第39話 訪問先にて

案内されて通された部屋にたどり着くまで、いくつの角を曲ったか知れない。とてつもなく広い家である。帰りも案内を付けてくれなければ戻れそうにない。


どのくらい待ったのか。部屋に通されたものの主人は一向に現れない。お茶はときおり運ばれる。その時に訊いてみるが、もうしばらくお待ちください、としか答えが返ってこない。


お茶ばかり飲んでいるので手洗いを使わせてもらいたくなった。が、当然どこにあるのだかわからない。部屋を出て勝手に動きまわるのもはばかれるけれど、生理現象だからやむを得ないと言い訳をして探してまわる。

間に合うかしらと思っていたが運良く見つかった。が、戻り方がわからない。


もと居た部屋はどこだったか。

歩きまわって歩きまわって、あきらめかけたときたどり着けた。

未だに主人は姿を見せない。お茶だけは運ばれ、わたしはそれを飲みつづけている。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る