第21話 異変

それから1年強が経ち、俺はもうすぐ12歳で成人を迎えようとしていた。




成人したら俺は真っ先に王都に向かおうと決めている。


なぜなら王都には巨大なダンジョンがあるのだ!




朝起きると、今日は珍しく父さんが朝食に来ず1人だった。




『何か忙しいのかな…?』




邪魔にならないように早速訓練を始めたが、父さんの様子が気になってあまり集中できなかった。




昼食の時間になったがやはり父さんは来なかった。




『もしかして何か大きなことがあったのかな…?でも俺が行っても何にもならないしな…』




そんなことを思いながら、クエストを受注するためギルドへ向かった。


目的地に着いたのだが、今日はなんだかいつもより騒がしい。




『皆どうしたんだ…父さんのことと関係があるのかな…?』




入ってみると、クエスト掲示板が緊急クエストでいっぱいになっている。


こんなことは初めてだ。



「あ、あの。何かあったんですか?」




俺はいつもお世話になっているギルド職員に尋ねた。




「ダグラス君…実は昨晩にアンデッドの群れがこの街に向かってきているのを発見したの!


危ないから今日は帰った方がいいわ。」




「そうなんですね…何か対策はしてるんですか?」




「領主様が討伐軍を編成しているらしいわ。ギルドでもDランク以上の冒険者を緊急招集して討伐軍を編成するところ。」




「教えてくれてありがとうございます。」




「ええ。気を付けてね。」




父さんが食事に来なかったのはこれが原因か。


父さんと話せなかったことに俺は少しイラついていた。




『ちょっとアンデッドの様子を見に行くか。できれば滅ぼしたいけどそれはそれで父さんが混乱しそうだな…適当に間引くか。」




”瞬間移動”をし、森林の最深部にいった。


そこはアンデッドで埋め尽くされていた。




ゾンビ化した魔物や動物、EランクのスケルトンやDランクのゴースト、ワイト、Cランクのスケルトンナイト、スケルトンアーチャー、Bランクのスケルトンウィザードなどで構成されていた。




『…っ!!何体いるんだよ…これが街に来たら間違いなくおしまいだな…』




幸い進行速度は遅く、街に着くのは2、3日後くらいだろう。




アンデッドはすでに死んだ個体だから打撃には強いが、光属性に弱い。


ただ光属性を使える人はほとんど協会にいるし、冒険者には少ない。




”魔力探知”をすると、アンデッド軍の最奥に強い魔力を見つけた。




『鑑定』





名前:ジェレミー=アクランド 種族:魔族 (ヴァンパイア) Lv.169 EXP:990




装備


タキシード 闇夜のマント 杖 両手剣




ステータス


HP 82600/82600 MP 89000/89000 TP 67200/67200 




スキル


・魔法


 火属性魔法A 風属性魔法B 闇属性魔法S 


・武技


 両手剣A 体術B




ユニークスキル


眷属化 アンデッド生成




称号


夜の皇帝(夜になると全能力が+20%)





『…っ!!こいつはやばい!魔族だ!しかもヴァンパイアの!』




今まで見たステータスの中で一番強い。




『俺はこいつに勝てるだろうか…?』






名前 ダグラス=アイザック 種族 人族 性別 男 Lv.96 EXP 5460




装備


黒のローブ 賢者の石 片手剣 短剣×10 盾 




ステータス


HP 72800/72800 MP 82000/82000 TP 71000/71000




スキル


・魔法


 火属性魔法S 水属性魔法A 風属性魔法A 土属性魔法B 光属性魔法S 闇属性魔法A   氷属性魔法A 無属性魔法S 空間魔法A 生活魔法A


・武技


 片手剣S 両手剣C 細剣C 短剣A 斧D 槍B 弓C 棍棒D 盾S 体術A


・その他 


 デバフ耐性S 危険察知S 忍耐S 気配遮断A MP回復速度上昇 無詠唱  




ユニークスキル


鑑定 アイテムボックス スキル略奪 全魔法適正 限界突破 偽装 獲得経験値10倍




称号


異世界転生者 火属性魔法の極意 光属性魔法の極意 無属性魔法の極意








ステータスは拮抗している。


俺のほうが若干下回っているが、手数では上回っている。




『アンデッドの群れを間引きたいが…あのヴァンパイアに気づかれたらただじゃすまないだろうな。どうしようか…』




熟考した結果、”瞬間移動”を使ってランクが高い魔物からヒット&アウェイで倒していくことにした。




『一体一体はそれほど強いわけでもないしここは”エリアヒール”か”エリアキュア”が効率的だろうな。』




早速アンデッド軍の中央、B、Cランク層に突っ込んだ。




『エリアヒール』




対象範囲のアンデッドは皆灰になったが、アンデッドに気づかれたので上空に”瞬間移動”した。


そしてまた突っ込み、




『エリアキュア』




これも同じだ。




『なるほど。”エリアヒール”と”エリアキュア”はアンデッドに対して特に威力の違いはないのか。』




上から見下ろすと、俺が倒したのは全体の1%くらいだけだった。




『今の二撃でこれだけしか減らないのか…結構きついな。』




応用して消費魔力を10倍の1000にして効果範囲を広げてみよう。




また軍の中央に突っ込み”エリアヒール”を行使して上から見てみた。




すると、さっきの3倍くらいの大きさの穴が開いた。




『おっ、これならいけそうだな。ただ、ヴァンパイアに気づかれないようにしないと。』




森林の最深部は大岩があるため軍細長い配置になっており、その分ヴァンパイアの位置は遠い。


しかし、生成者本人だから自分の配下が死んだことに気づく可能性がある。




俺は一回一回”エリアヒール”が終わる度に”魔力感知”でヴァンパイアの位置を特定することにした。




21回目を繰り返した時、B、Cランク層はあらかた倒した。


それと同時に軍の侵攻が止まった。




『ばれたか…?俺の位置が見つかる前に逃げた方がいいか?


いや、もしかしたら気付いていないかもしれない。でもリスクが高いか。』




色々と考えた結果、MPを節約するため”転移”で一度ヴァーリ領付近の森林に戻ることにした。


ちょうど日が暮れてきたから今日はやめておく。




帰宅すると、討伐軍と思われる軍隊が家の前にいた。


父さんが指揮を執っている。




討伐軍の横を通って家に入ろうとすると、




「ダグラス!今までどこにいたんだ…!!心配したんだぞ!」




と父さんが話しかけてきた。




「ごめんなさい。父さんが忙しい理由を街で調査してた。」




「そうか。心配かけたのは僕の方だったか…すまなかった。」




「大丈夫。」




家に入ると、家にいた母さんやアドルフ兄さん、セシリアが心配してくれた。




皆と少し話した後夕食を取った。


今回は父さんも一緒である。




「父さん、敵はアンデッドの軍だよね?」




「そう。でも弱点の光属性魔法を使える人が魔法騎士団の中でも少なくて困ってるんだ。」




「そうなんだ。ギルドでもDランク以上を緊急招集して戦力を集めてたよ。ただ、光属性の使い手は少ないようだけど…」




「ああ。聞いているよ。数が欲しいから助かるよ。」




「あと街で聞いた噂だけどアンデッド軍を指揮しているのは魔族かもしれないらしい。」




「なんだって…!?ウィッチやワイト、スケルトンキングだと踏んでいたが…


もう一度考え直す必要があるな。教えてくれてありがとう。」




そう言って父さんは食事を終え、また仕事に戻った。




『父さんが頑張ってるし俺もできるだけ協力したいな。明日はもっといっぱいのアンデッドを倒そう。』




そう決意した。

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