第8話 私がおかしいんですかね?

 クラス替えで、仲良しの子達とクラスが別れちゃったんですよ。だから休み時間とかによく、その子のいるクラスに顔を出してたんですね。

 その日は次の時間が移動教室だったんで、その子のクラスの前を通ったんですよ、で、まあ休み時間なので中から話し声が聞こえる訳なんです。

 私もあー盛り上がってるなーって思ってそのまま通ろうと思ったんですけど、よく聞くとちょっと気になった事があって。

 普通に何人かが話してる声の中に、なんか変な声?音?が聞こえるんです。

 カエルの鳴き声みたいな、泡が弾けるみたいな、そんなノイズがプツプツ混じってるんですよ。

 それで、気になって教室のドアを開けたんです。まだ休み時間もあったし、中では仲良くしてる子達のグループが何人かまとまってお喋りしてました。

 でも、変な子がひとり居たんです。

 頭が大きくて、髪の毛がありませんでした。なんて言うんですかね、あの、カタツムリの寄生虫みたいな。あんな感じのツノみたいなものが何本も生えてて、ツノの生え際が爛れたみたいな色をしてて、目とかは見えませんでした。顔の真ん中で卵形に口を大きく開いて、唇が無かったんですけど、口の周りの皮膚がノイズに合わせてブルブル震えてて、そいつの声なんだってわかりました。


 そんなのが、友達のグループに混じってケロケロプツプツ言ってるんです。ゾッとしましたよ。

 しばらく呆気にとられて見てたんですけど、一人がうまい事を言って、ああいう時って周りが「あー」って相槌うちますよね?それに合わせてあいつがまるでうがいでもしてるみたいな声で

「るぁーーーーーー」

って言ったんです。それで私、ああこいつ話に混ざってるつもりなんだってたまらなくなって、教室に入って逃げられないようそいつの腕掴んで「あんた誰!?」って訊いたんですよ。

 周りもそいつもビックリしたのか止まって、そいつは腕振りほどいてどっかに行っちゃいました。

 そしたら周りが

「何言ってんの麻美!?律子泣いてたじゃん!」

って。

 律子って普通に仲良しグループなんですよ。でもそんな化け物じゃない普通のお下げの子なんですよ。

 でもあいつが座ってた席見ると確かに律子の席だし、周り見渡しても律子は居ないし、みんな制服だからさっきの奴が律子かどうかもわからなくて、とりあえずその日は後で謝っとくとか言って濁してそのまま移動教室に行きました。


 で、翌日、絶対におかしいと思って。一晩考えて今日も律子が変だったらお祓いとかに連れて行くのがいいんじゃないかと思って、早めに登校して友達の教室で待ってたんです。

 しばらくしたら律子が来ましたけど、昨日みたいな怪物じゃなくて、いつもの律子でした。

 ああやっぱり私が疲れてたか何かだったんだと思って律子に話しかけたら、律子は謝られても困るみたいな感じで。

 律子、昨日の事何も覚えがないって言うんです。

 それで、まあ覚えてないならやたら掘り返すのも……て事で別れたんですけど、やっぱり気になってお昼休みに様子見に行ったんですね。

 そしたら、一番の仲良しの子の席にあいつが座ってました。

 毎日友達の誰かが化け物になってるんです。それで私が怪物がいるって言ってもみんな友達だって言うし、翌日は誰も私が騒いだ事を覚えてないんです。

 私がおかしいんですかね?

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