第66話 『危険地帯なデンジャラスゾーン』

「このたび、きしべきゅうさまは、ひがしおうじけとうしゅ・ひがしおうじつきちよさまと、じゅうろくしゅら・おにがりのかくほろさま、そしておなじく、くいがりのすりだるまさまからのすいせんをえたために、じゅうろくしゅらこうほとしてえらばれました」


東王子月千夜。

角袰。

この二人が、岸辺玖を後押ししたのは分かる。

しかし、最後の一人は聞き覚えが無い。

尤も、岸辺玖にとっては記憶喪失である為に、東王子月千夜と掏摸達磨の二人の記憶が無かったが……。


「で、特殊な任務ってなんだよ?」


岸辺玖は誰が推薦したかはどうでも良く、若命てちにどんな任務か伺う。


「ごぞんじのとおり、いちねんまえにだいきぼなけものはっせいがおこりました、まちをうばわれて、けもののすみかになったところもあります、かりうどたちは、すこしでもおおく、とちのだっかんをめざしております……なので」


着物から何かを取り出した。

一枚の折りたたまれた紙であり、それを開いて、岸辺玖に見せる。

それは観光地などで見られるパンフレットだった。


「こんかいのにんむはきがじまへのえんせいとうばつになるでち」


その名前に反応するのは、紫乃結花里だった。


「飢餓島……なんで、その様な場所を選んだんですのッ!?」


彼女はその飢餓島と呼ばれる場所に対して何か知っている様子だった。


「なんだよ、飢餓島って……」


「飢餓島は化物の巣窟だ、現状、人間が存在しない孤島で、難易度がSを超える場所だよ」


そう岸辺玖に語る伏見清十郎。


「飢餓島には人間が居ない、だから化物は化物同士で食らい合って成長し続けた。その結果、威度S以上の化物が多く誕生していて、複数の討伐部隊が飢餓島に送られたけど、帰って来た者は少数派だった……そんな場所で、一体何をしろと言うんだ?」


「こんかいのとくしゅにんむは、きがしまにせいそくするあるしていされたけもののとうばつでち、おおく、けものをかったかりうどが、じゅうろくしゅらにはいることがやくそくされるでち」


「ご主人様、辞退を願いますわ……こんな危険なのは、私が十六狩羅になる時ですらしませんでしたわ、明らかに異常、おやめになってくださいまし」


そう告げる紫乃結花里。

岸辺玖には、若命てちから渡された討伐対象がリストアップされた紙を確認する。


「参加して、一番になったら、十六狩羅になるんだろ?そうなったら……どんな任務でも、グレードを無視して参加出来る、そうだな?」


「はい、そのた、おおくのめりっとがあるでち」


そう言われた、ならば岸辺玖の選択は一つしかない。


「やる。参加してやるよ」


岸辺玖は、紙を若命てちに渡して、二つ返事で了承した。


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