第39話 『最悪を免れたワースト』

騒ぎを聞きつけて『角栄郷』に滞在する狩人たちが出て来る。


「十六狩羅を呼べ、『鬼狩り』と『屍狩り』が居る筈だ」


「『屍狩り』が現在戦闘態勢に入ってます。『鬼狩り』もバビロンに向かっているとの事」


「バビロンのデータベースを確認したか?早急に対処しなければならない……あれは僅か三日で一つの都市を侵略した化物だ」


「任務移動中であった『毒狩り』が『角栄郷』に戻って来ています。そして『刀狩り』にも要請し、現在移動中との事」


「バビロンを目撃した場合は場所のみを伝え逃げろ、下手に大勢で立ち向かえば糧にされるぞ」


「大変ですッ!バビロンが重傷患者施設へと移動しています」


「クソッ、狩人は『角栄郷』出口で待機、グレードA以上の狩人は施設へと移動、一刻も早く患者をバビロンの手から離せッ!」



命令を下して、狩人たちが動き出す。

威度SSと言う度数を持つ『バビロン』は、狩人たちにとっては尤も注視すべき存在だった。

グレードA以上の狩人が施設に到着、重傷者を救う為に内部へ侵入。

施設内の電気は予備電力に切り替わっていて、光が薄く周りが見え辛い状況であった。


「A室、患者が居ません」


「B、C、D、患者が居ません」


「……最悪を想定する他無い、撤退だ」


狩人を束ねるリーダー格がそう命令する。

それに頷き他の狩人たちが脱出する。


「この施設に患者は何人居た?」


「五十名程です」


「すぐに入院していた患者を表示しろ、狩人には化石を持っている」


連絡機器を使役して、施設から脱出しながらリーダー格が命令する。


「私だ。すぐに施設を爆破しろ、重傷者を捨てる」


その言葉と共に、上空から何かが飛んでくる。

ミサイル型狩猟奇具を所持する狩人が遠方から射出して、施設に直撃して爆破した。


「すまない、狩人たち」


十字架を切って、リーダー格がそう言った。

施設が崩れて瓦礫の山が出来上がる。


「やったんですか?」


狩人が聞く。

当然の様にリーダー格は首を横に振って狩猟奇具を構えた。


「最悪を免れた、それだけだ、悪夢は続く」


この程度の攻撃でバビロンを倒したとは思っていない。

化物であるバビロンは威度S以上の評価を得ている。

それは、巣窟を作る能力を持つかどうかで、裁定が決まる。

そして、彼ら狩人の前に現れる、異空間の穴。

其処から出て来るのは、バビロン……ではない。


「バビロンは狩人の肉体を喰らい、化石から化物を孕み、産む事が出来る」


複数の化物が異次元の穴から出現し出した。


「『十六狩羅』が到着するまで何分だ?」


「距離から考えれば、五分程」


「なら、五分、時間を稼ぐぞ」


狩人たちが狩猟奇具を構える。

『角栄郷』の崩壊が始まりつつあった。


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