第102話 カルキノス討伐前日

「ところで今、悪属性神話生物の情報はあるんですか?」




「あるわ。私が武闘国家に来たのはその神話生物の討伐よ。」




「…っ!!」




まさかそんなにも身近にいるとは思わなかった。


一応”レーダー”を行使したがそれっぽいものは見つからなかった。




「あとここに来た目的にダグラスさんを勧誘する名目があったのは認めるわ。」




「…そうなんですね。それと、もうパーティメンバーなんですから砕けた話し方でいいですよ。」




「そう…?分かったわ。よろしくねダグラス!そっちも敬語じゃなくていいわ。」




「分かった。よろしくリヴェリア。」




これで彼女との距離が一歩縮められた気がする。


俺は少しの間、その幸福感に浸った。




「それで、ダグラスも討伐に協力してくれないかしら?」




「…分かった!まずは情報を聞かせてくれ。」




「ええ。カルキノスという巨大蟹で、武闘国家から森林フィールドを抜けた先にある沼地に生息しているわ。」




「カルキノスの人的被害は?」




「多くの行商人を沼に引きずり込んでいるの。そのせいでいくつかの村が貧困になってるわ。」




「それは困るな…それで、討伐の際に気を付けることはあるか?」




「そうね…巨大なハサミと口から出す泡のブレスくらいかしら。それ以外はただサンドクラブの巨大版ってところよ。」




「なるほど…討伐はいつにする?」




「そうね…色々準備もあるだろうから明朝でどう?」




「了解!じゃあまた明日!」




「ってちょっと待って!!」




「どうしたんだ?」




「その…パーティは同じ家で暮らすんじゃないの?」




「…確かに。でも、一緒に住める家を今から調達できる?」




「それは…」




「じゃあ他の人たちもいるけど俺の屋敷に来るか?」




「いいの!?」




「ああ。パーティだからな!」




まさかリヴェリアの方から同居を誘ってくれるとは思わなかった。


いつか二人きりで暮らせる家が欲しいものだ。




「じゃあついてきて!」




「うん!」




それから俺は神話生物の話をしながら屋敷に向かった。


驚くことに、リヴェリアは”善”属性の神話生物に鍛えられたらしい。




「ついたよ。」




「わぁ…思ってたより大きいわね!」




「ああ。いっぱいの人が暮らしてるからな。」




「でもどうしてこんなに人がいるの?」




「それは俺が状態の酷い奴隷を保護して生活を与えてるからだよ。」




「そうなのね…奴隷か…」




リヴェリアの顔にどこか寂しさのようなものが垣間見えた。


奴隷と何か嫌な思い出があるのかもしれない。




「あ、ダグラス様おかえり!!そっちの人は…もしかしてダグラス様の彼女?」




「こらセリー!彼女はパーティメンバーだよ!客人としてもてなして!」




「了解!!」




「うちのメイドがごめん…」




「…」




「…リヴェリア?」




「あ、いや!なんでもないの!」




リヴェリアは頬を赤く染めていた。


もしかしたら俺に気があるんじゃないかと考えたが、そんな考えは一瞬で覆された。




「ほ、本物のメイドだーー!!!!!握手してもいいかしら!!!」




「う、うん…」




どうやら頬を赤く染めていた対象はメイドだったようだ。




「…まぁそんなことだろうと思っていたさ。」




俺は気を落とさないよう、虚勢を張って誤魔化した。




「じゃあセリー、リヴェリアを手厚くもてなしてあげて。」




「了解しました!こちらへどうぞ!」




「ええ!」




それから夕食と入浴を終え、明日の作戦会議をしていた。


特にラブコメチックな展開が無かったのが残念だ。




「俺は”鑑定”を使えるんだが、リヴェリアのステータス視てもいいか?」




「もちろん!!」





名前 リヴェリア=ウォーカー 種族 ハイエルフ 性別 女 Lv.302




装備


黒龍の両手剣 黒龍の魔法杖 黒龍の鎧 




ステータス


HP 588410/588410 MP 673610/673610 TP 455610/455610 SP 100215




スキル


・魔法


火属性魔法S 水属性魔法S 風属性魔法S 光属性魔法S 氷属性魔法S 無属性魔法B 結界魔法B


精霊魔法S




・武技


片手剣B 両手剣S 弓A 体術S




ユニークスキル


詠唱省略




称号


火属性魔法の極意 水属性魔法の極意 風属性魔法の極意 光属性魔法の極意 氷属性魔法の極意 


復讐者リベンジャー:憎悪すればするほどステータスが向上する





「…強いね。」




「そんなことないわ!ダグラスの方が強いでしょ?」




「いや、戦闘経験量を踏まえるとリヴェリアの方が強いよ。」




「そうかなぁ…?えへへ…」




まんざらでもない顔をしている。


かわいい…って今考えることはそうじゃない。




「リヴェリアは前衛もできるけど後衛中心の戦闘スタイルで合ってる?」




「その通りよ!!ダグラスは?」




「俺はどっちもできるけど主に魔法剣士って感じかな。」




「魔法剣士!?かっこいいわね!!」




「そうかな…?ありがとう。」




意中の相手に褒められるとこうも嬉しいものなのか。


初めての経験なのでそわそわする。




「じゃあ明日は俺が前衛、リヴェリアが後衛でいいかな?」




「いいけど…まずはお互い力を知りたいから最初はそれぞれ1人で戦わない?」




「そんなに余裕な相手なのか?」




「海龍やニーズヘッグよりだいぶ格下って感じよ。」




「分かった!それでいこう!」




「じゃあまた明日!おやすみダグラス!」




「おやすみ。」

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