第67話 御守り

「おめでとうございます。当たりです」

店員さんは事務的に告げる。レジ横にある箱からひいた籤(くじ)が当たったのだ。選択肢は4つ。欲しいものが選べる。けれど、なにもほしいものがない。


「それ、もらっていいですか」

わたしが言ったことがすぐにはわからなかったらしい。店員さんは不思議そうに訊く。「これですか」

「そう、それ」

わたしは当たり籤そのものを所望したのだ。もちろんただの紙切れ。もらって財布にしまう。


当たり籤だけど何とも引き換えることはもう出来ない。そこがなんだか、いい。とってもいい。財布を開けるたび当たり籤を目にする。


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