第123話 統治者
「流石はダグラス様です。」
「…ダグラス様がこんなに強いとは思わなかったわ…すごいのね!!!」
「ダグラス様すごいの!!!」
「あ、ああ。ありがとう。」
あの三姉妹がお互いを大切に想っているのは分かったが、何せ今まで悪逆非道な行いを繰り返してきたのを知っていたので特に躊躇しなかった。
…まぁ三人とも顔が醜くて不細工だったのもあるが。
「三人とも、配下を連れて城の前に整列してくれ。」
「了解いたしました。」
「分かったわ!」
「分かったの!!」
俺はMP回復ポーションを飲んで回復し、玉座に移動した。
そして、配下全員に話す内容を決めていた。
『前世で何回も妄想した魔王のロールプレイ…実際にやろうと思うと大変だな…』
「ダグラス様、整列完了致しました。」
「ああ。ありがとう。」
統治者としての威厳を見せるために海王の防具や片手剣を装備し、その上魔力を無駄に放出した。
「ダグラス様がお見えになる!!全員跪け!!!」
グレイの指示を聞くと、配下たちはまるでどこかの軍隊のように統率された動きで跪いた。
その重々しい雰囲気に耐え、俺は壇上に上がった。
「魔王候補者のダグラスだ。俺の目的はただ一つ、穏健派の安寧だ!!!」
配下たちは皆これを聞いてほっとしていた。
また、皆が放出している俺の魔力量を視て畏怖していた。
「戦争をして何になる?ただ自らや自らの大切な人が死の危機に晒されるだけだ!!俺はそれが許せない!!!」
「そうだそうだ!!!!」
「過激派なんていなくなれ!!!!!」
「もし俺に仕えてくれるのなら、俺は必ず安寧をもたらすと誓う!!!」
「おおおおおおおおお!!!!!!!」
「ダグラス様万歳!!!!!!」
「ダグラス様に栄光あれ!!!!!」
大胆なことを言ったが、掴みはばっちりだったようだ。
あとは配下が自主的に戦闘に加わってくれるよう、説得するだけだ。
「…でも、ここにいる人たちだけが幸せになれればいいのか?いや、違う!!俺は全ての穏健派の保護をしたい!!」
「おおおおおおおおお!!!!!!」
「離れ離れになったオレの仲間たちを救ってくれーー!!!」
「そのためには皆の力がいる。時には過激派の奴と戦うことになってしまうかもしれない…それでも、俺についてきてくれるか?」
一瞬空間が静まり返った。
俺は演説に失敗したのだろうか。
「……おおおおおおおおお!!!!!!!」
「穏健派に幸福あれ!!!!!」
「今こそ穏健派の団結を!!!!!」
何とか演説に成功していたようだ。
正直なところ、内心では汗だらだらだった。
「幸福への第一歩として皆の住居を建てた!!部屋割りは各種族で決めてくれ!!吸血鬼はグレイ、サキュバスはリリス、デミデーモンはルカに従うように!!!この三人を各種族の長、並びにこの軍の幹部とする!!!」
「おおおおおおおおお!!!!!!!」
「やっと安住できるんだ…!!!!」
「ダグラス様……!!!!ありがとうございます!!!」
「この後グレイ、リリス、ルカは玉座に集合してくれ。では以上だ。」
そう言って俺は玉座に帰った。
『…疲れたーーーーーーー!!!!こんな大勢の前で話すのはつらいな…』
正直こんなことはもう二度としたくない。
今後は各種族のリーダーに任せよう。
「ダグラス様。グレイ、リリス、ルカ、参上いたしました。」
「ああ。入ってくれ。」
「ダグラス様は演説の才能もあるのね!!あたしの想像以上だわ!!」
「すごかったの!!」
「大変素晴らしい演説でした。」
どうやら結構上出来だったようだ。
「ありがとう。それで、さっき言ったが三人には引き続き幹部として種族をまとめてもらいたい。」
「はっ!承知いたしました!!」
「分かったわ!」
「わかったの!!」
幹部になって意気込んでいるのか、三人は返事とともに早速行動を起こした。
『…俺も動き始めるか。』
安寧をもたらすと約束した以上、絶対に被害が出てはいけない。
俺は城の上空に”転移”し、屋敷を含む土地を結界魔法S”絶対不可侵結界”で覆った。
『これでひとまずは安心だな…ただMPを消費し続けるから何とかしないと。』
今のMP消費は結界維持が自動回復速度を上回っているため、徐々にMPが減ってきている。
なので、近いうちに精霊の森のように魔石を使った結界を展開したい。
『はぁ…統治者って色々忙しいんだな…』
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