第293話 日照り

水位の下がった神泉苑しんせんえんの池の水は、温い。

空海は、濁りの中に独鈷杵どっこしょを突き立て泥を耕す。


祈雨の勅命以前から、餌は撒いていた。

炎に投じた護摩木にしたためた字は、御馳走の残骸。

唱える経の息吹に乗り、空腹で眠る龍の鼻孔を、食欲そそる香りで擽る。


結願けちがん

池の底の字を食いに、黒雲に乗った龍が来る。



★☆★


日照りなら、雨を呼べばいいじゃない。

有名な"祈雨の儀式"っていえば、空海と清明かな。

空海といえば、字が上手だったね。

龍のご飯(珍味)が『字』だと、いい感じにならない?


って感じで、書きました。


(いやね。現実的な見地から見れば、二人とも気象学の知識をフル活用したって結論にはなるんだけど…それだとロマンが無い)


☆★☆


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