第38話 行方不明になる日

なんだか物の存在感が希薄だ。ときおり透けて見えたりする。手に取るのが怖いときもある。触れることが出来ないんじゃないかと思って。触れることが出来ずに素通りしそうで怖い。

実のところ物だけではなくいろいろと希薄で頼りなく感じている。


吃驚させるなよ、と最近よく言われる。気配が感じられないらしい。だからわたしが近づいても気付かれず、唐突にそこに現れたように思われ相手を驚かせてしまう。


わたしから観れば相手が希薄なのだが、相手から観ればわたしが希薄なのだな。遠からずわたしは誰にも認識されなくなるのだろう。誰にも認識されなくなったわたしが認識する世界はどんな世界なのだろう。


その時、そもそもわたしは存在していられるのかしら。


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