第40話 『鬼狩りのオーガハント』

データベース上に記載されている威度SS『淫婦バビロン』。

人体女性型の化物であり、皮膚は灰色、胸部と腹部が肥大化しており、股の部分からは臍の緒の様な肉状の繊維が地面に落ちており、下半身が衰弱している。

『マザーハーロット』と呼ばれる巨大な胎児の様な姿をした化物を飼っており、臍の緒の様な繊維をマザーハーロットと呼ばれる化物の首に巻き付けて跨っているのが特徴的。

バビロンは先述の通り、下半身が虚弱で自らの歩行が難しい。

基本的に下等な化物を使用しての移動が主な移動手段である。


だからバビロンの移動用手段のみをどうにかしてしまえば、比較的に難易度は下がるのだが、バビロンには他の化物には無い『繁殖』する能力を持つ。

化物から採れる化石を体内摂取した後に自らの肉体と融解させて化物を孕み出産する。

それを行うと、出産した化物は皆、バビロンの支配下に置かれる事となる。

それ以外にも、バビロンの繁殖方法は数多くある。

人間を食す事で人間の細胞を化物に変換し、別の化物を生み出したり、前例は少ないが、人間の記憶に残る化物の情報から化物を生む事も出来るとされている。


「……っ」


『鬼狩り』角袰が施設に到着。

グレードA以上の狩人が五名居たが、その内二名が死亡していた。


「『鬼狩り』か、すまないが、後を頼む」


腕を吹き飛ばされて、今にでも意識が飛んでしまいそうなリーダー格がそう告げる。

周囲には、化物の屍があるが、未だ健在している化物が多く居た。


「……ん」


首を縦に振って、角袰は狩猟奇具を取り出すと、トリガーを引き抜いた。

すると狩猟奇具は黒色の筋肉繊維が噴出して、硬質性の分泌液を多量に放出。

角袰よりも大き目で分厚い板の様な狩猟奇具は、棺だった。

ぱかりと、棺の蓋が開かれる。其処から出て来るのは、黒い甲冑を着込み頭部に角を生やす仮面を装着した化物だった。


鬼哭け―――『傀尽かいじん』」


その言葉と共に仮面の目元から赤い眼を光らせて起動する狩猟奇具『傀尽』。

角麿特注の生物型の狩猟奇具であり、元々は化物の遺体から作られている。

彼女が『鬼狩り』と呼ばれる所以は、鬼を模した化物を操る所からとられていた。


「……行って」


彼女の命令を順守する様に、『傀尽』が動き出す。

身体を振るわせて両手を開かせて突進すると共に、バビロンを守る化物に向けて徒手による突きを繰り出す。

化物に自らの腕を突っ込んで思い切り引き抜くと、その手には化石が握られていた。


啾啾しくしくとなけ―――『傀刃かいじん』」


化石を強く握り締めると、化石から肉の触手が噴出して、『傀尽』の腕に纏わりつく。

化石は硬質性の分泌液を出して、日本刀の様な形状へと変形した。

『傀尽』の持つ能力『傀刃』は、化物から採れる化石を狩猟奇具の様に扱う事が出来る破格の能力を宿していた。

単純に言ってしまえば、相手の能力を使う事が出来る力。

それに加えて、傀尽は傀儡ゆえの暴虐性を宿す。


「……」


更に、角袰が『傀尽』が出て来た棺を鈍器として使役出来る為、実質彼女一人で二人分の戦力を宿していた。

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