第6話「後日談」
「……我が君、これはどういうことだ。」
「あ~、えっと……。」
主君はいつものように座って、煙草を吸いながら、部屋の中にいた。
「昨日、私は大倶利伽羅と別れたあと、頼まれた煙草を買いに行くついでに、そもそも何故ああいう話になったのか、理由を再度小烏丸に確認する手紙を送った。」
主君は気まずそうに和泉とは顔を合わせず、明後日の方向を見ている。
「元々肆番隊に向かわせていた調査は、それを突き止めるためのものだったからな。それで今日、届いた知らせがこれだ。」
和泉の手元には、以前渡されたものとよく似た紙があり、それを主君の前へ半ば叩きつけるように出す。
そこには、めいじ館の収支が事細かに記載されていた。
和泉はそこからある欄を指差し、主君の顔を見るように話す。
「ここを見てほしい。明らかに私が把握している以上の出費があるが、これはなんだ?」
「えっと……。」
「聞けば、この話の発案は副司令だという。理由は、めいじ館の収支が悪く、このままでは今後の経営に差し支えがあるから、だそうだ。」
「…………。」
「改めて聞こう、我が君よ。これは、なんだ?」
「……煙草代です。」
「いつも買いに行っている物の値より高いと思うが?」
「最近、値上がりしまして。」
「相場が変わったとは聞いていないが……それにしてでも、私が把握している額よりも多いようだが?」
「……貯蓄用です。」
「質問を変えよう。聞けば我が君は近頃、何かと理由をつけて、夜な夜などこかに行くそうだな。どこへ行っている?」
「…………。」
「……肆番隊の調べでは、最近街に新しい店ができたそうだな。」
「…………。」
「おお、それなら俺も知っているぞ。最近俺と主君が外出の練習で行った場所だ!確か……ゆうかく?ってところだったよな?」
「!!大倶利伽羅、馬鹿!?」
「……我が君?」
「いや、待て、和泉!安心しろ、確かに最近俺は遊郭に行ったりしてるが、あくまで知り合いに呼ばれていってるだけで、酒飲みに行ってるんだ。女は抱いてな
「士道不覚悟っ!!そこに直れ!!叩っ斬ってやる!!」
「こんな狭い部屋で刀抜くな馬鹿!?別にいいだろ!!綺麗な姐ちゃんと酒飲みに行くくらい!!めいじ館にゃ酒置いてねぇんだから!!」
「ええい、うるさい!!正直に言えば良いものを、わざわざ煙草代と偽って行っているのだ!!どうせなにか後ろめたいことやっているんだろう!!」
「そうなのか!?要人と会うから周辺警護が必要だって言ってただろ!?俺が夜の街に怖がっている間、主君は酒飲んでいたのか!?帰り調子悪そうだったのはそれが理由なのか!?」
「うるせぇ!!俺だってハメ外したいときだってあるんだよ!!たまには綺麗な姐ちゃんに酌してもらって酒飲むくらい良いじゃねぇか!!」
「主、失礼する。副司令から、主の固定お小遣いを半分減らすことを伝えろと言われて来た。」
「なにぃ!?俺まだツケ払いきれてないんだぞ!?甲、副司令に言って今月は勘弁してくださいって伝えてきてくれお願いします!!!」
「了解。」
「この期に及んでまだ足掻くか!!待て!!逃げるな!!!」
「主君!!俺にも説明がまだだぞ!!待ってくれ、主君!!主君~~~~!!」
こうしてまた、慌ただしい一日が始まる。
主君はこのあと、ツケを払うまで煙草を吸う量を減らさなきゃいけなくなった。
煙草をやめさせることはできなかったが、俺はそれでも良いと思う。
ただ、主君が俺たちの目を偲んで逢い引きしたことには、まだ納得していないが……。
主君は主君だし、俺は俺だ。
これからも、俺と主君は雌雄、竜を目指して突き進む。
今も、昔も、そしてこれから先の未来でも。
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