第90話 『呪詛カース』

タトゥの攻撃に対して岸辺玖は口から血を吐き溢す。

それを見兼ねた伏見清十郎が慌ただしい表情を浮かべながら岸辺玖に近づいた。


「不味い(タトゥの攻撃を受けてしまったっ)」


タトゥ。

人形の化物。

その有する能力は呪詛である。

データベース状で閲覧出来る情報では、タトゥを素肌で接触した場合に発動し、攻撃を受けると、肉体に激痛を引き起こす呪詛が刻まれるのだ。


岸辺玖の腹部にはその呪詛はないが、先程岸辺玖の肩に腕を回して接触をしていた、首もと辺りには青色の字が浮き彫りになって、岸辺玖は苦痛の表情を浮かべる。


「くそ、なんだ、これっ!」


タトゥが岸辺玖の側に寄ろうとした最中。


「『荊姫』っ!!」


姫路音々が岸辺玖の肉体を確保する様に、杖型の狩猟奇具を展開させて彼の肉体に荊を絡ませて引っ張り寄せる。

タトゥはその瞬間を顔面を動かしながら確認しており、姫路と岸辺玖の方に顔を向けた最中、極大の灼炎がタトゥを覆った。

伏見清十郎による狩猟奇具『炎翅』による一撃である。


無論、その攻撃で威度S以上の化物を足止め出来るとは思っていない。

その一撃でどうにか逃げる程度の時間稼ぎが出来れば良いと思っている。


「二人とも、逃げ」


しかし、その微かな願いなど、踏みにじる事など容易。

炎による攻撃など意味がないと言いたげに接近して、炎の最中を動いて拳を作ると、それを伏見清十郎に向けて放つ。

拳による攻撃、触れてしまえば呪詛が肉体を蝕む。

それを気負した伏見清十郎は背を反らして攻撃を回避するが。


タトゥの手は六つある。

その内の片側にある三つの腕が、彼の衣服を掴んで離さない。


後退する事が不可能な事態に陥り、伏見清十郎は炎翅を使ってタトゥの腕を切ろうとするが。


「ぐぁっ!!」


もう片側の三つの手が、伏見清十郎の腹部を殴打した。

股関節、腹部、胸部を殴打されると、軋む音と共に体が吹き飛んで池jへと沈み混む。


「っ!」


姫路音々が伏見清十郎の方に顔を向けた。

だが、今は岸辺玖と共に逃げる事を優先する事にして。



「あっぐ、ぅ」


彼女の鳩尾部分に鋭い痛みが走る。

自らの胸の部分をみて、血が流れている所を確認した。


「ふ、ぅ」


その透明は、榊色子の透明能力である。

そして、その攻撃は、榊色子の体を乗っ取ったバビロンによる一撃だった。

膝を突いて、荒い息を吐く姫路音々。


「きゅう、きゅうう、きゅうう」


呪詛によって意識が不鮮明になる岸辺玖を抱き寄せて、いとおしそうな表情で彼の体を抱き締めるバビロン。


「ま、て」


手を伸ばして、どうにか岸辺玖を取り戻そうとする姫路の手を握り締める。

タトゥが指を振って、それは無理だと告げた。



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