第10話 『雑音が広がるノイズ』
猿。
交通道路の中心、多くの車が陳列し、その上に猿は座って毛繕いをしている。
周囲には他の化物が居て、共存している様に見えた。
「朽木、撃て」
百メートル離れた距離に建物の中に隠れる岸辺玖と東王子月千夜。
彼らより更に離れた高層マンションの屋上で待機していた朽木紅葉が予め展開していた狩猟奇具で狙いを付ける。
狩猟奇具『
二メートル程ある銃身、そのライフルの様な形状をするそれには、何処にも弾倉などは見当たらない。この狩猟奇具は撃ち切りであり、十二発撃つと使用が不可能となる。
だから、射撃系の狩人は比較的に少なくて人気が無い。だが、朽木紅葉はある能力を所持していた為に、撃ち切りをする事は少なくとも無かった。
「
スコープで標準を合わせて引き金を引く。
針の様に細くて長い弾丸が射出されると、一秒にも満たぬ内に猿の頭部へと向けて走る。
狙いは確実、猿の化物はこの一撃で仕留める事が出来た筈だった。
だが、それを予期するかの様に、射線に入り込む岩石の様な化物が現れる。
まるで、猿の化物を守る様に、身を挺して庇ったそれは、岩石の化物を貫通し、弾丸軌道がズれて結果的に猿の化物には当たらなかった。
「チッ(幻術か)」
岸辺玖は一目見て、あの化物は猿の幻術によって操られていると確信した。
猿の化物を守る様に、周囲に居た化物が猿の化物を囲い守っている様に動いている。
昨日今日まで猿の群れで生きていた輩が、唐突に別の群れでその中心に立っているなどありえない。
ならば考えられる事は一つ。猿の特殊能力である幻術を使用し、幻術を他の化物に見せているのだろう。
「朽木、狙えるか?」
携帯電話を使い、朽木紅葉に連絡を入れる。
『無理だな、警戒している、猿を守りなが逃げようとしている』
そう言われて岸辺玖は地面を蹴った。
それに合わせて、東王子月千夜も建物から出て行き、狩猟奇具を構える。
「なら其処で援護射撃に徹してくれ、俺たちは接近して猿を狩る」
そう言った。化物の群れに岸辺玖は突っ込んでいく。
『りょうかッギギ―――ピ―、キュィン―――』
携帯電話からノイズが流れ出して、音声が聞き取りにくくなる。
「(電波が悪くなってる……連絡が取れないな……まあ、いいか)」
携帯電話を切ると共に、岸辺玖はヘッドフォンを装着する。
「蹴りを付けようぜ、クソ猿」
そう言って、岸辺玖は東王子月千夜と共に、猿を討伐する為に交通道路を超えて戦いに向かい出した。
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