第67話 『参加するメンバー』

岸辺玖は十六狩羅になる為に特殊任務を受ける事にした。

若命てちは岸辺玖の発音を頷いて受け止めると更に会話を進める。


「にんむをうけるにあたって、じゅうろくしゅらこうほのかたは、どうこうしゃをにめいまでつけることができまち」


つまり、少数部隊を作って今回の任務に挑め、という事なのだろう。


「ただし、こうへいさをたもつために、じゅうろくしゅらのさんかはできませんでち」


付け加えて、そう言う。

これで、十六狩羅に該当する紫乃結花里が参戦する事は不可能になる。


「討伐会に掛け合って来ますわ」


岸辺玖と共に参戦出来ない事に関して彼女はご立腹だった。


「むりでち」


当然の様に、若命てちがルールの変更は無理だと告げる。

岸辺玖は考える素振りを見せる事無く、まず、背後に居る男に声を掛けた。


「なら清十郎、来るか?」


その言葉をさして驚きもせずに、彼は岸辺玖の手を取って握る。


「当然、行かないなんて選択は無いさ」


同行者は伏見清十郎に決まる。

あともう一人、同行者を決めなければならない。


「ではあとひとりを……」


「角彩だ、つか知り合いだとソイツしか居ないしな」


記憶喪失となっている岸辺玖には、十六狩羅以外で言えば知り合いなど、角彩しか居なかった。

彼女が居れば、これ程までに良い事はないだろう。

回復能力を持つ狩人は、少数部隊の中では大事なメンバー構成の一つだ。

しかし、若命てちはその名前に聞き覚えがあるのか、着物の懐から手帳を取り出して確認する。


「ざんねんでちが、かどいろちゃまはすでにべつのじゅうろくしゅらこうほにはいってるでち」


そう言った。

こうなれば岸辺玖は悩む事しかなかった。


「そうか……ならどうするか」


悩ましく腕を組んで考える岸辺玖。


「……では、ご主人様、こういうのはどうでして?」


紫乃結花里が話に割り込んで岸辺玖に言う。


「私の家には狩人部隊と呼ばれる狩人で結成された給仕が居ますの……一番良い人材を、ご主人様に仕えさせますわ」


「あぁ、じゃあそれで」


岸辺玖は彼女の提案に軽く乗った。

紫乃結花里は自分が役に立てたと思い嬉しそうな表情を浮かべると、岸辺玖の前に座って、四つん這いになる。


「何してんだよ」


「へっ……へっ……ごほうびをぉ……」


岸辺玖は紫乃結花里を人間としてどうかと思い若干引きながらも頭を撫ぜる。

気持ち良さそうに紫乃結花里は目を細めて、岸辺玖のご褒美を受け取った。

感情が昂り出して来た紫乃結花里は、水浸しになった床に転がってお腹を出す。

もっと擦って欲しいと甘えている様子だった。


「もっと、もっと……わんっ、わんわんっ」


「ではしょるいなどにめをとおして、さいんをおねがいするでち」


「分かった」


そんな彼女のはしたない姿を無視して、三人は個室から出て行った。

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