくていいの!!それで、私たちも配下に加えて欲しいの!!」




「ルカたちは過激派か?」




「ううん!穏健派?なの!!」




「そうか。合計で何人いるんだ?」




「えっとねー!!23人なの!!」




「分かった。よろしくな。」




「よろしくなのーー!!」




リリスの時と言い、魔族の集団はそれほど数が多くないのだろうか。


いや、知性が高い者だけを同伴した魔族の集団としては多い方だろう。




「それで、ルカは何の種族なんだ?」




「それは秘密なの!!!」




「こらルカ!!ダグラス様には言わないとだめよ!!」




「うぅ…ごめんなさい。ルカたちはデミデーモンなの。」




「デミデーモンって?」




「そこからはあたしが説明するわ。」




「わかった。」




「デミデーモンは悪魔と魔族との混血よ。ルカの場合は悪魔とサキュバスの混血ね。」




「戦闘能力は?」




「半分悪魔の血を引いてるからあたしたちサキュバスの倍くらいかしら。」




「…なるほど。ありがとう。」




「どういたしまして!!」




こんなに可愛らしい見た目とは裏腹に、相当強いとはギャップがすごい。


正直戦闘は極力避けたいが、もし戦闘になった場合は前線に駆り出すことになるだろう。




「っ!ダグラス様、また来客です。」




「ああ。」




先程”複製”を行使したときに相当強い魔力波が発生してしまったせいだろうか。


自業自得だ。




「…ルカを尾行してたら男がいるわよ、エウリュアレ。」




「そうね、ステンノお姉さま。」




「ま、待ってくださいよ姉さま方ーー!!」




「遅いわよメドゥーサ。」




「ご、ごめんなさいエウリュアレ姉さま。」




「なっ!?」




この三姉妹は以前リヴェリアから話に聞いた、男を見つけ次第惨殺する醜い女怪物たちの情報と名前が一致している。


情報通り、俺やグレイに襲ってくるのなら撃退するしかない。




「あ…ごめんなさい…ダグラス様…」




「ルカ、気にしないで。」




「でも…」




「おいそこの男!!名前は何という?」




「っ!!こらそこのブサイク三姉妹!!この方が魔王候補者と知っての狼藉かしら???」




「ちっ!容姿だけがいいサキュバス風情が…」




「なんですって!?」




リリスが止めに入ってくれたのは嬉しいが、あまり効果はなかったようだ。


正直今は”複製”した直後でMPが尽きかけているので戦うのは面倒くさい。


しかし、三姉妹を”鑑定”するに、俺が一番迎撃に向いているので仕方ない。




「…俺が対処する。みんなは後ろに隠れていてくれ。」




俺は”アイテムボックス”から海王の防具を装備し、海王の剣を二刀流で構えた。




「舐められたものね…!!魔王候補者でも殺してその魔力を奪うまでよ!!行くわよ!!」




「はい。お姉さま!!」




「は、はい!!姉さま!!」




そう言うと、メドゥーサが遠くから”石化の魔眼”を、エウリュアレが”魅了の魔眼”を行使し、ステンノは様子見をしている。




「なっ!!お姉さま、この男効かないわ!!」




「私もですぅ…ごめんなさい姉さま!!」




「くっ…二人は魔法を使いなさい!!」




俺は”デバフ耐性”の進化先である”デバフ無効”のおかげでデバフが全く効かない。


三姉妹にはそれが予想外だったようだ。




「させるか!!」




今魔法攻撃を打たせたらせっかくMPを消費して建てた屋敷が壊れてしまう。


俺は残りのMPを絞りに絞ってメドゥーサとエウリュアレの背後に”転移”した。




「なっ!?二人とも!!避けて!!」




そして俺はそれぞれの手で”レイドストリーム”を行使し、メドゥーサとエウリュアレを切り刻んだ。




「お姉…さ…ま…」




「姉…さま…」




そう言って二人の身体は黒い靄になって消えた。




「…よくも可愛い妹たちを!!!」




ステンノが涙を流しながら剣で斬りかかってきた。


俺はその涙に全く同情することなく、左手で”スラッシュ”を行使してパリィし、右手で”レイドストリーム”を行使してステンノも躊躇なく切り刻んだ。




「二人とも…私も…向かうわ…」




そう言ってステンノの身体も黒い靄となって消えた。

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