第5話 資源ごみ

 最近気づいた事がある、

 家から一番近くのゴミステーションには、資源ごみの日になると必ず雑誌が一束になって捨てられているのだ。

 私の家ではそんなに資源ごみになるものが出ないのだが、部屋の掃除をした時に出てきた古い雑誌を捨てるため、朝一番でゴミステーションに向かうと水着の女性の表紙の雑誌、いわゆるエロ本が束になって捨てられていたのが目に入った。

 早いせいかその雑誌束の他には何も捨てられていない。おそらく朝に起きれない奴がこっそり夜中のうちにでも出してしまっているのだろうと考えて、自分もごみを置いて帰った。


 数日後、早朝にジュースが飲みたくなりコンビニへ向かう途中、ゴミステーションの横を通った。見るともなしに見ると、また雑誌が一束だけ出されていた。

 また数日後、ペットボトルを捨てるためにゴミステーションへ行くと、また雑誌束が置かれている。毎週か毎月かで購読して居るのだろう。そう思って雑誌に目を向けると、違和感があった。

表紙の写真に既視感がある。この女性と知り合いなのかと少し考えたが、そうでは無いのに気づいた。

 前もその前も同じ表紙の雑誌だった。

 薄気味が悪くなり、同時に好奇心も湧いた。束をよく見ると、結ばれているビニール紐は少し縛りが甘いように見える。

 1番上に縛られている雑誌を押してずらすと、その下からも同じ表紙が見えた。

 好奇心より異常性への恐怖が勝り、それ以上見ないようにして帰宅した。


 それから更に日が経った。

 休日、ベランダでタバコをふかしていると、古紙回収のトラックが家の前の道路を通っていった。「毎度おなじみ、ちり紙交換でございます」と放送をしながらのろのろと走っていく。

 ふと、そのトラックに近寄っていく人間がいた。声をかけているようだが、トラックは気づいていないのかそのまま通り過ぎてしまい、それを更に追いかけていく。

 あーあ、あの人は災難だなと思って眺めていると、そのうちトラックは別な道まで行ってしまい、諦めたのか追いかけていた人は立ち止まった。

 その人のぶら下げている雑誌束の色が見覚えがある気がするのに気づいた瞬間、私はベランダから部屋に戻ってカーテンを閉めた。


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