第3話 ゴミ袋
友人と夕食でも久しぶりにどうだとメールが来て、店の近くの交差点で待ち合わせをすることにした。
時間ちょうどに着いたものの、友人の姿は無く、
一人でしばらく待つことになった。
一時間ほど経った頃、ようやく、信号の先の道から友人の姿が見えて、こんなに待たせるとはなんだと怒ろうとしたが、友人の様子がおかしい。
友人はしくしくと泣いており、足元で黒い塊が何度も跳ねているのが見える。
赤信号の横断歩道で友人が止まると、ようやく足元のものがはっきり見えた。
ゴミ袋だ。サッカーボールより一回り大きいくらいの黒のゴミ袋が、何度も友人の足元で跳ねている。
私は横断歩道越しに声をかけた。
「お前、それは何だよ」
友人は泣いたまま答える。
「わかんねえ、わかんねえよ、気付いたらついて来てたんだ。走っても追っかけてくるし、蹴り飛ばしても駄目なんだよ」
そんな得体の知れないものを蹴れるものなんだな、と思いつつ話を続けた。
「音に反応するおもちゃでも入ってるんじゃないのか」
「だとしても変だろ、家のそばからずっとついて来てるんだぞ。それに、この大きさだし」
話している間もずっとゴミ袋は友人の足の周りで跳ね続けている。
「その大きさだと何なんだよ」
「だってさあ、もしかして人の頭とか入ってたらどうしよう」
言われて、生首がビニールに包まれて、目鼻から血を流しながらついてくる様子が頭に浮かんでしまった。
その時、信号が青に変わった。
「わかった、とりあえずこっち来いよ」
うん、といって友人はこちらに歩いてくる。その少し後ろを、生首を連想させる大きさのゴミ袋は跳ねながらついてくる。
友人が横断歩道を渡りきった瞬間、私はゴミ袋を引っ捕まえた。友人が軽く叫ぶ。
「何してんだよ!?」
そのまま、固結びされていたゴミ袋の口を開き、逆さまにした。
中身は、書き損じらしいメモ用紙や、何かを拭いたらしいティッシュ、お菓子の空き箱なんかだった。
「ほら、これで正体がわかったから怖くないだろ」
私がそう言うと、友人は「こっちの方が怖いだろ」と呟いた。
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