第23話 もうひとつの世界

耳が役立たなくなった。聞こえない。いや聞こえるには聞こえるのだが必要な音が聞こえないのだ。聞こえる周波数帯域が変わってしまったらしい。だから役に立たない。


人の声は聞こえない。けれど何か別の言葉らしいものが聞こえる。“言葉らしい”と感じるだけで本当に言葉なのかどうかは判らない。

人との「会話」という方法のコミュニケーションからははじき出されてしまったが別の何かとの「会話」の輪に入れてもらった感がある。もっとも一方的に聞くばかりで話すことは出来ないから「会話」ともいえないけれど。


扉は開かれている。けれどその中へ入っていける日がくるのはいつのことになるのだろう。


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