第4話 落とし物

空き地に大きなものが、ある日、忽然とあらわれた。大き過ぎてよくわからないが、どうも円筒形らしい。


その周りをぐるりとまわってみる。うん、確かに円筒形。黒光りしている。筒の片面にはなにやら複雑な模様が刻まれている。どこかで見たような……。


ああ、印鑑だ、これ。

誰のだ? って、こんな大きな印鑑を使う人なんていないけど。

少し離れて彫られている文字を読んでみる。


わたしの名字だ。

見上げるほど大きな印鑑にわたしの名字。


じっとわたしはそれを見つめつづける。

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